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医療法人の支配関係は出資持分で判断!
完全支配関係の定義では、「発行済み株式又は『出資』の全部を直接又は間接に保有する関係...」とされていることから、医療法人もグループ法人税制の適用対象となりえます。
しかし、「議決権は有するものの出資金額はゼロ」という社員がいるケースもあり、支配関係の判定を出資だけで行うのかどうか疑問に思われている方もいらっしゃることと思います。
そこで今回は、こうしたケースにおける完全支配関係の判定についてご説明させていただきます。
1.医療法人とグループ法人税制
医療法の改正で平成19年4月1日以後、出資持分の定めのある医療法人の設立は禁止されましたが、既存の持分の定めのある医療法人は、「経過措置型医療法人」として、当分の間の存続が認められています。
この経過措置型医療法人が、法人税法に創設されたグループ法人税制の適用になるかどうかについては、完全支配関係を定義する規定において「株式又は出資」とされていることから、出資持分のある医療法人もグループ法人税制の対象とされています。
2.出資持分のない社員がいる場合
ただし医療法人では、出資をしない者も社員となることが可能であり、出資金額ゼロの社員も社員総会では出資社員と同様に1人1個の議決権を有するため、下図のような場合の医療法人と甲社との間に、完全支配関係があるといえるのかといった疑問が生じることになりました。
この社員7名の医療法人の議決権は、同族の出資者グループが3個、非同族の社員が4個。社員総会の議事は出席者の過半数で決するため、非同族4名の社員グループが議決権による支配で出資者グループを上回ります。
一方、出資という医療法人の財産に対する支配権からみると、理事長以下3名で出資の100%を有しているので、法人の財産の全部を同族で支配していることになります。こうした社員構成の場合、出資者グループが完全に法人を支配していることになるのか?という疑問が生じます。
3.結論
結論としては、出資持分の定めのある医療法人の場合、議決権による支配関係でなく、出資金額だけで判断することになります。設例の場合には、出資の全部を一族が有していることから、医療法人と甲社の間には完全支配関係があるということになります。
企業再生税制(平成21年度改正)
景気下ブレが本格化する中で、企業再生税制がさらに使い易いものとなるよう平成21年法改正が行われました。企業を再建してゆく過程で受けた債務免除益等にストレートに課税されないで済むような特例を定めています。
一、会社更生法・民事再生法を使った企業再生
1.従来からの内容
債権者から債務免除をうけた場合、会計上は債務免除益が計上されます。このように資産の評価替えをした場合、法人税法は原則として評価損益の益金算入・損金算入を認めていません。しかし、会社更生法・民事再生法を使って企業再生をする場合には、例外的に債務免除益が益金に算入され、資産の評価損も損金に算入されます。その結果、企業再生を目指す会社は、債務免除益と資産の評価損を相殺することにより、債務免除益等に対する課税を回避することができます。
2.今回の改正点
H21年度改正により、評価損を損金算入できる「資産」に売掛金・貸付金等の債権も含まれることとなったため(法33条2項)、従来よりもさらに債務免除益等に対する課税回避を行いやすくなりました。
二、法的整理に準ずる私的整理を使った企業再生
1.従来からの内容
会社更生法・民事再生法といった法的手続きを取ることによって“事実上の倒産”という烙印を押されることを避けるために私的整理で会社を再建したいという場合もあります。そのような場合について定めたのが「その他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合」です(法25条3項・33条3項、法令24条の二)。
2.今回の改正点
しかし、実際にはこの適用要件が厳しすぎたため、今回の改正で適用要件が緩和されました(法令24条の二)。
① 第三セクターの再建を進めやすくするために、債務免除者に地方公共団体が加えられました。
② 債権者側で直接の債権放棄をすることが難しい場面での企業再建をしやすくするために、DES(債務の株式化)を行った場合も「債務免除等」に含まれることになりました。
③ 中小規模の企業再建を促進するために、専門家関与要件が3名から2名へ緩和されました。
④ さらに、中小規模の企業再建を促進するために、評価損益の計上対象資産にかかる評価差額の最低限度額を1,000万円としている点について、これを100万円とする特例が創設されました。
機械装置の新耐用年数適用に伴う諸問題を徹底解説!
