法人契約のがん保険の保険料の取扱いについて

かねてより税制改正のうわさのあった法人契約のがん保険ですが、平成24427日に

国税庁から法人契約のがん保険の取り扱いに関する税制改正が発表されました。

法人契約のがん保険(終身保障タイプ)を巡っては、最近は金融商品の多様化により解約返

戻率や前払料率の高い保険商品が散見され、従前の取扱いについて実態に合わせた見直し

が行われました。

従前のがん保険の保険料に関する税務上の取扱いでは、終身払込の場合は支払保険料

全額を損金に算入できましたが、今回の改正案では支払保険料のうち一定期間は前払保険料

の割合があるものとして、各年の支払保険料のうち2分の1相当額を前払金等として資産に

計上し、損金算入は残り2分の1にとどめる取扱いとなりました。


1.保険料の税務上の取扱い (終身払込の場合)

 

(1)前払期間

  加入時の年齢から105歳までの期間を計算上の保険期間とし、当該保険期間開始の時

から当該保険期間の50%に相当する期間(前払期間)を経過するまでの期間にあっては、

各年の保険料の額のうち2分の1に相当する金額を前払金等として資産に計上し、残額に

いては損金の額に算入します。

(2)前払期間経過後の期間

保険期間のうち前払期間を経過した後の期間にあっては、各年の支払保険料の額を損金の

額に算入するとともに、次の算式により計算した金額を、(1)による資産計上額の累計額から

取り崩して損金の額に算入します。

資産計上額の累計額×1/(105-前払期間経過年齢)=損金算入額(年額)

(注)前払期間経過年齢とは、被保険者の加入時年齢に前払期間の年数を加算した年齢をい

います。

 

2.保険料の税務上の取扱い (終身払込以外の場合)

 

一時払いを含めた有期払込の場合は基本的には終身払込の考え方と同様ですが、計算式

が異なりますので、注意が必要です。

また、解約返戻金のないものの場合には、保険料の全額を損金の額に算入します。

 

3.最後に

 

 今回の税制改正は「平成24427日以後の契約に係る『がん保険』の保険料について

適用する。」とあります。

つまり、税制改正後の新しいルールは平成24427日以後が契約日となる新規契約分

に対しての適用となります。

平成24426日以前が契約日となっているがん保険に関しては、これまでどおり

これからも全額損金処理が可能となります。

 

 

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改正認定NPO法が施行されました!

平成2441日より改正NPO法が施工されました。

今回の改正により、今後NPO法人の活動は活発化されることが見込まれます。

今回は、新しく施行された認定NPO法について、その概要と改正のポイントをご紹介します。


 1. 認定NPO法人とは

    NPO法人は、NPO法に基づき法人格を取得した法人です。一方、認定NPO法人とは、改正NPO方により所轄庁が認定 するNPO法人を指します。NPO法人のままであれば、税制上の特例がありませんが、認定NPO法人には税制上の特例が ある点が大きく異なります。


 2. 認定NPO法人化のメリットは?

   (1) 認定NPO法人のメリット

     認定NPO法人のメリットとして、みなし寄附金制度があります。みなし寄付金制度とは、非営利活動に係る事業のために支出した金額の一部を損金と認める制度です。

旧認定制度では、所得金額の20%が損金算入限度額と定められていましたが、改正認定制度では50%又は200万円のいずれか多い額まで拡充されました。

 

   (2) 認定NPO法人への寄付したもののメリット

     認定NPO法人に寄付をした場合、個人・法人・相続人の3者にメリットがあります。

     個人・法人が認定NPO法人に寄付をした場合、寄付金控除(個人は税額控除との選択)として所得税及び法人税が軽減されます。また、相続人が相続財産を認定NPO法人に寄付した場合、その財産は相続税の課税価格に算入されません。


 3.改正のポイント

    改正NPO法の改正ポイントは以下の通りです。


・認証の制度の柔軟化・簡素化

内閣府の認証事務をなくし、認証は主たる事務所の都道府県・政令市に移管しました。


・認証法人に対する信頼性向上

会計書類を「収支計算書」から「活動計算書」に名称変更しました。


・認定要件の緩和

認定機関を国税庁から都道府県・政令市へ移管しました。


・仮認定制度の導入

  初期の活動を支援する目的で、認定NPO法人と同程度の優遇措置が認められるようになりました。


・寄付金控除を拡充

  個人からの寄付金控除が拡充されました。


 4.まとめ

 今回の改正による大きな変更点は、「認定及び認証の緩和化」、「寄付金控除の拡充」の2点です。

これらにより、NPO法人の活動が活発化し、認定NPO法人の数も増加していくことが見込まれます。

 また、税務申告の方法にも改正が入っておりますので、今後、認定NPO法人の申告方法でご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせ下さいませ。


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保険会社から株式を割り当てられたら・・・

  保険会社から株式を割り当てられたら・・・

~ 株式の評価額によっては、申告が必要!? ~


保険を契約していると、保険会社から株式の割当てを受けることがあります。

今年に入ってからも、大手生命保険会社が相互会社⇒株式会社へ組織変更をし、保険契約者に株式を割り当てました。

また、この株式は組織変更と同時に上場されました。

今回は、このような場合の課税関係についてご紹介します。


課税関係はどうなるの?

株式を受取ったのが、法人か、個人かによって課税関係が下記のように異なります。

① 法人の場合

  益金の額に算入されます。

② 個人の場合

  一時所得に該当します。


申告は必ず必要なの?

① 法人の場合

  益金として申告が必要です。

② 個人の場合

  金額によって取り扱いが下記のように異なります。

(1)受取った株式の評価額と、他の一時所得との合計額が50万円以下の場合

  申告の必要はありません。

(2)受取った株式の評価額と、他の一時所得との合計額が50万円を超える場合

  申告が必要です。 50万円を超えた額の、2分の1の金額が総合課税の対象となります。


株式の評価額はいくらになるの?

割り当てられた株式の金額は、以下のように評価します。

① 株式として交付された場合

  上場時の「売出価格」で評価します。

② 金銭として交付された場合

(※割り当てが1株に満たない時などは、株式が強制売却され、金銭で交付されます。)

  「実際に交付された金銭の額」で評価します。


株式の評価額の計算方法は?

