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小規模宅地等の特例~二世帯住宅でも適用可能!?~
非常に有効な相続対策として、多くの人が活用している "小規模宅地等の特例"
二世帯住宅でも一定の要件を満たせば、被相続人だけでなく
相続人の居住部分に対応する宅地等についても評価減が認められます。
今回は、二世帯住宅における、小規模宅地等の特例の適用についてご紹介します。
1.小規模宅地等の特例とは
相続時の遺産のなかに、
① 居住用や事業用に使われていた宅地等で
② 一定の建物または構築物の敷地になっているものがある場合に
その宅地等の相続税評価額の一定割合を減額できる特例です。
2.二世帯住宅で適用は可能?
(1)二世帯住宅での適用について
二世帯住宅でも、特定居住用宅地等として
80%の評価減の適用を受けることが可能です。
ただし、適用を受けるには、以下の条件に該当する必要があります。
・ 「同居親族」として認められること
・ 「同居親族」が相続開始時から相続税の申告期限まで
引き続き当該宅地等を有し、かつ、その家屋に居住していること
(2)「同居親族」の要件
被相続人とその親族が、互いのプライバシーを尊重するために
区分して別々に暮らす二世帯住宅の場合、以下の3つの要件を
全て満たしたうえで申告をすれば、「同居親族」として認められます。
【要件1】 共同住宅の全部を被相続人又はその親族が所有
【要件2】 適用を受ける親族が、被相続人が相続開始の直前において
居住の用に供していた独立部分以外の独立部分に居住していた
【要件3】 被相続人の配偶者がいない、または被相続人の独立部分に
ともに起居していた同居親族(相続人)がいない
3.具体例
① 一般的な二世帯住宅の例
【 戸建住宅を左側と右側に区分するタイプの二世帯住宅の場合 】
・ 戸建住宅の左側・・・被相続人である母親が住んでいる
・ 戸建住宅の右側・・・相続人である長男が住んでいる
⇒ 特例の適用が可能です。
長男が上記要件を全て満たせば、構造上区分されている戸建住宅でも、
母親および長男の居住する部分に対応する宅地等も
80%の評価減が認められます。
② 共同住宅の例
【 3階建の建物で各階の構成が以下のようになっている場合 】
・ 3階部分・・・被相続人である母親が単身で暮らしている
・ 2階部分・・・相続人である長男の夫婦が住んでいる
・ 1階部分・・・他の利用(親族以外が住んでいる)
⇒ 特例の適用が可能です。
長男が上記要件を全て満たせば、母親の居住部分だけでなく、
長男夫婦の居住する部分に対応する宅地等も
80%の評価減が認められます。
4.相続税評価額が大きく異なります!
二世帯住宅の場合は、上記特例が適用可能か否かにより
相続税評価額が大きく異なります。
適用要件をご参考に、相続人の居住部分に対応する宅地等について、
評価額の減額が認められるかどうかをご確認ください。
これまでの相続税対策は今すぐ見直しを!!~小規模宅地等の特例の改正~
これまでの相続税対策は今すぐ見直しを!!~小規模宅地等の特例の改正~
非常に有効な相続対策として、多くの人が活用していた“小規模宅地等の特例を活用した相続税対策”が平成22年度の税制改正により、大幅な見直しが必要となりました。
今回は、小規模宅地等の特例の改正を取り上げます。
1.共同相続の場合は、継続して居住しないと、相続税負担が増大することに!!
改正前は、被相続人の自宅を複数の相続人で共同で相続した場合、相続人の誰か一人が相続後も引き続き居住をしていれば、居住していない相続人の相続分も併せて、その宅地の評価額が240㎡までは、本来の評価額の80%が減額されていました。
しかし、本改正により、本特例の対象となるのは、継続して居住する相続人の持分のみとなり、継続して居住をしない相続人の持分については、評価額の80%の減額の対象外となりました。
【具体例】
被相続人(夫)所有の評価額1億円の宅地を、相続後も継続して居住する妻と居住しない子が2分の1ずつ(5000万円ずつ)共同で相続する場合
(改正前) 妻、子それぞれの持分が特例の適用対象。
妻、子のそれぞれの持分の評価額が1000万円まで減額
(改正後) 妻のみが特例の対象に 妻の持分は1000万円まで減額
子の持分は減額の対象外。
2.継続して事業を行わない場合も、相続税負担が増大することに!!