20年税制改正により「機械装置」はすべて「○○業用設備」として定められました。
それに伴い、機械装置もそれぞれに対応した、耐用年数の変更が求められます。
今回は、変更処理に伴い、その判断に迷われると思われる事項につき解説いたします。
Ⅰ償却方法の異なる機械装置が新区分により同一種類になった場合の償却方法
耐用年数の大括り化に伴い,種類の異なっていた設備が同一の種類になった場合には,それぞれ次のように取り扱われます。
(1)種類の異なる設備に同一の償却方法を選択している場合・・・選択している償却方法を選定したものとみなされる
(2)種類の異なる設備に別々の償却方法を選択している場合・・・いずれかの償却方法に統一するため届出書を提出する
なお,その届出をしなかった場合には,法定償却方法を選定したものとみなされます。したがって,旧定率法または定率法に統一するのであれば,届出は要しません。
例)
旧区分
A設備・・・定額法
B設備・・・定率法
新区分(届出書は提出していない)
C設備(旧A設備と旧B設備)・・・定率法
Ⅱ耐用年数が改正された場合の中古資産の耐用年数の見積り替えの可否
中古資産の耐用年数の見積方法には,①見積法と②簡便法(法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%とする方法)とがあります。
中古資産の取得時にいずれの方法を適用していたかにより,それぞれ次のように取り扱われます。
(1)見積法を適用している場合
その改正後の法定耐用年数を基礎として使用可能期間の見積り替えをすることはできません。
ただし,改正後の法定耐用年数が現に適用している耐用年数よりも短いときは,改正後の法定耐用年数を適用することができます
(2)簡便法を適用している場合
法定耐用年数が短縮されたときは,改正後の法定耐用年数を基礎に簡便法により見積り替えをすることができます。
ただ,見積り替えをする場合の経過年数は,法定耐用年数が改正されたときの経過年数ではなく,中古資産を取得したときの経過年数によることに留意しなければなりません。
(3)耐用年数が長くなった場合
法定耐用年数が短縮されたときは見積り替えができる旨は定められていますが,法定耐用年数が長くなった場合の取扱いはありません。
しかし,法定耐用年数が長くなった場合に見積り替えをすると,見積り耐用年数が長くなります。
これは,上述したとおり,簡便法を適用する場合の「経過年数」は,あくまでもその中古資産を実際に取得したときまでの経過年数によらなければならないからです。
例)
従来10年であった耐用年数が11年になり,中古資産の取得時の経過年数が6年,法定耐用年数改正時の経過年数が8年の場合
改正前
(10年-6年)+6年×0.2=5.2年→5年
改正後
(11年-6年)+6年×0.2=6.2年→6年
(11年-8年)+8年×0.2=4.6年→4年とすることはできません。
尚、簡便法を適用している場合の見積り替えは強制適用ではありませんから,法定耐用年数が長くなった場合には,見積り替えをしないことが得策です。
(4)見積り替えの時期
簡便法を適用していた場合の耐用年数の見積り替えは,改正後の耐用年数省令の規定が適用される最初の事業年度において行う必要があります。
Ⅲまとめ
21年3月決算法人より、本格的に機械装置の新耐用年数への変更処理が行われており、実務家の方々も、その対応に追われているかと思います。
ただし、変更処理については、上述したように、税務上の有利不利の判断が必要となる場面があるため、今後もその対応には注意を要します。
含み損を抱える上場有価証券を保有する場合の法人税の節税に!
国税庁は、『上場有価証券の評価損に関するQ&A』を公表しました。これにより、上場有価証券の時価が帳簿価額に比べて50%以上下落し会計上減損処理が行われた場合、税務上その評価損を損金算入するに当たっての取扱いの明確化が図られました。
Ⅰ 株価が50%相当額を下回る場合における株価の回復可能性の判断基準
Q 株価が過去2年間にわたり50%程度以上下落した状況でなければ、上場株式の評価損を損金算入することは認められないのでしょうか。
A 必ずしも株価が過去2年間にわたり帳簿価額の50%程度以上下落した状態でなければ損金算入が認められないというものではありません。株価の回復可能性がないことについて合理的な判断基準が示される限りにおいては、その基準が尊重されることとなります。
Ⅱ 監査法人のチェックを受けて継続的に使用される形式的な判断基準
Q 税効果会計等の観点から当社の監査を担当する監査法人のチェックを受けながら、この基準を継続的に使用する予定です。この基準に基づいて損金算入することとした場合、税務上その基準に基づく損金算入の判断は合理的なものと認められますか。
A これを継続的に使用するのであれば、税務上その基準に基づく損金算入の判断は合理的なものと認められます。
Ⅲ 株価の回復可能性の判断の時期
Q 翌事業年度で株価が上昇した場合など翌事業年度以降に状況の変化があった場合には、当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要がありますか。
A 当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はありません。
Ⅳ 株価の回復可能性の判断基準に該当した場合の評価損否認金の取扱い
Q 過去の事業年度において有税で減損処理した金額のある上場株式について、その後の事業年度において、損金算入できる合理的な判断基準に該当することとなった場合には、損金算入の処理や損金算入される金額についてどのように取り扱えばよいのでしょうか。
A 評価損否認金の額も含めて、その事業年度の損金の額に算入することが認められます。なお、この場合の具体的な取扱いは、次のとおりとなります。
① 評価損否認金の額については、その事業年度において申告調整により損金の額に算入した金額を、評価損として損金経理したものとして取り扱うこととされています。
② 評価損として損金算入の対象となる金額は、その事業年度末における帳簿価額と株価との差額となります。
赤字転落企業に朗報 欠損金の繰戻し還付制度が復活!