例1) 売出価格20万円、割り当て株数10株の場合

     20万円×10株=200万円

     200万円-50万円=150万円

     150万円÷2=75万円

∴50万円以上なので申告が必要です。 75万円が総合課税の対象となります。


例2) 売出価格20万円、割り当て株数0.5株(端株)、

    端株のため強制売却され金銭で交付された場合(売却手数料等は2千円とする)

      20万円-手数料等2千円=19万8千円

      19万8千円×0.5株=9万9千円 

∴50万円以下なので、他の一時所得がなければ申告の必要はありません。



次回は、「定期金評価の見直し」についてご紹介します。

納税者にメリットあり!書面添付制度

◆書面添付制度とは・・・

 法律に定められている制度で、企業が税務申告書を税務署へ提出する際に、その内容が正しいことを税理士が確認する書類(税理士が計算し、整理し、又は相談に応じた事項を記載した書面)を添付する制度です。  ⇒「書面添付」とは、簡単に言うと「税理士が会社の決算の内容を説明した文章(=書面)を、決算書につけて(=添付)税務署に提出すること」です。


   ※ ただし、次のような事務所は書面添付をすることができません。
      ・売上の繰延や除外、架空経費の計上を行っている
      ・個人的な経費の混入、粉飾決算を行っている
      ・会計資料の保管状況が悪い、記帳状況を改善する必要がある  等

◆書面添付制度の目的

 書面添付制度の目的は、申告書の信頼性を高め、調査を簡略・省略することにより、税務行政を円滑化し納税者の精神的負担を緩和することです。

◆書面添付の主なメリット

①調査期間の短縮や、現地調査が省略される可能性があります            
                         
 書面添付がある決算書を提出した会社には、税務調査(事前通知調査)の前に、「税理士が会社の決算内容について説明する機会(=意見聴取)」が与えられます(場合により、通常調査になるケースがあります)。この説明により税務署の疑問がある程度解決された場合は、調査期間の短縮や、現地調査が省略されることがあります。

②第三者に対する申告書の信頼性がアップします

 税務署・・・正しい申告は税務署からの高い信頼を獲得します。
 金融機関・・・経営内容の適正開示は融資担当者からの信頼を獲得します。
 取引先・・・健全な経営内容は取引先の安全性確保と信用供与に不可欠です。

5.助成金・融資

会社を設立して事業を開始すると、仕入や備品の購入・スタッフの人件費など何かとお金が必要になります。開業資金のすべてを自己資金でまかなうことが出来れば理想ですが、なかなかそうはいきません。そこで開業時の資金調達方法として「助成金」と「融資」についてご説明致します。

(1)助成金

 助成金は公的機関や地方自治体などがお金を補助してくれるもので返還義務がない反面、交付要件を完璧に満たさなければなりません。また、その年度の政策や予算によっても変わりますので、受けたいと思う助成金について事前にしっかりと調査することが必要です。

① 中央官庁系の助成金・・・厚生労働省、経済産業省、総務省関連

  全国画一的に受給することができる助成金です。

(例)受給資格者創業支援助成金・・・厚生労働省系
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/14.pdf
新しく会社を設立(個人事業でも可)した場合に、設立時の資金の一部を国が負担してくれるというものです。 

(例)中小企業基盤人材確保助成金
新しく会社を創業し、会社の中心となる社員や専門技術的資格を持っている社員を雇えば、 社員の給与の一部を国が負担してくれるというものです。創業時に優秀な社員を雇い入れたいのだが、資金が・・・という会社に有効です。

(例)その他助成金についてはこちらをご参照下さい。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/b-top.html
  

② 地方自治体系の助成金

  地方自治体がその地域の実情に応じて支給してくれる助成金です。  

(2)融資

①政府系金融機関からの融資

 政府系金融機関は公的資金がもとになっている金融機関であり、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などがあります。

 日本政策金融公庫では、起業・開業時に融資を受けられる新規開業ローンなどがあるため、実績のない起業・開業者にとっては他の金融機関より借りやすい存在です。

②地方自治体の制度融資


 制度融資とは、信用保証協会つきの金融機関からの融資です。地方自治体に制度融資の申込を行うと、地方自治体は信用保証協会と金融機関に対して融資のあっせんをしてくれます。そこで審査に通れば、信用保証協会の保証を受けて金融機関から融資が実行されるという仕組みです。

 まったく実績のない起業・開業時であっても、地方自治体があっせんしてくれることにより融資を受けられます。制度融資は地方自治体によっても様々で、毎年のようにその制度は変わっていきます。利用できる制度にどのようなものがあるかは事前によく調べることが必要です。

③民間金融機関からの通常の融資(プロパー融資)

 信用金庫・銀行などからは、実績のない起業・開業者はなかなか融資を受けられないのが実情です。②による手続きを踏めば、結果として民間金融機関からの融資を受けられることになりますが、これは地方自治体のあっせんがあってこその賜物なのです。

(3)上手に助成金や融資を受けるには?

 スムーズに助成金を受けたり、金融機関から融資を受けるためには、事業計画書をきちんと作成することが必要です。事業計画書とは、あなたが思い描いた事業をいかにして実現してゆくのかを表したものです。

 自分ひとりではどう作成したらよいのか分からない等お悩みの方は、お気軽に弊社までご連絡下さい。弊社専任スタッフが夢の実現のお手伝いをさせていただきます。

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会社と税金

前回は会社設立の際に必要となる届出について紹介させていただきました。

会社を設立したら気になるのは、やはり、税金のことではないでしょうか?