改正前は相続人が相続税の申告期限までに引き続き居住または、事業を継続しなかった場合でもその土地の200㎡までは、本来の評価額の50%が減額されることになっていました。
しかし、本改正により、この評価額の50%減額特例が廃止されました。
【具体例】
評価額1億円の住宅や事業用地の場合
(改正前)
相続人が相続税の申告期限まで引き続き居住または事業を継続しなくても1億円×50%=5000万円が減額
(改正後)
相続人が相続税の申告期限まで引き続き居住または事業を継続しなければ、減額の適用無し
3.適用はいつから
平成22年4月1日以後の相続または遺贈により取得する小規模宅地等に係る相続税について
適用されます。
4.まとめ
本改正により、“継続して居住するか否か”で納める相続税が大きく異なることになりました。
相続時に改正前の本特例を活用を想定した、相続財産の評価減対策を行われている方も 多いかと思われます。
そのような方は今すぐに、相続対策の見直しを行いましょう!!
定期金の経過措置期間中の評価が明らかに
定期金の経過措置期間中の評価が明らかに
平成23年3月31日までの契約変更は、解約返戻金や一時金による評価となります。
Ⅰ.定期金評価の見直しとは?
平成22年度の相続税法の改正により、定期金に関する評価方法が見直されました。
定期金の評価とは?
相続税24条に規定されるもので、簡単に言うと、相続において保険契約等を基に
した年金等を受ける権利(受給権)をどう評価するかというものです。
従来、定期金給付事由が発生している有期定期金については、その残存期間に応じ
給付金総額の20%~70%で評価するとされていました。
しかし、実際の解約返戻金や一時金と評価額の乖離が問題視されてきました。
今回の改正により、今後は解約返戻金や一時金相当額で評価されることになり、
平成23年4月1日以後の相続・贈与から適用となったものです。
ただし、これは経過措置設けられ、次のようなものでした。
〇 平成22年3月31日までに締結された定期金給付契約
〇 平成22年4月1日から平成23年3月31日の間に相続などで取得するもの
⇒ 改正前の評価を適用
この改正前の評価をうけるべく、駆け込み的な契約をされた方も見受けられたようです。
Ⅱ.経過措置期間中の契約変更の取扱いが明確化された
ところが、このたび公布された政令による経過措置では、以下のようなものでした。
〇 平成22年3月31日までの定期金給付契約であっても、
〇 平成23年3月31日までの間に、契約変更があった場合
⇒ 改正後の評価を適用
この契約変更は、軽微な変更の場合を除いた契約者や定期金受取人の変更などを指します。
つまり、平成22年3月31日までの契約でも、経過期間中に受取人を変更などした場合は、
その解約返戻金等による評価を受けることになります。
取り扱いに充分ご注意ください。
次回は、「小規模宅地特例の見直しと相続税への影響」についてご紹介します。
事業承継 Ⅳ 【相続税・贈与税】【相続・贈与税】
事業承継税制~納税猶予制度の適用要件~
Ⅰ.納税猶予制度の適用を受けるには
相続税・贈与税の納税猶予制度の適用を受けるためには、
以下の要件を満たす必要があります。
Ⅱ.『非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例』の 適用要件
1.認定
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき
『経済産業大臣の認定』を受けること
2.会社の主な要件
次の会社のいずれにも該当しないこと
・上場会社、中小企業者に該当しない会社
・風俗営業会社
・資産管理会社
・総収入金額、従業員数がゼロの会社
3.先代経営者である被相続人の主な要件
①会社の代表者であったこと
②相続開始直前において、被相続人と同族関係者で総議決権数の
過半数を保有し、かつ、後継者を除いた同族内で最も多くの
議決権数を保有していたこと
4.後継者である相続人等の主な要件
①相続開始から5ヶ月後において会社の代表者であること
②先代経営者(被相続人)の親族であること
③相続開始時において、後継者と同族関係者で総議決権数の
過半数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの
議決権数を保有することとなること
5.書類の提出
相続税の申告期限までに、この特例の適用を受ける旨を記載した
相続税の申告書および一定書類を税務署へ提出すること
6.担保の提供
納税が猶予される相続税額および利子税の額に見合う担保を
税務署へ提供すること
以上が、『非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例』の
適用を受けるための要件となります。
Ⅲ.『非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例』の
適用要件
1.株式の取得
贈与により、先代経営者である贈与者から、全部又は一定以上の
非上場株式等を取得すること
2.認定
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき
『経済産業大臣の認定』を受けること
3.会社の主な要件
「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」における
会社の要件と同じ
4.先代経営者である贈与者の主な要件
①会社の代表者であったこと