Ⅰ 概要
平成21年度税制改正法案が国会で可決・成立し、「欠損金の繰戻し還付制度」が復活しました。
「欠損金の繰戻し還付制度」とは、欠損金が生じたときにその欠損金を前事業年度に繰戻して、既に納付済みの法人税を還付してもらえる制度です。
Ⅱ 対象法人
今回の改正で対象となる法人は資本金1億円以下の青色申告法人となります。
また「平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額」から適用されます。
Ⅲ 適用要件
適用要件として以下の点に留意する必要があります。
・還付所得事業年度から連続で青色申告書である確定申告書を提出していること。
・申告期限内までに「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出すること。
Ⅳ 欠損金の繰越控除との関係
制度上、翌期以降に繰越すことができる金額は“繰戻し還付の計算の基礎となったものを除く欠損金額”とされています。
前期の所得金額以上の欠損金がある場合、繰戻し還付適用後、「欠損金の繰越し控除制度」の適用を受けることができます。
この場合、翌期以降7年間にわたり繰越控除することができます。
Ⅴ 計算方法
還付請求金額は以下の算式で求められます。
【前期法人税額×当期欠損金額のうち前期所得金額までの欠損金額÷前期所得金額】
たとえば、当期欠損金額が700万円 前期所得金額が、500万円・法人税額が150万円である場合
繰戻し還付を受けることができる金額は…
150万円(前期法人税額150万円×当期欠損金額のうち前期所得金額までの欠損金額500万円÷前期所得金額500万円)となります。そして、前期の所得金額を上回った欠損金額200万円は、翌期以降7年間にわたり繰越控除することができます。
役員給与の改定~その給与は損金算入できますか?!~
役員給与が損金不算入となった場合には法人税額が増額されてしまいます。今回は役員給与を改定した場合に損金不算入とならないための注意点をご紹介します。
Ⅰ.改定事由に注意!
役員給与の改定は次の事由のいずれかに該当する場合にのみ損金算入できます。
① 通常改定:会計期間開始の日から3月を経過する日までにされた定期給与の額の改定
② 臨時改定:役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による定期給与の額の改定。
③ 業績悪化改定:経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定
※「臨時改定」の事由には入院により減額した場合を含みます。
※ 「業績悪化改定」の事由は次の場合が該当します。
・株主との関係上経営責任として役員給与を引下げざるを得ない場合
・銀行融資の条件として役員給与の引下げを求められた場合
・長期的な視点に立った経営改善計画のもとで給与を引下げる場合
Ⅱ.改定時期に注意!
① 定期給与を株主総会の翌月分から増額する場合
株主総会の翌月分から増額しても定期同額給与に該当します。
4月1日が事業年度開始の日で6月25日が株主総会だった場合、役員給与の改定が6月支給分から又は7月支給分からのいずれの場合でも定期同額給与に該当します。
② 複数回の改定が行われた場合
通常改定後の改定が臨時改定事由に該当しない場合には、通常改定後の金額に上乗せした部分の金額は損金の額に算入されません。
③ 役員給与の額の据置きを定時株主総会で決議せず、その後に減額した場合
この場合、通常改定において、同額改定の決議があったとみなします。
その後に減額改定があった場合には減額改定前の定期給与のうち減額改定後の定期給与の額を超える金額は損金の額に算入されません。
リース取引の税務・会計処理のポイント―③―
連載にてリース取引の税務・会計処理のポイント解説を行っております。
今回は最終回として、リース取引の実務にて生じた様々な疑問をQ&A形式にて解決します。
1.
Q.今回リース取引の改正について、その経緯を教えて下さい。
A.
今回のリース取引の改正は実質的には、所有権移転外ファイナンス・リース取引の改正となります。
所有権移転外ファイナンス・リース取引の改正前会計基準では、売買処理を原則としつつも、一定の注記を要件として賃貸借処理を例外として認めていました。(これに伴い税務上も賃貸借処理を容認。)
しかし、実務上99%の企業が例外処理である賃貸借処理を採用しているという異常な状況や、会計基準の国際的な統合の動きを受けて、所有権移転外リース取引を原則の売買処理一本に見直すこととなったのです。
2.
Q.少額・短期のリース取引や中小法人のリース取引については従来の賃貸借処理が認められるということが書いてあったのですが、弊社は一般的な中小企業の分類だと思います。
ということは、今後も従来通りの処理で何ら実務的に問題はないということでしょうか?
A.
そもそも、中小法人に賃貸借処理が認められるのは、中小法人がリース会計基準に準拠することが、法令上強制されていないためです。(注)
しかし、上記の場合に従来の賃貸借処理が認められるというのは、あくまでも会計上の話であって、税務上では賃貸借処理は認められません。
税務上は売買処理が適用されるため、リース資産引き渡し時に、資産計上し、減価償却を行うことと、消費税の総額を認識する必要があります。
これにより、会計上賃貸借処理をした場合、税務上との取扱いに差異が生じてしまいますが、会計上賃借料として計上した金額は、税務上の減価償却費として取扱われることとなっているため、基本的には、差異が生じないようになっています。(減価償却明細書の提出も不要。)
よって、ご質問の場合、従来通りの賃貸借処理で問題ありませんが、消費税の取扱いには注意する必要があります。
(注)リース会計基準の適用が強制される企業
①金融商品取引法(証券取引法)が適用される会社及びその子会社や関連会社(上場会社等)
②会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上である会社)
③会計監査人設置会社及びその子会社
3.
Q.9万円のパソコンを所有権移転外リースにより取得した場合、資産計上されるため、これを10万円未満の少額減価償却資産として、全額費用とすることはできるのでしょうか?
A.