今回は、会社にかかる税金についてご説明します。

1 法人税

(1)法人税の所得の計算

 法人税は各事業年度の所得の金額を課税標準としています。法人税法上の所得の金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額です。これは会計上の利益とは必ずしも一致しません。そこで、会計上の利益を調整して所得を導き出します。

(2)法人税の税額の計算

 各事業年度の所得に対する法人税の額は、所得の金額に30%の税率を乗じて計算した金額です。事業年度終了時の資本金の金額が1億円以下であれば、年間800万円以下の部分は軽減税率が適用され18%になります。その他、法人事業税、法人住民税が課税されます。

(3)法人税におけるメリット

①個人と法人の税率の違い

 法人では原則として所得額に関わらず一定の税率が課せられますが、個人事業者の場合は所得が高いほど高い税率となる超過累進税率が採用されています。したがって、所得が多い人ほど、法人化した方が適用される税率が低くなり、有利となります。

②給与所得控除 

 個人事業者の場合は、事業で得た収入から経費を除いた成果が全額経営者に帰属します。一方、法人では経費として経営者に給与を支給することができます。これは一定の要件を満たせば損金として認められるので、法人の課税所得を抑えることができます。また、受け取った給与から給与所得控除を受けることができます。給与所得控除とは、給与収入に対する経費として概算的に認められるもので、その分だけ課税所得が低くなります。経営者と家族従業員に給与を分散することにより、さらに税負担を低く抑えることができます。

③欠損金の繰越控除

 個人事業者の場合は、損失の繰越は3年しかできませんが、法人では欠損金を7年間繰り越すことができます。大きな損失が発生した場合は、繰り越せる期間が長いので、非常に有利となります。

④退職金の支払 

 個人事業の場合、退職金を事業主に支払うという概念がなく、家族従業員への退職金の支払も必要経費として認められません。しかし、法人であれば、法人から経営者本人や家族従業員へ退職金を支払うことができ、その金額が適正であれば法人の損金として認められます。この退職金は所得税が課税されることもありますが、課税上優遇されていますので、大きな節税効果が期待できます。

⑤その他

 上記の他にも、さまざまなメリットがあります。たとえば、出張日当を経営者にも支払うことが出来たり、生命保険料の全部又は一部を損金算入することができます。

2 消費税

(1)消費税の概要

消費税は「消費」に対して課される税金です。税金を負担する者は物を買ったり、サービスを受けた者ですが、申告・納付する義務がある者は、消費税を販売価格に含めて預かった事業者になります。納税義務者は、預かった消費税から、仕入に際して支払った消費税を差し引いた金額を計算して申告・納付します。消費税の対象とはならない非課税取引・不課税取引となるものがありますので、消費税の計算のためにも日頃から厳密な会計処理を行っておく必要があります。また、消費税は赤字の場合でも納税が発生することが多いので、注意が必要です。

(2)消費税におけるメリット

 法人設立の際には、消費税の免税効果が期待できます。法人が消費税の納税義務があるかどうかについては、通常、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。設立1期目、2期目の会社にとって、前々事業年度というのは会社ができる前のことなので、基準期間は存在しないことになります。ただし、その事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人は、基準期間がない事業年度においては、納税義務が免除されません。法人設立による消費税の免税効果を最大限に受けるためには資本金の額を1,000万円未満にする必要があります。

3 法人設立のデメリット

(1)交際費の限度額

法人の場合は、損金に算入できる限度額が定められています。資本金が1億円以下の場合、法人が支出する交際費のうち600万円を超える部分については全額、600万円以下の金額についてもその10%は損金に算入されません。個人事業者の場合は、事業遂行上必要なものは全額必要経費と認められるので、不利となります。

(2)住民税の均等割課税

 個人事業者の場合は、赤字であれば所得税、住民税、事業税はかかりません。法人の場合は利益があってもなくても、法人住民税の均等割が課税されます。均等割の金額は資本金額と従業員数によって異なりますが、最低でも年間7万円程度課税されます。

(3)決算手続の複雑化

 法人の場合は、利益があってもなくても毎期必ず決算を行い、申告をすることが義務づけられています。法人の決算は、厳密な会計処理が求められるため、事務負担が増加します。個人事業者の場合と比較すると、手続きがとても複雑で作成する書類も多くなります。


会社に関する税務につきましては、毎年のように税制改正や会計基準の変更が行われています。このような会計・税務に対応するのはもちろんのこと、将来にむけての財務的な観点からもお手伝いさせていただきたいと思っております。会計・税務について、ご心配な問題がありましたら、お気軽に弊社までご相談ください。お客様にとって最善の解決策をご提案させていただきたいと思います。


次回の予告
今回は会社と税金について紹介させていただきました。
次回は「助成金・融資」についてご説明します。


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中小企業必読!! ~資金繰り悪化の対応策~

今回は、突然の資金繰りの悪化に対応すべき方法として
『役員からの借入れ』について紹介します。
 

Ⅰ 借入金の特徴


(1)借入金のメリット
 ①増資に伴う登記の手数料である収入印紙代が発生しません。
 ②資本金が変わることがないため税金の金額や取扱いが
   大きく変わることがありません。

(2)借入金のデメリット
  ①自己資本比率が低下してしまいます。

Ⅱ 役員からの借入れをする際の決定すべき事項

①借入金額 ②借入日 ③返済方法 ④借入利率 ⑤利息の支払方法


 ※④について
  借入利率については0%を推奨します。

 0%を推奨する理由
  ①高い利率を設定すると役員給与と認定される可能性があります。
   (原則、一般の金融機関の借入利率であれば問題ありません。)
  ②利率を0%とし、借入時及び返済時は銀行口座を通じて入金、支払を行えば、
    契約書を作成しなくていいので収入印紙代を節約することができます。

Ⅲ 借入金の残高についての注意点

  役員からの借入金があり、借り入れた役員が死亡すると・・・・・・・・

   ①死亡した役員に多額の相続税が発生する可能性があります。
   ②債務免除益が計上されます(相続税回避のため借入金を放棄した場合)。

 借入金の返済を放棄すると税務上、債務免除益が計上され課税所得が増加しますので税務上の繰越欠損金や当事業年度の課税所得の金額を考慮した上で借入金を放棄する必要があります。

H21税制改正Part3

平成21年度税制改正の最終回となりました。
今回は「中小企業対策税制」「自動車税制」「事業承継税制」についてご紹介します。

1 中小法人等に対する法人税率の引き下げ


 平成21年4月1日から平成23年3月31日に終了する各事業年度において、中小法人等に対する法人税率が軽減されます。
 
 (例)所得金額を800万円とした場合
        22%・・・1,760,000 (現  行)
      △ 18%・・・1,440,000 (改正後)  
               320,000 円が減税となります。

2 中小法人等の欠損金の繰戻し還付制度

 平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた青色申告書による欠損金を前期に納めた法人税に繰戻して還付請求することができます。