②贈与の時までに会社の役員を退任すること
③贈与直前において、贈与者と同族関係者で総議決権数の
過半数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの
議決権数を保有していたこと
5.後継者である受贈者の主な要件
贈与の時において、
①会社の代表者であること
②先代経営者(贈与者)の親族であること
③役員等の就任から3年以上を経過していること
④後継者および後継者と同族関係者で総議決権数の
過半数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの
議決権数を保有することとなること
6.書類の提出
贈与税の申告期限までに、この特例の適用を受ける旨を記載した
贈与税の申告書および一定書類を税務署へ提出すること
7.担保の提供
納税が猶予される贈与税額および利子税の額に見合う担保を
税務署に提供すること
以上が『非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例』の
適用を受けるための要件となります。
次回は、『納税猶予制度の適用を受ける際の手続』についてご案内致します。
事業承継 Ⅲ
事業承継税制~納税猶予制度の創設~
1.納税猶予制度の創設
これまで中小企業は、事業承継の際の相続税の負担が大きな問題となっており
ました。
そこで、相続税の負担を軽減するため
・中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 (以下「円滑化法」という。)
・平成21年度税制改正
により、非上場株式にかかる相続税・贈与税の納税猶予制度が創設されました。
2.納税猶予制度の概要
(1) 相続税の納税猶予とは
①概要
後継者である相続人が、非上場会社を経営していた先代経営者(被相続人)から
相続によりその保有株式等を取得して、事業を継続していく場合に、後継者が納付
すべき相続税額のうち、保有部式等の課税価格の80%に相当する相続税額につい
ては、その後継者の死亡等の日まで納税が猶予されるというものです。
ただし、相続前から後継者が既に保有している議決権株式等を含め、発行済議決権
株式総数の3分の2に達するまでの部分に限ります。
②いつから適用?
相続税の納税猶予制度は、平成20年10月1日以後の相続等について適用されます。
(2) 贈与税の納税猶予とは
①概要
後継者が、円滑化法に基づく経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の代表権を
有していた親族から、贈与によりその保有株式等の全部を取得した場合には、一定
の株式等の贈与に係る贈与税の全額の納税が猶予されます。
ただし、贈与前から既に後継者が保有していたものを含めて、発行済議決権株式等
の総数等の3分の2に達するまでの部分が上限となります。
②いつから適用?
贈与税の納税猶予制度は、平成21年4月1日以降の贈与からの適用されます。
(3)適用を受けるための注意点
① 納税猶予制度は要件・確認事項が多くあるため、見落とさないように注意が必要です。
② 納税猶予の割合が異なります。
相続税 ・・・ 株式総数の2/3に達するまでの部分について、課税価格の80%
に対応する相続税
贈与税 ・・・ 株式総数の2/3に達するまでの部分について、贈与税の全額
③相続税の計算時には、贈与税の納税猶予を受けた株式も相続財産に含めて計算が
行われます。
次回は、納税猶予制度の適用を受けるための要件についてご案内致します。
事業承継 Ⅱ
事業承継税制~遺留分に関する民法特例~
Ⅲ.贈与株式の評価額を予め固定しておく「固定合意」
前回の除外合意に続き、今回は「固定合意」についてご説明します。
(1)具体例
社長Aさんが自社株式3億円(60万株)を次男に生存贈与→社長Aさんの死亡時点で、自社株式が4億2,000万円(60万株)に上昇
社長Aさんには他にめぼしい財産はなかったものとします。
社長Aさんの法定相続人・・・長男・次男・長女
(2)贈与株式の評価時点・・・相続開始時が原則
「除外合意」を得られなかった場合、このまま何もしなければ、遺留分の計算上、社長Aさんから次男へ贈与された自社株式は「相続開始時点」の評価額で計算されます。したがって、長男・長女は次男に対して、4億2,000万円×2分の1×3分の1=7,000万円の遺留分減殺請求ができてしまいます。
これでは、後継者が頑張って企業価値を上げた分だけ会社経営に関係のない長男・長女がとくをすることとなり、後継者にとっては経営意欲を阻害されかねません。
(3)固定合意
そこで、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることを条件に、遺留分の計算上、贈与された自社株式の価額を「贈与時の評価額」に固定できることになりました。この場合、長男・長女の遺留分減殺請求権は5,000万円にとどまります。
これにより、後継者である次男は経営意欲を阻害されることなく、会社の発展に尽力することができるようになります。
Ⅳ.まとめ
会社を次男に承継させて、より一層会社を発展させて欲しいと願う社長様の思いは、上記の民法特例を用いることでより叶えられやすくなったと言えます。相続が「争続」にならないためにも、社長様がご健在のうちにご親族で話し合いの場を設けられることが肝要です。
事業承継 Ⅱ
事業承継税制~遺留分に関する民法特例~
Ⅰ.どういう場面で活用されるの?