税務上、10万円未満の少額資産や20万円未満の減価償却資産につき、一括で損金算入ができる取扱いがありますが、ご質問のリース取引の場合にはその適用がありません。
そのため、少額であっても、資産計上をして減価償却を行わなければいけません。
ただし、中小企業者等の30万円未満の少額減価償却資産の特例については、取得事業年度の損金経理要件を満たせば適用があるため、全額費用とすることも可能となります。
4.
Q.所有権移転外リース取引が、原則売買処理となりましたが、リース税額控除や、特別償却、圧縮記帳の適用関係はどうなるのでしょうか?
A.
リース税額控除、特別償却,圧縮記帳の適用はありません。
これは、所有権移転外リース取引で取得したリース資産には,リース期間終了後に借手に所有権が移転しないことなどから,「実質的に取得された資産」ではないと取扱うからです。
ただし,所有権移転外リース取引で取得したものとされるリース資産にも,通常の売買取引ベースの税額控除の適用はあります。
税額控除割合は,中小企業投資促進税制の場合,通常の取得で「取得価額×7%」,リース税額控除では,「リース料総額×60%×7%」とされていることから,売買とみなされて取得と同様の控除割合で控除税額が受けることができるのは,借り手側に有利な規定といえます。
5.
Q.税務上契約書上にて利息相当額が区分されている場合には、利息部分と本体部分とに区分することができるようですが、区分した方が良いのでしょうか?
A.
御質問の取扱いは、あくまでも企業の任意となります。
ちなみに、利息部分が区分されている場合には、以下のような影響があると思われます。
①消費税法上、利息部分は非課税仕入となるため、仕入税額控除ができません。
②外形標準課税の適用を受ける企業の場合、区分された利息部分は課税標準である、付加価値割に含まれます。
よって、外形標準課税の負担が増加します。
6.
Q.今回改正により、資産計上された所有権移転外リース資産の固定資産税について、申告・納税を当社で行わなければいけないのでしょうか?
A.
行う必要はありません。
固定資産税(償却資産税)の納税義務者は,所有者と規定されていることから,所有権が最終的に移転しない、所有権移転外ファイナンス・リースは、改正後も,所有者である貸手のリース会社が申告や納税を行うことになります。
以上、三回にわたり、リースの取扱いについて解説させていただきました。
適用が平成20年4月1日以後に契約締結をしたリース取引のため、まだ対応に追われている企業もあると思われます。
この三回の税務情報が、少しでもそのような関係者の皆様のお役に立てば幸いです。
リース取引の税務・会計処理のポイント―②―
前回より連載でリース取引の税務・会計処理のポイント解説を行っております。
今回は第2回として、企業が行っているリース取引の大半を占めている、所有権移転外ファイナンスリース取引の借り手側処理に焦点を当てて解説します。
1.所有権移転外リース取引の会計・税務の取扱いの違い
【会計上】
<取得価額>
リース料総額-利息相当額
<利息相当額の配分方法>
原則:利息法
例外(一定の要件を満たす場合):定額法又は利息相当額を区分しない方法
<減価償却方法>
定額法、級数法、生産高比例法等の選択適用
<耐用年数>
原則リース期間
<残存価額>
ゼロ(残価保証のある場合は、その額)
<リース資産に重要性が乏しい場合又は中小企業>
賃貸借処理も可能
【税務上】
<取得価額>
原則:リース料総額(残価保証のある場合は、その額をマイナスする)
例外(契約上利息を区分できる場合):リース料総額-利息相当額とすることができる
<利息相当額の配分方法>
利息法又は定額法
<減価償却方法>
リース期間定額法
<耐用年数>
リース期間
<残存価額>
ゼロ
<リース資産に重要性が乏しい場合又は中小企業>
賃貸借処理は不可
<消費税>
契約で利息相当額が明示されていない場合:リース料総額が課税仕入
契約で利息相当額が明示されている場合:利息相当額は非課税仕入
2.リース資産に重要性が乏しい場合とは
所有権移転外ファイナンスリースの、原則的な会計処理は、上記のようにリース料総額を利息部分とリース資産部分に分けて行うこととなっています。
ところが、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合又は中小企業は,賃貸借処理を行うことができることとなっています。
個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは,次の①から③のいずれかを満たす場合としています。
①重要性が乏しい減価償却資産について,購入時に費用処理する方法が採用されている場合で,リース料総額が当該基準額以下のリース取引
②リース期間が1年以内のリース取引
③企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で,リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引
≪ポイント≫
会計上,賃貸借処理をした場合でも,法人税法上,消費税法上は所有権移転外ファイナンス・リース取引は売買とみなされます。
しかし、借手が賃借料として経理した金額は減価償却費として損金経理した金額に含まれるため、申告調整は生じません。
3.仕訳方法
【原則処理】
<①売買処理→利息相当額を区分しない場合>
[リース取引開始日]
リース資産**/リース債務**
仮払消費税等**/
[リース支払日]
リース債務**/現金預金**
[決算時]
減価償却費**/リース資産**