 現  行・・・設立後5年以内の中小企業者等に適用されています。
 改正後・・・すべての中小企業者等に適用されます。

 ※中小法人等とは資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの、その他一定のものをいいます。

(計算方法の具体例)
  欠損事業年度(当期)の欠損金額 100万円

  還付事業年度(前期)の所得金額 500万円、法人税額150万円

  還付金額=150万円×100万円/500万円=30万円


3 自動車税制


 排出ガス及び燃費性能に優れた環境にやさしい自動車に対して税制が改正されました。
一定の要件を満たす自動車なら、新車車検時に自動車重量税(国税)、購入時には自動取得税(地方税)が減免されます。

 対象自動車・・・電気自動車・ハイブリッド自動車・天然ガス自動車など排出ガスの少ない自動車

 ※自動車重量税は平成21年4月1日から平成24年4月30日まで、自動車取得税は平成24年3月31日までです。

4 事業承継税制


(1)取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設
 経営承継相続人が、認定中小企業者の株式を相続により取得し、その会社を経営していく場合には、相続により取得した議決権株式等の課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予・免除されます。

 ※「経営承継相続人」とは、「認定中小企業者」の代表者であった者の後継者をいいます。

 ※「認定中小企業者」とは、経営承継円滑化法に基づいて経済産業大臣の認定を受ける一定の非上場会社をいいます。


(2)取引相場のない株式等にかかる贈与税の納税猶予制度の創設
 さらに、生前贈与を促進するため、贈与税の納税猶予制度も創設されました。認定中小企業者の代表者であった者の後継者として経済産業大臣の確認を受けた者が、その代表者であった者から贈与によりその保有株式等の全部を取得し、その会社を経営していく場合には、その猶予対象株式等の贈与にかかる贈与税の全額の納税が猶予されます。


 ※下記の記事もご参照ください。
   
  経営承継円滑化法がついに施行!

H21年度税制改正 Part1

 11月11日より税制調査会で平成21年度税制改正の検討が開始されました。

 又 これに先立って政府・与党の取りまとめた生活対策が発表されており、

 その動向が注目されています。

 以下、主な論点をまとめてみました。

   相続税の課税制度改正

  現行の法定相続分課税方式から遺産取得課税方式への変更により、

 水平的公平が 実現されるのかが注目点でしたが、自民党税制調査会は

 上記改革を見送る方針を固めたもよう。

   事業承継の円滑化を図るための税制措置(リンク11/11)

  非上場株式等の相続税の軽減措置(現行10%)の減額措置が80%の

 納税猶予に。 さらに一定の場合には、税金そのものが免除に!

   中小企業の軽減税率さらに引き下げ

 現行22%(本則30%)の法人税率が 18%に引き下げ!

   欠損金の繰り戻し還付 中小企業限定で解除

 前期黒字で納めた税金が、当期赤字なら戻ってくるかも?

   投資家に朗報 軽減税率の3年延長 

  20年12月末に期限を迎える上場株式等の配当所得と譲渡所得の

 軽減税率10%(本則 20%)が3年間延長されることにより 

 投資家に救いの手が?

   住宅ローン減税の延長 拡充

  現行の借入限度額2,000万円、最大控除額160万円から

 借入限度額3,000万円超、最大控除額600万円に!

 借入金だけでなく、支払った金額対象の投資型減税の導入も    

   不動産取得税 軽減税率の3年延長

  現行3%(本則4%)の税率が3年延長に!

   生活支援定額給付金

 こちらをどうぞ!(リンク11/20分)
  

以上の平成21年度の税制改正の内容については 今後順次解説していきます!

公益法人制度改革②

前回に引き続き、公益法人改革について解説します。前回は公益法人改革の概要を説明しましたが、今回は公益法人改革によってあらたに設けられた3つの法人格「公益社団・財団」「一般社団・財団」「特例民法法人」についてそれぞれの税制面での優遇措置(メリット)について説明します。


公益社団・財団の税制優遇

(1)法人税法上の優遇措置
法人税法上の収益事業から得た所得のみ課税されます(税率は30%(800万円以下の所得は22%))。但し、認定法上の公益目的事業は法人税法上の収益事業から除外されます。したがって、全ての事業が認定法上の公益目的事業なら法人税は課税されません。

(2)寄付金税制での優遇措置
個人や普通法人が公益社団・財団に寄付をした場合、寄付をした個人又は法人は一定の所得控除をうけることができます。これは公益社団・財団法とって直接的に税額を減らす制度ではありませんが、寄付金を収入源とする公益社団・財団にとっては資金集めの際に有利な制度です。

一般社団・財団の税制優遇

一般社団・財団は法人税法上「非営利性が徹底された法人又は共益的活動を目的とする法人」と「それ以外の法人」に区分されます。したがってそれぞれに分けて説明します。

(1)非営利性が徹底された法人又は共益的活動を目的とする法人
ア.法人税での優遇措置
法人税法上の収益事業から得た所得のみ課税されます(税率は30%(800万円以下の所得は22%))。法人税法上の収益事業から得た所得のみ課税される点は公益社団・財団と同様ですが、認定法上の公益目的事業であっても法人税法上の収益事業に該当すれば法人税が課税されます。

イ.寄付税制での優遇措置
個人が「非営利性が徹底された法人」に寄付をした場合、寄付をした個人に対して一定の優遇措置があります。

(2)それ以外の一般社団・財団法人
税制面での優遇措置は一切ありません。つまり、普通法人と同じ課税となります。


特例民法法人

(1)法人税での優遇措置
法人税法上の収益事業から得た所得のみ課税されます(税率は22%)。なお、認定法上の公益目的事業であっても法人税法上の収益事業に該当すれば法人税が課税されます。

(2)寄付税制での優遇措置
優遇措置はありあません。

以上がそれぞれの優遇措置です。次回は、前回の概要・移行手続きと、今回の優遇措置を踏まえ、既存の公益法人にとってどの法人格を選択するのが有利かを解説します。

公益法人制度改革

平成20年12月1日に次の3つの法律が施行されます。

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下:法人法)」
「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下:認定法)」
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の成功に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下:整備法)」