中小企業オーナーの相続財産は、自社株式の占める割合がおおく、不動産なども事業用として使っているケースが多く見受けられます。そのうえ、事業の後継者以外にも子供(相続人)がおり、その分配方法が頭痛の種となることも非常に多いです。
このような場面において、中小企業オーナーが
「自分の持っている自社株式を、円滑に後継者に承継したい」
その思いを支援する制度が今回の「遺留分に関する民法特例」なのです。
Ⅱ.贈与株式を遺留分対象から除外する「除外合意」
(1)具体例
社長Aさんが所有する財産・・・自社株式3億円(60万株)のみで他にめぼしい財産なし
社長Aさんの法定相続人・・・長男・次男・長女の3人
社長Aさんが、自社株式のすべてを、後継者である次男に相続させる旨の遺言書を残して亡くなられた場合を例に考えてみましょう。
(2)遺留分減殺請求権
何も財産をもらえなかった長男・長女の立場からすると、文句を言いたくなるかもしれません。それが遺留分減殺請求権です。
では、長男・長女はそれぞれ次男に対して、どのくらい遺留分を請求できるでしょうか。
(答え) 3億円×2分の1×3分の1=5,000万円
次男に1億円の現預金があれば、兄さん・姉さんに5,000万円づつ渡すことで解決しますが、それが無い場合には次男は自社株式から5,000万円相当額(100万株)を兄さん・姉さんにそれぞれ分け与えなくてはなりません。
そうすると、自社株式が分散してしまい、次男は安心して事業を継続・発展させることができなくなります。このような事態を招くことは、社長Aさんにとっても本望ではないでしょう。
(3)除外合意
そこで、遺留分権利者全員の合意内容について家庭裁判所の許可を受けることを条件に、先代経営者から後継者へ贈与された自社株式を遺留分算定の基礎財産から除外することができるようになりました。この場合、長男・長女の遺留分減殺請求は0円となります。
従前からも、非後継者(長男・長女)が遺留分減殺請求権を相続開始前に放棄できる制度はありましたが、今回の特例では後継者(次男)が単独で家庭裁判所に申し立てることができるためより簡素な手続きで株式の分散化を未然に防げるようになりました。
次回は、もうひとつの方法、「固定合意」について解説します。
事業承継 Ⅰ
Ⅰ.はじめに
事業承継対策を先送りにしていませんか?