<②売買処理→利息相当額を区分する場合>
[リース取引開始日]
リース資産**/リース債務**
仮払消費税等**/
[リース支払日]
リース債務**/現金預金**
支払利息**/
[決算時]
減価償却費**/リース資産**
【例外処理】
<賃貸借処理>
[リース取引開始日]
仮払消費税等**/未払金**
[リース支払日]
リース料**/現金預金**
未払金**/
[決算時]
なし
≪ポイント≫
どの方法を選択したとしても、消費税法上はリース取引開始日(リース資産引渡し時)に仕入税額控除を認識します。
会計上、様々な処理方法がありますが、利息の計算が煩雑なことや消費税法の取り扱いを考えると、売買処理を選択した方が、事務処理が煩雑にならないと考えられます。
次回は、リース取引の改正に伴い生じた細かな疑問点を、Q&A形式で解説いたします。
リース取引の税務・会計処理のポイント―①―
周知の通り、平成20年4月より日本のリース取引の大半を占める、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」につき、原則売買取引として取り扱われることになりました。
これに伴い、リース取引の税務・会計の取り扱いにつき、基本的なポイントを改正事項を含めて以後3回にわたり解説します。
今回は、リース取引の種類とそれぞれの取扱いの違いについて解説します。
リース取引の3分類
リース取引はファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分されます。
更に、ファイナンス・リース取引は、借手に所有権が移転する所有権移転ファイナンス・リースと、所有権が移転しない所有権移転外ファイナンス・リースに分類されます。
1.ファイナンス・リース取引とは
ファイナンス・リース取引は、貸手であるリース会社が資金調達をして企業に機械等を賃貸するものです。中途解約不能が特徴です。
①所有権移転ファイナンス・リース取引
所有権が最終的に借手のものになるリース取引です。
例えば、その会社独自の仕様で、機械設備を作ってリースした場合などがこれに該当します。
②所有権移転外ファイナンス・リース取引
リース期間終了後、基本的にリース資産をリース会社に返還する契約になっているものです。現在、企業のリース契約の大半は、これに該当します。
2.オペレーティング・リース取引とは
ファイナンス・リース取引以外の取引です。
中途解約が可能で、借手が物件を途中で返却できることが特徴です。
分類ごとの税務・会計の取扱い
1.所有権移転ファイナンス・リース取引
【リース資産引き渡し時】
売買処理として資産計上
【減価償却】
自己所有の固定資産と同様に減価償却
【消費税】
取引開始初年度に課税仕入として認識し、一括仕入控除
2.所有権移転外ファイナンス・リース取引
【リース資産引き渡し時】
売買処理として資産計上(改正前は、賃貸処理もOK)
【減価償却】
会計:定額法・級数法・生産高比例法を選択適用して減価償却
税務:リース期間を耐用年数とした定額法(リース期間定額法)
【消費税】
取引開始初年度に課税仕入として認識し、一括仕入控除。
3.オペレーティング・リース取引
【リース資産引き渡し時】
賃貸借処理のため資産計上なし
【減価償却】
リース料支払い額が経費となり、減価償却は不要
【消費税】
リース料支払い時に課税仕入れとして認識し、リース期間にわたり、仕入控除
上記のように、リース取引はその分類により、税務・会計上の取り扱いが異なります。
また、リース取引の契約締結が平成20年3月31日以前と平成20年4月1日以後でも一部取扱いが異なります。
これらの分類方法については、一定の判断基準が設けられているため、自社のリース取引がどのリース取引に該当するかについては、税理士等の専門家に確認しましょう。
次回は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に焦点を絞って解説したいと思います。
試験研究費と教育訓練費の税額控除額が増加する!?
以前、「ついに出た20年度税制改正大網」にて改正内容の注目ポイントを
ご紹介しました。今回は、中小企業に手厚い内容となった「試験研究費」と
「教育訓練費」についての詳細を紹介します。
1 試験研究費の税額控除額が法人税額の最大30%まで拡大!?
試験研究費の増加額に対する税額控除を上乗せする特例が改正され、
(1)従来の増加額に係る税額控除 :(下記①+②)
(2)新たに創設される高水準型の特例:(下記①+③)
のいずれかを選択適用できる制度が創設されます。
これにより税額控除限度額は、合計で法人税額の最大30%まで拡充
される予定です。
①総額型
(計算方法)
税額控除額 = 当期の試験研究費×10%
(中小企業は12%)
(控除限度額)
法人税額の20%
②増加型
(計算方法)
税額控除額 = (試験研究費-比較試験研究費)×5%
(要 件)
試験研究費>比較試験研究費
かつ
試験研究費>基準試験研究費
(控除限度額)
法人税額の10%
(用語解説)
比較試験研究費 = 前3年の試験研究費の平均額
基準試験研究費 = 前2年のうち高額な年の試験研究費
③高水準型
(計算方法)
税額控除額 =(当期の試験研究費 - 平均売上金額の10%)× 税額控除率
(要 件)
当期の試験研究費>平均売上金額の10%
(控除限度額)
法人税額の10%
(用語解説)
税額控除率=(試験研究費割合-10%)×0.2
試験研究費割合=当期を含む4年間の平均売上に対する当期の試験研究費の
割合。
2 適用のハードルが低くなった人材投資促進税制!