これらは公益法人の設立・運営を規定する法律です。既存の公益法人にとっては今後の事業実施に大きな影響を及ぼすものであり、この法律への対応が重要課題のひとつとされます。今回はこれらの法律に基づく公益法人制度改革についてご紹介します。


立法の主旨


これらの法律は民間の非営利部門の健全な発展を促進するため、従来の主務官庁による公益法人の設立許可制度を改め、登記のみで公益法人が設立できる制度を創設するとともに、そのうちの公益目的事業を行うことを主たる目的とする法人については、民間有識者による委員会(公益認定等委員会)の意見に基づき公益法人に認定する制度を創設するものです。


概要(既存の公益法人への影響)


これをうけて、既存の公益法人は公益認定等委員会他の認定・認可をうけて「公益社団法人若しくは公益財団法人(以下:公益社団・財団)」又は「一般社団法人若しくは一般財団法人(以下:一般社団・財団)」への移行申請を行う必要があります(なお、移行申請を行わない場合は解散となります)。但し、既存の公益法人に限り5年間の移行期間が設けられており、その間は現状と同じ体制で運営することが可能とされており、この状態を「特例民法法人」といいます。

「公益社団・財団」・・・より厳密な公益性が求められる公益法人であり、その分優遇措置が多い。
「一般社団・財団」・・・従来とほぼ同様の公益性が求められる法人、優遇措置も従来とほとんど同じ。

公益社団・財団法人の認定をうけるには

公益社団・財団に移行するには国又は各都道府県に設置にされた公益認定等委員会が定める以下の認定基準他をクリアする必要があります。

(1)経理的基礎を有すること
外部の監査を受けていること。そうでない場合は、公認会計士または税理士、法人は非営利法人の経理事務を5年以上従事したもの等が求められます。

(2)収支相償であること
収入と支出が同額であることが求められます。但し、ここでいう収支は公益認定上のものであり、実際のキャッシュフローにおける収支が同額であることではありません。

(3)公益目的事業比率が50%以上であると見込まれること
公益目的事業に要する費用が、法人全体の費用の50%以上でなければなりません。

(4)特別の利益を与える行為を行わないこと
特定の個人・法人に特別な利益の供与が行われていないことが求められます。

(5)技術的基礎を有すること
公益目的事業を行うことに必要な技術、専門的人材や設備などの能力を有することが求められます。


一般社団・財団の認可をうけるには


一般社団・財団への移行認可基準は行政庁(国又は都道府県庁)の認可により移行が可能となります。この認可にあたり「公益目的支出計画の作成・実施」が求められます。
「公益目的支出計画」とは現時点における純資産額を基準に算定した公益目的財産を一定期間内に公益目的のために支出し、最終的に0円となる計画を作成・実施することです。
 
 
 
 
 
次回は、「公益社団・財団」「一般社団・財団」のメリット(優遇措置)についてご紹介します。

ついに出た20年度税制改正大網!

自民党は去る12月13日、20年度税制改正大網を決定しました。

その内容には、注目されていた消費税の税率引き上げは先送りとなり、一方で、以前本稿でも取り挙げていた、中小企業事業承継税制の拡充などが盛り込まれる形となりました。→「非上場株式の相続税評価額が80%減に!?」参照

今回は、20年度税制改正大網の中で注目すべき項目につき見ていきます。

1.事業承継税制の拡充―非上場株式の相続税評価額が80%減に―

非上場会社を経営していた被相続人から、その会社の株式等を相続した相続人は、取得した株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予・免除されることとなります。

(1) 適用要件

①中小企業であること。
②納税猶予の対象となる株式等は、発行済議決権株式総数の2/3以下までであること。
③被相続人が同族関係者と合わせて過半数を保有して、かつ、筆頭株主であったこと。
④相続人が相続により、同族関係者と合わせて過半数を保有して、かつ、筆頭株主となること。

(2)留意点

① 相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡するまで保有した場合などに猶予税額が免除されることとなります。
②相続税の法定申告期限から5年の間に事業が継続していないと認められる場合は、猶予税額の全額を納付することとなります。
③(2)①の期限経過後に納税猶予の対象となった株式等を譲渡した場合には、その譲渡した株式数に応じて猶予税額を納付しなければなりません。

2.教育訓練費の増加額にかかる税額控除の見直し

(1)大企業
20年3/31をもって廃止されます。

(2)中小企業
労働費用に占める教育訓練費の割合が0.15%以上の場合。
→8%+(教育訓練費/労働費用-0.15%)×40を税額控除できます。

3.特定中小会社発行株式を取得した場合の特例―寄付金控除が適用に―

個人が創業後3年以内のベンチャー企業への資金供給を促進するため、一定の要件を満たす株式会社に出資した金額につき、1000万円を限度として、寄付金控除を適用することとなります。

ただし、この特例の適用で所得から控除された金額は、その取得した株式の取得価額からは控除されます。

4.証券税制関連―上場株式の譲渡損と配当の損益通算が可能に―

(1)上場株式等の譲渡所得等に対する課税

①20年末をもって10%軽減税率が廃止されます。
→21年1月からは20%

②ただし、21年から22年末までは譲渡益500万円以下の部分は10%の税率を適用できます。

(2)上場株式等の配当所得等に対する課税

①20年末をもって10%軽減税率が廃止されます。
→21年1月からは20%

②ただし、21年から22年末までは年間100万円以下の配当は10%の税率を適用できます。

(3)損益通算の特例の創設

上場株式等の譲渡損失の金額を上場株式等の配当所得の金額から限度額なく控除することが認められることとなります。

5.その他

20年3月末に期限を迎える下記の租税特別措置法については、それぞれ適用期限が延長されることとなりました。

(1)少額減価償却資産の特例
(2)交際費の損金算入の特例
(3)創業5年以内の中小企業に対する欠損金の繰戻還付措置

例年ならば、この与党税制改正大綱の内容が閣議決定されて国会を通過することになります。
しかし、現在は、国会のねじれ現象等により、与党税制改正大網の通りに税制改正が行われるかは不透明であり、今後の動向には注意が必要です。

19年度税制改正はどうなる!?(その4)