対策をせずに放置していると、いざ事業承継という時に、「自社株式や事業用資産が分散してしまった」、「相続税が思いのほか高く、納税資金が足りない」、「相続を巡ってもめ事が起きる」、「取引先の信頼を得られない」、といった問題が生じ、最悪の場合、廃業に至ってしまいます。しかし「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下、経営承継円滑化法)を活用することで、解決が図れる問題もあります。
そこで、今回から6回にわたって「事業承継」というテーマで、経営承継円滑化法の内容をご紹介していきたいと思います。
~予定しているテーマ~
第1回 経営承継円滑化法の概要(3つの支援策)
第2回 民法の特例(遺留分に関する特例)
第3回 納税猶予制度(概要)
第4回 納税猶予制度(要件)
第5回 納税猶予制度(手続)
第6回 金融支援措置
Ⅱ.経営承継円滑化法の概要(3つの支援策)
経営承継円滑化法では、中小企業の円滑な事業継続を図るため、「遺留分に関する民法の特例」、「金融支援」、「相続税・贈与税の納税猶予制度」の3つの支援策が設けられています。
1 民法の特例
円滑な事業承継のためには、後継者が自社株式や事業用資産を承継することが必要です。しかし民法では、相続人に最低限の財産を相続する権利「遺留分」を認めています。
中小企業の経営者の場合、相続財産の大部分が自社株式や事業用資産ですので、後継者にこれらの財産を集中させようとすると、他の相続人の「遺留分」を侵害してしまう可能性があります。結果として、相続紛争の原因となったり、事業用資産が分散してしまうことになります。
そこで、経営承継円滑化法では、一定の要件を満たす後継者が、一定の手続きを経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができるようになりました。
(1)生前贈与株式を遺留分の対象から除外する。
贈与株式が遺留分減殺請求の対象外となるため、相続に伴う株式分散を未然に防止することができます。
(2)生前贈与株式の評価額を予め固定する。
後継者の貢献による株式の価値上昇分が遺留分減殺請求の対象外となるため、経営意欲が阻害されることがありません。
2 金融支援措置
後継者が経営権を取得するためには、後継者や会社が、自社株式や事業用資産を他の相続人から取得する必要があります。
この措置は以下の特例の創設により適用をうけることができるようになりました。
(1)中小企業信用保険法の特例
信用保証協会の保証付き融資において、通常の融資とは別枠での融資を受けることができます。
(2)株式会社日本政策金融公庫法の特例
日本政策金融公庫で、通常より有利な利率での借入を受けることができます。
3 相続税・贈与税の課税についての措置
税制面から円滑な事業承継を支援するため、相続税や贈与税に以下の特例が認められるようになりました。
本来であれば、相続時・贈与時に課税される税金を、将来に繰り延べることができます。また、一定の条件を満たせば、納めなくてもよくなります。
この措置は以下の制度により、適用をうけることができるようになりました。
(1)非上場株式等の相続税の納税猶予制度
(2)非上場株式等の贈与税の納税猶予制度
これらの支援策の詳しい内容は、第2回から第6回でご紹介します。
Ⅲ.次回の予告
次回は「民法の特例(遺留分に関する特例)」についてご説明します。
経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法の特例」
平成20年10月1日に施行された「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、経営承継円滑化法)」は中小企業の事業承継の総合支援策として、次の3つの内容からなっています。
①金融支援措置に関する特例
②相続における遺留分の特例
③相続税における非上場株式等の納税猶予
前回、前々回お伝えした納税猶予の制度は相続に関する制度でしたが、今回は「相続前」の制度である「遺留分に関する民法の特例」(平成21年3月1日施行)についてご紹介します。
一定の要件を満たす後継者が、先代経営者から生前贈与等により取得した自社株式について、先代経営者の推定相続人(遺留分権利者)全員との合意及び所定の手続きを行うことを前提に、2つの特例が受けられます。
Ⅰ. 特例制度の内容とその効果
(1)生前贈与株式等を遺留分の対象から除外できる「除外合意」
旧代表者の生前に、旧代表者から後継者が生前贈与された自社株式等について遺留分の算定の基礎財産から除外する合意を、旧代表者の推定相続人全員が書面により行ってから1ヶ月以内に経済産業大臣に申請して確認を受けた後、その確認後1ヶ月以内に後継者が単独で家庭裁判所に許可申請をして、家庭裁判所がそれを許可することにより、「除外合意」の効力が発生します。
この合意により事業承継に不可欠な自社株式等に関する遺留分減殺請求を未然に防ぎ、後継者に株式を集中的に持たせることが可能になります。
(2)生前贈与株式等の評価額をあらかじめ固定できる「固定合意」
旧代表者の生前に、旧代表者から後継者が生前贈与された自社株式等の評価額を合意時点の価格に固定する「固定合意」は、上記同様に経済産業大臣の確認などを経て効力が発生します。
この合意により、旧代表者から生前自社株式等を贈与された後に、後継者が自身の経営努力により自社株式等の価値が上昇しても、その上昇価値分を後継者が保持できることで、経営意欲の阻害要因を排除することができます。
※ 株式等の価額については、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人の証明を受けることが経営承継円滑化法に規定されています。
※ 中小企業庁では、「経営承継法のおける非上場株式等評価ガイドライン」を取りまとめ、評価方式と留意点をホームページで公表しています。
Ⅱ.適用要件
(1)会社の要件
特例中小企業者(法3条1項)
中小企業基本法で定められた中小企業者(一部は政令により範囲が拡大されています)のうち,3年以上継続して事業を行っている非上場会社が対象です。自社株式の存在が前提となりますので、個人事業主は対象外となります。
(2)被相続人(旧代表者)の要件
旧代表者(法3条2項)
①特例中小企業者の代表者であったこと又は現在代表者であること
②推定相続人への株式等贈与であること
(3)相続人(事業の後継者)の要件
後継者(法3条3項)
①特例中小企業者の現在代表者であること
②議決権の過半数を保有していること
※この遺留分の特例を受ける前に既に議決権の過半数を所有していた場合は対象外となります。
③先代経営者の推定相続人であること
④先代経営者からの贈与による株式等取得であること
経営承継円滑化法がついに施行!