中小企業者等を対象に、教育訓練費を毎年増加させていくことができなくとも、教育訓練費の税額控除が受けることのできる制度が導入される予定です。
(計算方法)
税額控除額 = 教育訓練費の総額 × 特別税額控除割合(100分の8~100分の12)
(要 件)
労働費用に占める教育訓練費の割合が100分の0.15以上
(用語解説)
控除割合 = 8%+(教育訓練費÷労働費用-0.15%)×40
労働費用 = 給与,健康保険,教育訓練費等、労働者を雇用する上で支払うもの
すべてを含みます。
上記の税制改正により、中小企業者の成長力・競争力の税務面での支援が予定されています。
改正される企業会計の棚卸資産の評価損は税務上も計上できる!?
平成20年4月1日開始事業年度より、企業会計上の棚卸資産の評価方法が低価法に一本化されました。
今回は企業会計の改正と税務上の棚卸資産の評価方法に与える影響について説明します。
企業会計上の棚卸資産の評価方法~低価法に一本化~
企業会計では棚卸資産の評価方法が低価法に一本化され、原価法は企業会計上廃止されました。
企業会計上の低価法は
平成20年4月1日以後開始事業年度から仕入原価と正味売却価額を比べ、いずれか低い方が期末棚卸資産の評価額となります。
税法上の棚卸資産の評価方法~原価法も残存~
税法上は原価法・低価法の選択適用が認められています。
税務上の低価法は
仕入原価と期末の時価を比べ、いずれか低い方が期末棚卸資産の評価額となります。( 法令28①二 )
企業会計上の正味売却価額と税法上の期末の時価との関係は?
企業会計上の時価である正味売却価額とは
「売価-見積追加製造原価-見積販売直接経費」(会計基準5)によって求められます。
税法上の時価である期末の時価とは
税法上明確な定義が設けられていませんが、一般的には正常な取引条件により第三者間で取引された場合の価額と解釈されています。
従って
「正味売却価額≒税法上の時価」となります。
正味売却価額は企業会計基準にしたがって適正に計算されていれば税法上の時価と原則として一致することになり、
低価法適用による評価損が計上できることとなります。
低価法採用時の注意点は?
税法上の時価として正味売却価額を採用する場合、上述のように企業会計基準にしたがって適正に計算されていることが前提となります。
従って税務当局が評価の適正性に疑義を持ち、税法上の時価を是正した場合、申告調整が必要となる点に注意が必要です。
中小企業では原価計算が適正に行なわれていない場合があり、正味売却価額が適正に計算できない場合が考えられます。
また、原価法から低価法へ会計方針を変更する場合、評価方法の変更の承認申請は、新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに行わなければならない点にもご注意下さい。
医療法の改正に伴い、社団定款変更と延長特例申請が必要に!
医療法の改正に伴い、社団定款変更と延長特例申請が必要に!
改正医療法の概要
平成19年4月1日から施行されている改正医療法により、医療法人は毎会計年度
終了後2月以内に事業報告書・財産目録・決算書等を作成して監事に提出、監事
は業務・財産等の状況についての監査報告書を作成し、会計年度終了後3月以
内に社員総会に提出することとされました。
<改正前>
決算書等作成→社員総会→法人税確定申告(会計年度終了後2月以内)
<改正後>
事業報告書・財産目録・決算書等作成→監事に提出→
監査報告書作成→社員総会→法人税確定申告(会計年度終了後2月以内)
また、監査報告書は事業報告書等とともに都道府県知事へ提出を要します。
社団定款変更と延長特例申請が必要に!
事業報告書等の作成や、監事の監査を受ける時間を考えると、現行の会計年度
終了後2月以内のスケジュールでは対応するのは難しいと想定されます。
そこで、医療法人も一般の法人と同様に、申告期限の延長特例の対象 -会計
年度終了後3月以内に期限を延長- になるのかという点が懐疑になっていまし
た。
この点については、医療法人においても、一般の法人と同様に、定款で会計年度
終了の日から3月以内に社員総会を開催する旨を定めていれば、申告書の提出
期限の延長特例の適用の対象となることが確認されました。
この延長の適用を受けることにより、改正医療法のスケジュールに対応できるよ
うになります。
したがって、医療法の改正の対応として、
1.「3月以内に社員総会を開催する旨」の社団定款変更
2.延長特例申請
が必要になってくるのです。
申告期限
この適用を受けるには期限がありますので、留意して申請なさって下さい。
・改正医療法による定款変更の認可の申請…平成20年3月31日まで
・延長特例の申請…最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで
分掌変更による退職の有無は実態で判断
分掌変更による退職とは
退職金を経費として計上する時期は、一般的に役員や従業員の方々の