12月14日、与党税制改正大綱が決定しています。
前回に引き続き平成19年度税制改正の原案となる、与党税制改正大綱における主要な改正を紹介します。

住宅ローン減税

 新たに住宅ローン減税が創設されました。  これにより、既存の住宅ローン減税とのいずれかを選択し、控除することができます。
    〈新たに創設された住宅ローン減税の内容〉
 居住年  控除期間    借入年末残高       適用年・控除率
 19年    15年間   2,500万円以下の部分    1~10年  0.6%
                    同  上          11~15年  0.4%
 20年    15年間   2,000万円以下の部分    1~10年  0.6%
                    同  上          11~15年  0.4%

住宅バリアフリー改修促進税制創設

 居住者が一定期間にバリアフリー改修を含む増改築工事を行った場合に、その資金として借り入れた住宅ローンについて、一定期間、所得税額から控除するというものです。
 なお、住宅ローン控除との選択適用となります。
   期間:平成19年4月1日~平成20年12月31日
 控除期間:5年間
 控除率:(バリアフリー部分ローン残高×2%)+(その他部分ローン×1%)

固定資産税の減額

 一定期間に所定ののバリアフリー改修が行われた住宅で一定の要件を満たす場合には、100㎡までを限度として一定の固定資産税額が減額されるというものです。
   期間:平成22年3月31日までの工事完了分
 減額される固定資産税:翌年度の固定資産税額の1/3

所得税の寄付金控除に係る改正

 特定寄付金を支出した場合の寄付金控除の限度額計算に付き、下記の引き上げがされるというものです。
   総所得に係る限度額  現行:30%  改正後:40%

~会社法~中小会社の監査役の業務範囲と登記手続

平成18年5月1日から会社法が施行されています。
会社法の施行にともない、一定の株式会社については、監査役の業務範囲に関して速やかな登記手続が必要となっています。


中小会社の監査役の業務範囲

 

(1)旧商法
 既存の株式会社のうち小会社については、監査役の業務範囲は、会社の財産を監査する「会計監査」に限定されていました。

(2)会社法
 中小会社(注)の監査役の業務範囲は、「会計監査」と取締役らの業務執行を監査する「業務監査」の両方になります。
ただし、『非公開会社』は監査役の業務範囲を会計監査に限定するみなし規定がはたらきますので、法令上は定款変更する必要なく会計監査に限定されます。

 したがって会社法施行後、監査役の業務範囲が拡大されるのは中小会社の『公開会社』であり、業務範囲は、会計監査だけだったのが会計監査と業務監査の両方になります。
   

(注)会社法上、中小会社とは大会社以外の株式会社、すなわち資本金5億円未満かつ負債200億円未満の株式会社をいいます。
  

公開会社と非公開会社


   
 会社法で定義する『公開会社』と『非公開会社』は、株式の譲渡制限規定が設けられているか否かによります。
 『公開会社』とは、発行している株式1株でも譲渡自由な株式がある株式会社で、逆に『非公開会社』とは、発行株式の全部について譲渡制限規定がある株式会社をいいます。
この株式の譲渡制限規定の有無は、会社の登記簿謄本に記載されています。
 
 なお、既存の有限会社については、一律非公開会社としてみなされるようになっています。

監査役に関する登記手続

   既存の株式会社の登記簿謄本に、株式の譲渡制限規定が記載されていない中小会社は、会社法施行日(5月1日)以降、『公開会社』となっています。 これに該当する会社は、今後『公開会社』として存続する場合でも、『非公開会社』に変更する場合でも監査役に関連した下記の登記手続が必要です。

(1)公開会社の登記手続
 公開会社の監査役は、会社法施行日(5月1日)に任期満了というかたちで一旦退任となります。
なぜなら、公開会社の監査役の監査範囲は、自動的に業務監査部分まで拡大されますので、会社法に規定する会計監査に限定する旨の定款の定めを廃止したことになるからです。
 そして新たに、会計監査及び業務監査を行う意思と能力のある人を監査役として選任することとされています。選任される監査役は、従来の監査役でも差し支えありません。

(2)非公開会社の登記手続
 会社法施行日前(4月30日付)までの、非公開会社への変更登記の手続が必要です。
具体的には、株式譲渡制限規定を新設する旨の株主総会決議による定款変更と、登記手続が必要となってきます。
 この結果、会社法施行日以降、非公開会社となりますので、監査役は従来どおり会計監査権限のみをもつことになり、会社法施行後も退任することなく、任期に影響はありません。

~新会社法・配当の改正~利益配当が何度でも!

平成18年5月施行予定の新会社法では、配当に関して取扱いが変更されます。
今回はその主なものについてご説明いたします。


1.1事業年度に何度でも配当を行うことが可能に

・現行法
  利益の配当は通常の期末配当と中間配当の年2回に制限されています。

・新会社法
  制限されることなく年に何回でも配当を行うことが可能となります。

2.取締役会決議による配当が可能に

・現行法
  通常の期末配当を行うのに株主総会の普通決議が必要です。
  (ただし、委員会等設置会社においては取締役会の決議によることが可能です。)

・新会社法
  次のすべての要件を満たす場合は、取締役会の決議によることが可能となります。
 (1)取締役会・監査役会・会計監査人のすべてを設置する。
 (2)取締役の任期を1年とする。
 (3)定款に取締役会の決議にて配当できることを定める。
 (4)最終事業年度に係る計算書類が適法決算である。

3.配当原資が金銭以外の財産でも可能なことが明文化

・現行法
  通常の配当において金銭以外の財産を配当することについては明文規定ありません。
また、中間配当については法律上、「金銭の分配」と明記されています。
従って、金銭の交付によることが基本とされています。

・新会社法
  通常の配当(注1)において金銭以外の財産(注2)を交付することが明文で認められることとなりました。
   (注1)中間配当については金銭のみです。
   (注2)自己株式・自己新株予約権・自社の社債を除きます。

4.期間利益を配当可能利益(分配可能額)に反映することが可能に

・現行法
  配当可能利益の算出に期間利益を反映させることはできません。 
 前期末の貸借対照表上の純資産額から資本の額や法定準備金の額など一定の金額を差し引いた残額が配当可能利益となります。
  
 ・新会社法
  臨時決算(期中に行う決算に準じた手続き)を行う場合は、前期末から臨時決算日までの 期間損益を反映させることができます。
  配当可能利益(新会社法では分配可能額といいます。)は次により計算した金額となります。