平成20年10月1日より中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
(経営承継円滑化法)が施行されました。
この経営承継円滑化法に関しては、以下の3回にわたりその内容をご紹介しました。
「事業承継税制の見直しに合わせ、相続税の課税方式も変更に」
「非上場株式の相続税評価額が80%減に!?」
「自社株について事業承継が支援される! 」
今回は、いよいよ経営承継円滑化法が施行されたということで、
事業承継にかかる非上場株式の納税猶予制度の
対象要件について解説します。
対象となるのは?
当該制度の適用を受けられるのは、経営承継円滑化法に規定する中小企業者で、
上場会社等以外の「会社」です。
ただし、中小企業者であっても「個人」は対象外です。
これは、納税猶予の対象となる財産は、
あくまでも事業継続に必要とされる株式であり、
その他の財産は当該制度の対象とはされていないからです。
どうすれば適用される?
経済産業大臣の認定が必要です。
その申請期限は代表者である被相続人の死亡の日の翌日から10カ月以内です。
そして、この認定を受けるための要件は次のすべてを満たすことです。
イ 風俗営業会社に該当しないこと
ロ 資産保有型会社に該当しないこと
ハ 資産運用型会社に該当しないこと
ニ 直近の事業年度における総収入金額がゼロを超えること
ホ 常時使用する従業員の数が1人以上であること
ヘ 特別子会社が上場会社等、大法人等又は風俗営業会社に該当しないこと
ト 代表者が経営承継相続人であること
チ 拒否権付株式(いわゆる黄金株)を発行している場合には、
経営承継相続人以外の者が有していないこと
認定の有効期限は?
認定の有効期限は5年です。
またこの期間中は、毎年1回、
経済産業大臣に事業継続状況を報告する義務があります。
この報告の結果により取消事由に該当した場合や、
報告そのものを怠った場合にはその認定は取消されることになります。
今後の動向
今回ご紹介した認定要件については、
経営承継円滑化法施行規則に定められているものです。
死亡時まで対象株式を保有し続けた場合などに受けられる
猶予税額の免除規定などは、平成21年度税制改正で
詳細が規定される予定ですので、今後の税務の動向にも注意が必要です。
事業承継税制の見直しに合わせ、相続税の課税方式も変更に
以前「非上場株式の相続税評価額が80%減に!?」、また、前回の「自社株
について事業承継が支援される! 」において、中小企業の事業承継を円滑に
するための法案が検討されていることをご紹介いたしました。
一方、その事業承継税制の見直しにあわせて、相続税の課税方式についても、
現行の『法定相続分課税方式』から『遺産取得課税方式』に改定することが
検討がされております。
法定相続分課税方式
現行の法定相続分課税方式とは、相続税の課税価格から基礎控除分を差し
引いた残額を法定相続割合で按分し、それぞれの額に相続税率を乗じて相続
税総額を算出した後、その総額を相続人の実際の相続割合で按分して個々の
負担税額を決定するもの、をいいます。
これは、遺産分割のやり方に関わらず、相続税総額は変わらない特徴を持ち
ます。
遺産取得課税方式
これに対し遺産取得課税方式は、相続人が実際に取得した遺産額に応じて
課税を行うもの、といいます。
事業承継税制との関連は
21年度の税制改正において創設される「取引相場のない株式等に係る相続税
の納税猶予制度」では、一定の非上場中小企業の株式等について、80%の減
額措置が導入されます。
これは以前ご紹介したとおり、相続に係る非上場の株式等の相続税評価額を
80%軽減するというものです。
よって、現行の相続税総額を算出してから按分する「法定相続分課税方式」で
は、事業の後継者以外の相続人も税負担の軽減を受けることが可能となって
しまいます。
そのため、相続税の課税方式を「遺産取得方式」に見直すことによって、株式
等を承継する相続人のみが税負担の軽減を受けることができるよう、対応する
のです。
自社株について事業承継が支援される!