実際の退職時期となります。
これは、現在の税制が、退職債務の見積もり計上を認めておらず、認
められるのがその額が確定する退職時点となるためです。
しかし、役員の分掌変更をした場合には、実際の退職を待たずして、
退職金を支給すること(=経費計上)も認められています。
具体的に、分掌変更とは、
1.常勤役員が非常勤役員になったこと
2.取締役が監査役になったこと
3.分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上の減少)したこと
を指します。
退職の有無は実態で判断
このたび、平成18年度改正を織り込んだ法人税の通達改正では、この
役員の分掌変更等の場合の退職給与の規定が一部改められ、
分掌変更後に役員の給与が激減した事実があっても、実質的に分掌変更後
もその役員が経営上主要な地位を占めていると認められる場合は、退職と
同様の事実があるとは認められない
という点が明確化されました。
つまり、上記の1~3の要件のいずれかを満たせば、退職したと認められる
訳ではなく、退職の有無は、形式ではなく実態で判断されることとなるのです。
従って、退職後も、経営の決定権を有している場合や、重要な責務を果たし
ている場合など、経営上の主要な地位を占めている役員は、退職したのと同
様な事情があるとは認められないため、退職金を支給した場合には、経費とする
ことができません。
今回の通達での明文化により、分掌による退職金を支給する場合には、実質
的に退職しているか否か、その判断にはより一層注意が必要となるといえるでしょう。
資本的支出が行われた固定資産の償却方法
以前にお伝えしたように、平成19年度税制改正にて減価償却制度が改正されています。
今回は資本的支出が行われた場合の償却方法についてご紹介します。
<参考>
平成19年度税制改正で減価償却資産は全額償却が可能に
平成19年度税制改正はどうなる(その2)
資本的支出の新しい取り扱いについて
今回の改正により資本的支出については,その処理方法について複数の選択肢が与えられているので,改正前の制度に比べて資産管理について注意が必要となります。
・資本的支出とは
固定資産の使用可能期間を延長又は価値を増加させるような支出をいいます。
(例えば、建物の増改築時に非常階段を取り付けるなど)
*原則的な取り扱い
新たに資本的支出を行った場合,平成19年3月31日以前に取得した本体部分とは別に新しい資産を購入したものとして計算することとなりました。原則的な方法以外に特例として下記の3つの方法もあります!!
①既存の資産と合算する
今まで通り本体部分に資本的支出部分を加算し,加算時から旧償却方法で償却費を計合 算することができます。
②翌事業年度に取得したものとみなす
本体と資本的支出部分の両方を新定率法で処理している場合は、翌事業年度においてその合計額を取得価額とする「新たに取得した資産」として償却費を計算することができまます。
③複数の資本的支出を合計する
新定率法を採用している場合は、翌事業年度において本体と複数の資本的支出を合算したり,複数の資本的支出のみを合算し、償却費を計算することができます。
具体例については今後紹介していく予定です。
逓増定期保険の税務上の取り扱い変更の可能性
逓増定期保険については、それまで損金経理されていた保険料について、平成8年度の税制改正により一部資産計上する旨の通達が出されています。
しかし、国税庁では、それ以降様々な種類の逓増定期保険の商品が発売され、この通達では実情に沿った取り扱いができない状況にあると考えているようです。
そのため、近々実態に応じた税務上取り扱いの改正が入る可能性があります。
問題点
現在、逓増定期保険として商品化されているものの中には、解約返戻率が100%を超えるものがあるなどその内容にはさまざまなものが存在しています。 内容によっては貯蓄性の高い商品や、保険料の一部が保険期間の後半に充当されるという商品もあります。こういった商品については、払込時の保険料については一部を資産計上するというのが、原則的な経理処理となります。
しかし現在、平成8年の改正における通達に該当しないものは全額損金算入できると解釈される向きがあります。
そのため、全額損金に算入されると、公平な課税ができないという弊害が生じることとなります。
国税庁の方針
国税庁は、現在の商品における内容を調査し、平成8年の通達の規定を見直す方針のようです。 課税上弊害の生じるであろう内容の保険商品については一部資産計上となる可能性があります。 保険加入を考えてられる方は、今後の動向に注視が必要です。減価償却資産の償却率、改定償却率及び保証率
平成19年4月1日以後に購入する減価償却資産について、償却方法が変更になることは、以前トピックでご紹介しましたが、実際の計算で使用する、減価償却資産の償却率、改定償却率及び保証率が公表されました。
こちらの表になります。 ダウンロード(PDFファイル)
19年度改正で減価償却資産は全額償却が可能に!