  分配可能額=(a)+(b)+(c)-(d)

  (a):前期末の純資産額から資本の額や法定準備金の額などを差し引いた残額
  (b):前期末後の下記の変動額
      資本金・準備金減少額-自己株式の処分・消却額(帳簿価額)-剰余金配当額
  (c):臨時決算による下記の金額
      期間損益+自己株式処分の対価
  (d):法務省令で定める一定の金額

~新会社法~施行後の有限会社等の対応について(2)

 平成18年5月施行予定の新会社法においては、有限会社制度が廃止されます。
この廃止に伴い、新会社法施行後に有限会社が必要とされる機関設計について取り上げます。

1.有限会社が株式会社へ移行した場合の機関設計

 有限会社が株式会社へ移行した場合、公開会社(※1)でない株式会社(以下『非公開会社』という)として、現行の有限会社に準じた簡易な機関設計が認められています。

●株主総会と取締役は必要。取締役会・監査役は設置しなくても良い。

 非公開会社においては、取締役会・監査役は任意の機関設計となります。
取締役会を設置しないことにより、オーナー経営者個人の意思決定による迅速な経営が可能となるメリットがあります。

●取締役会を設置しない場合には取締役は1人でも良い。

 これまでの商法では取締役は3人以上必要となっていますが、取締役会を設置しない場合には、 現行の有限会社と同様に1名でもかまいません。この場合、現在の株式会社の定款には 「取締役3名以上置く」旨の規定が通常存在するため、その記載を削除することが必要になります。
 ただし、取締役会を設置する場合には、取締役は3名以上必要です。

●取締役・監査役・会計参与の任期は、定款で最長10年まで伸長できる。

 現行商法では取締役会の任期は原則として2年、監査役の任期は原則として4年ですが、 非公開会社においては、これらの任期を最長10年まで伸長することができるようになります。
 また会計参与(※2)は社外取締役に準じた取り扱いとなるため、同じく最長10年の任期となります。
 従って、取締役・監査役・会計参与の任期を定款に定め、10年に伸長しておけば、 手間とコストの削減になります。

2.有限会社から株式会社へ移行するメリット・デメリット



 有限会社制度の廃止に伴い、現行の有限会社が株式会社に移行するか移行しないかの判断資料なる、メリットとデメリットは以下の通りです。

●メリット
 (1)有限会社よりも信用力がつく点
 (2)経過措置を気にする必要がない点
 (3)昔の会社というイメージがなくなる点

●デメリット 
 (1)役員の任期がないという特典を放棄する点
 (2)決算公告が必要となってくる点
 (3)大会社(※3)は会計監査人を設置する必要がある点

用語説明

※1公開会社:定款に株式譲渡制限を設けていない株式会社のことを公開会社といい、 株式上場といった意味での『公開』ではありません。
 「株式譲渡制限会社」とは、株式の譲渡(売却・贈与など)について、定款に「会社の承認が必要である」 という定めがある株式会社をいいます。株主は会社の株式を売ってもよいのですが、そのときには会社の承認を得るという制限があります。

※2会計参与:取締役と共同して計算書類を作成する税理士等をいいます。

※3大会社:資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社をいいます。

~新会社法~施行後の有限会社等の対応について(1)

 平成18年5月施行予定の新会社法においては、有限会社制度が廃止されます。
この廃止に伴い、新会社法施行後に有限会社が必要とされる対応を取り上げます。

1.新会社法施行後も有限会社として存続する場合の手続は不要


既存の有限会社は、株式会社への移行の手続きをとらない限り、特例有限会社として存続します。
特例有限会社とは、会社法の規定による株式会社で、商号中には『有限会社』の文字を用いることが必要です。

2.有限会社が新会社法施行後に株式会社に移行する手続


有限会社が株式会社に移行する場合には、現行の商法・有限会社法上は組織変更の手続きが必要となりますが、会社法上は、商号変更手続きが必要です。

●商号変更手続きは、下記の通りです。

(1)定款変更手続きを行います。
株主総会の特別決議により定款を変更して、商号を『有限会社』から『株式会社』に変更します。

(2)(1)の株主総会決議から2週間以内に、下記の登記を行います。
 ・特例有限会社の解散登記。
 ・株式会社の設立登記。
  ※登記日より株式会社となります。

●特例有限会社が債務超過であっても、株式会社への移行は可能です。

登記手続上は、解散・設立の形式をとるものの、実態は単なる商号変更です。
このことから、債務超過の特例有限会社が株式会社へ移行する場合、新たに設立される株式会社における資本充実が害されません。

●その他の留意点

(1)株式会社にいったん移行した後は、特例有限会社に移行することはできません。

(2)事業年度は分断します。
旧来の特例有限会社が解散し、株式会社を設立しますので、会社法上は、事業年度が分断します。
ただし、税務上は解散・設立はなかったものとみなし、事業年度を分断しません。
従って、それぞれの年度で決算を組んで申告書を作成し、提出する必要はありません。

平成18年度税制改正について(2)

1.定率減税の廃止

所得税は平成18年分、個人所得税の平成18年度分をもって廃止されました。また、限度額については平成19年分から廃止されます。

●所得税     
控除率 10%→廃止 、 控除限度額 12.5万円→廃止(19年1月~)

●個人住民税  
控除率 7.5%→廃止 、 控除限度額   2万円→廃止(19年6月~)

2.税率構造が改正されました

平成19年度分の所得税、個人住民税の税率構造が改正されました。

●所得税    [現行] 4段階(10%~37%)  →[改正後] 6段階(5%~40%)
●個人住民税 [現行] 3段階( 5%~13%)  →[改正後] 一律 10%

3.地震保険控除が創設されました

地震保険契約に係る地震等部分の保険料等が全額(最高7万5千円)控除されます。

●所得税(平成19年分から)
地震保険契約に係る地震等部分の保険料等の全額その年分の総所得金額から控除
     →最高5万円

●個人住民税(平成20年分から)
地震保険契約に係る地震等部分の保険料等の1/2その前年分の総所得金額から控除
     →最高2万5千円

4.既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除制度が創設されました

住宅耐震改修に要した費用の10%(上限20万円)がその年分の所得金額から税額控除されます。
ただし、一定の区域内にある昭和56年5月31日以前に建築された家屋に限られます。