中小企業の事業承継の円滑化法が今国会で審議にかかり,平成21年度の税制改正で中小企業の後継者が先代の代表者から自社株を取得するにあたって,事業承継を支援するための制度が設けられることが予定されています。
遺留分算定の基礎財産から株式を除外できる!?
経済産業大臣から確認を受けた非上場株式は,民法の特例として遺留分算定の基礎財産から控除できることが予定されています。
現行の民法では配偶者や子供が最低限の資産を承継できる権利である遺留分の制約によって,事業の承継に支障をきたしている面があることから,
民法の特例を設け,現行の基礎財産から株を除外して遺産分割をすることができることとし,中小企業の事業承継を円滑に行うことが可能となります。
また,この控除制度を受けるためには
(1)先代の経営者の生前に後継者へ贈与されること
(2)遺留分権利者全員の合意に基づくこと
が必要となります。
基礎財産に含める場合も評価額を固定できる!?
上記に該当せず基礎財産に含める場合でも,遺留分権利者全員の合意に基づき生前贈与株式の価額を合意時の評価額であらかじめ固定できる制度も導入される予定です。
現行の民法では,贈与ではなく相続時における時価を遺産分割の基礎財産とみなしています。
従って贈与を受けたあと後継者の経営努力で株価評価額が上がった場合でも,上がった評価額で計算されていました。
このような「理不尽さ」を解消するために評価額が予め固定できることとなっています。
事業承継対策に活用できる種類株式
3月16日、国税庁の文書回答事例により、事業承継対策として活用できる次の3種類の株式について、評価の取り扱いが明確化されました。
(1)配当優先の無議決権株式
(2)社債類似株式
(3)拒否権付株式
今回は、この3つの種類株式について、評価の取り扱いを含め説明します。
種類株式とは
利益の配当や議決権などについて、普通の株式と異なる定めがなされた株式です。
種類株式の意義と評価
(1)配当優先の無議決権株式
【意義】
利益の配当について優先権があり、株主総会での議決権の内容が制限された株式をいいます。
【評価】
普通株式と同様の評価が原則ですが、納税者の選択により5%の評価減が可能です。
ただし、その評価減した分は議決権株式の評価額に加算されます。議決権の有無を考慮した評価になっています。
(2)社債類似株式
【意義】
次の条件を満たすものが該当します。
・優先配当であること。
・無議決権株式であること。
・一定期間後に発行会社が発行価額で取得すること。
・残余財産の分配は発行価額を上限とすること。
・他の株式を対価とする取得請求権を有しないこと。
【評価】
発行価額で評価します。
(3)拒否権付株式
【意義】
特定の事項について、株主総会の決議の他にその拒否権付株式を有する株主の承認が必要となる株式です。
一般に「黄金株」と呼ばれています。
【評価】
普通株式と同様に評価します。一株あたりの経済的な価値が変わるわけではないため、拒否権は考慮されません。
活用例
(1)事業の後継者には普通株式、他の相続人には社債類似株式などの無議決権株式を相続させます。
後継者に議決権を集中させることができるため、議決権の拡散を防ぐのに役立ちます。
(2)オーナー経営者が拒否権付株式を一定期間保有することで、経営の安定化を図ることが出来ます。
場合によっては拒否権を行使し、後継者の独断専行を防ぐなどとして活用します。