5.業績連動型報酬の損金算入

非同族会社の法人がその役員に対して支給する給与で、

①当該事業年度において損金経理していること、
②算定方法につき確定額を限度として報酬委員会における決定等の適正な手続がとられていること
③有価証券報告書等で開示されていること

など、その他一定の要件を満たすものが新たに損金算入可能となりました。

平成18年度税制改正に向けての要望内容

政府税制調査会は、先月25日総会を開き、来年度税制改正へ向け議論をスタートさせています。
今回は、税制改正の議論内容のうち、注目すべき項目について取り上げます。


電話加入権の償却を要望している。

 総務省は、将来的に固定電話の施設設置負担金が無料化され、譲渡性がなくなった場合に、減価償却資産として償却できるようにするための法整理を行うことを要望しています。

(1)電話加入権の税務上の処理
 電話加入権とは、契約者が契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利で、税務上、 非減価償却資産として位置付けられています。固定電話の電話加入権は取得時の価額、一契約あたりの施設設置負担金と手数料等の支出額をもって無形固定資産に計上されます。

 ちなみに、携帯電話の新規加入料が、平成8年に無料化されたことに伴い、法人税法の通達改正が行われ、非減価償却資産として位置付けられてきた携帯電話の利用権を、減価償却資産「電気通信施設利用権」とする措置が講じられています。


(2)現状と今後の動向
 電話加入権の市場の状況をみると、電話加入権売買取引価額は、平成7年頃5万5,000円でしたが、平成17年5月現在、7,000円と大幅に下落しています。
 総務省は、将来的に固定電話の電話加入権が無料化され、『譲渡性がなくなった場合』に、減価償却資産として償却できるようにすることを要望しています。

 しかし、平成17年3月に施設設置負担金の金額が半額へと値下げされた際、税制当局は、施設設置負担金が半額になったとしても電話加入権という権利がなくなったものではないことや、譲渡性が完全に失われたわけでもない等の理由から、非減価償却資産としての位置付けの見直しを講じることはありませんでした。

 したがって、NTTが電話加入権を無料化する方針を明らかにするなど、施設設置負担金の譲渡性がなくなることが具体的に明らかにならない限り、減価償却資産へと法改正が行われる可能性は少ないようです。


IT投資促進税制は廃止の可能性がある。

 IT投資促進税制とは、青色申告書を提出する全ての企業が、自社利用のIT投資を一定額以上行った場合には、その取得価額に対する10%の税額控除、または50%の特別償却を行うことを認める制度です。
 
 平成15年度税制改正で3年間の時限措置として導入されたIT投資促進税制と研究開発促進税制(上乗せ措置)については、最近の企業業績の回復傾向からは、効果が確認できるとして政府税調としては期間満了で廃止を提言する可能性が高くなっています。
 しかし産業界及び、関係省庁からは「恒久化、最低限延長を」との強い存続要望が出ていることから、議論がもつれる可能性もあるため、最終的には与党税調で政治決着が図られる予定です。  


定率減税は平成19年分からの全廃が濃厚

 定率減税とは、所得税と個人住民税から、一定の割合を差し引く減税制度のことです。定率減税は「平成11年度税制改正」において家計の税負担を軽減する目的で導入された恒久的な減税です。
 所得税については税額の20%相当(25万円を限度)が、個人住民税では税額の15%相当(4万円を限度)が控除されます。
 
 この定率減税の制度は、今後なくなる方向にあります。
平成17年分は所得税額の20%のまま残りますが、平成18年分については10%になり、平成19年分から定率減税の制度が使えなくなる予定になっています。定率減税がなくなると、所得税の負担が、かなり大きくなると予想されます。

17年度税制改正固まる

去る12月15日、政府与党は『平成17年度税制改正大綱』を発表しました。
所得税、住民税の定率減税縮小が話題を呼ぶなか、また一方、住宅関連
では小幅な改正に留まるようです。

例年どおりであればこの税制改正大綱の内容が閣議決定され国会を通過
することになります。今回の税制改正はほぼ決定したものとみてよいと考
えられます。

その中で、注目すべき項目について見てゆくこととします。

住宅税制の拡充

次の特例の対象に「耐震基準等に適合している既存住宅」が追加されま
した。 従来の適用要件は、築年数20年以内又は25年以内に制限され
ていました。

【住宅ローン控除】
【住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例】
(注)平成17年4月1日以後に取得した既存住宅に適用
【特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例】
(注)平成17年1月1日以後に譲渡資産を譲渡し、平成17年4月1日以後
   に買換資産の取得をする場合に適用


中小企業・ベンチャー支援の強化

「人材投資促進税制」が創設されました。
これは、教育訓練費を基準額より増加させた企業について、その増加額の
25%が税額控除できるというものです。また、中小企業については一定の
優遇措置が設けられています。ただし、法人税額の10%が限度となります。
(注)平成17年4月1日以後に開始する事業年度について適用。
   3年間の時限措置
    

金融・証券税制

1.タンス株の特定口座への受け入れが新たに実施されます。一定の要件
  の下で、特定口座にタンス株を実際の取得日及び取得価額で受け入れ
  ることができます。
  従来可能であったみなし取得価格での受け入れはできなくなります。     
  (注)平成17年4月1日から平成21年5月31日までの期間に適用 
2.特定口座内の無価値化損失による株式について一定要件の下で譲渡損
  を認識し、損益通算が可能になりました。
  (注)平成17年4月1日以後に特定口座内保管上場株式等につき、上場
     株式等に該当しなくなった場合に適用

定率減税の縮小

定率減税の控除率が所得税は20%から10%へ、住民税は15%から7.5%へ
縮小になりました。
(注)所得税は平成18年1月、住民税は平成18年6月徴収分より適用

企業再生の円滑化

民事再生法等の法的整理に加え、私的整理等において債務免除益が行われ
た場合にも、評価損益の計上・期限切れ繰越欠損金の優先利用が可能となり
ました。

■その他
   
確定申告等での社会保険料控除について、国民年金保険料の支払証明書を
添付することが 義務付けられました。
(注)平成17年分以後の所得税より適用