減価償却制度については、平成19年度において下記の①~④の改正が入ることとなる予定です。
①~③については 平成19年度税制改正はどうなる!?(その2)で
記載していますが今回は具体的な計算方法を確認します。
①残存価額の廃止
②償却可能限度額の廃止
③法定耐用年数の見直し
④250%定率法の採用
●改正内容
新制度では、新規取得資産の定率法に「250%定率法」を採用して、
定額法・定率法いずれを採用した場合でも耐用年数経過時点で
1円(備忘価額)まで償却可能となります。
既存設備等についても、償却可能限度額に達した後の5事業年度後で
均等償却が認められ、新規取得資産と同様に1円まで償却可能となりました。
企業にとっては、設備投資費用の早期回収が可能となり、キャッシュ・フローの
増加が期待できることになります。
●具体的計算方法
取得時期に応じて下記の計算方法となります。
(1)平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産
○定率法を採用する資産の場合
改正後では、償却するために一定の時期に償却方法の切り替えをする
こととなります。
償却限度額 = (取得価額 - 既償却額)× 耐用年数に応じた「定額法の
償却率×2.5」
*注1耐用年数から経過年数を控除した期間内に、その時の帳簿価格を
均等償却すると仮定した金額を下回る場合に定率法を定額法に切り替えて
計算します。
(例)取得価額100万円、法定耐用年数10年の場合
①償却率の変更⇒7年目まで
現行: 耐用年数10年で定率法償却率 ⇒ 【0.206】
改正後:定額法10年の耐用年数(0.1)×2.5倍 ⇒ 【0.25】
②定額法へ償却方法の変更⇒8年目から
詳細な計算は割愛しますがこの例の場合、8年目より定額法に
切り替えることになります。定率法の計算で7年目の帳簿価額が13.3万円となり
残りの 期間の3年で割ると「4.4万円」。
(この「4.4万円」が注1のその時の帳簿価格を均等償却すると仮定した金額)
定率法で計算を続ければ8年目は「13.3×0.25=3.3万円」となり
「4.4万円」を下回る為、定額法に切り替え「4.4万円」が8年目から10年目までの
償却限度額となります。
○定額法を採用する資産の場合
償却限度額 = 取得価額 × 耐用年数に応じた定額法の償却率
(2)平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産
償却可能限度額(取得価額 × 95%) まで償却した事業年度の
翌事業年度以後5年間で、残存価額を均等償却することができるようになります。
(3)注意点
メリットが目立つ改正ではありますが下記のような注意点もあります。
①同じ資産を購入した場合であっても取得時期により計算方法が異なります。
②定率法においては途中から定額法に切り替えることになり従来以上に
資産管理に気をつけなければなりません。
事前確定届出給与に係る新たな取扱い
平成18年度の税制改正により,法人の役員給与に関する規定が改正され,平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
法人の役員給与に関する規定のうち、事前確定届出給与について以前記載していますが、
< https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000337.htm >
事前確定届出給与として届け出た役員給与が、定めどおりに支給されなかった場合の取扱いについてQ&A方式で見ていきます。
Q.当社(年1回3月決算)では,平成18年6月26日の定時株主総会において,取締役Aに対して,定期同額給与のほかに,同年12月25日及び平成19年6月25日にそれぞれ300万円を支給する旨の定めを決議し,届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。 この定めに従い,当社は,平成18年12月25日には300万円を支給しましたが,平成19年6月25日には,資金繰りの都合がつかなくなったため,50万円しか支給しませんでした。
この場合,平成18年12月25日に支給した役員給与についても,損金の額に算入されないこととなるのでしょうか。
A.届出給与について,同一の職務執行期間に複数回の支給がある場合には,「その全ての支給が定めどおりに行われたか否か」によって,事前確定届出給与に該当するかどうかを判断するのが「原則」であるとしています。
原則からすると、支給額の全額(300万円)が事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。
しかし、職務執行期間中に2回支給することを届け出て,その支給が事業年度単位でみると,2事業年度に跨って支給される場合,すなわち,1回目の支給が当該事業年度,2回目の支給が翌事業年度となる場合にあっては,2回目の支給時に定めどおりに支給しなかったとしても,1回目を支給した事業年度の課税所得に影響を与えることはないため,翌事業年度に支給した2回目の給与についてのみ損金不算入として取り扱って差し支えない旨が国税庁のホームページで示されました。
したがって今回のケースでは、翌事業年度(平成20年3月期)に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱っても差し支えありません。
Q.当社(年1回3月決算)では,平成18年5月26日の定時株主総会において,取締役Aに対して,定期同額給与のほかに,「平成18年5月26日から平成19年5月25日までの役員給与として平成18年6月30日及び同年12月25日にそれぞれ300万円を支給する」旨の定めを決議し,届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。
この定めに従って支給した平成18年6月30日及び同年12月25日の役員給与は,事前確定届出給与として,当期(平成19年3月期)において損金の額に算入できるでしょうか。それとも,これらの給与はいずれも職務執行期間の前半に支給するものなので何らかの損金不算入額が生じますか。
A.いわゆる「盆暮れの賞与」(たとえば,6月,12月の賞与)として支給する事前確定給与の取扱いについては,3月決算法人以外の法人では職務執行期間の中途で支給することになることから,認められないのではないかとの懸念がありました。
また、民法上委任の報酬は後払いが原則とされていることを考えると,このような支給形態を採ることについて、税務上問題があるのではないかと考える向きもあるようです。
しかしこうした役員給与(賞与)に関して,使用人への賞与が盆暮れの時期に支給されているのが一般の企業慣行であることを考えると,役員に対して同時期に賞与を支給することは不自然なことではないともいえます。
そこで,法人が,「役員賞与の支給を使用人の盆暮れ賞与と同じ時期とし,かつ,毎期継続して同時期に賞与の支給を行っている場合」には,事前確定届出給与としてその事業年度で損金算入することとして差し支えありません。
平成19年度税制改正はどうなる!?(その2)
12月14日、与党税制改正大綱が決定しました。これをうけ政府は翌年1月の通常国会に平成19年度税制改正案を提出することとなります。今回は平成19年度税制改正の原案となる、与党税制改正大綱における主要な改正を紹介します。
減価償却制度の見直し
(1)残存価額の廃止
平成19年4月以降に取得する減価償却資産について、残存価額を廃止する。
(2)償却可能限度額の廃止
①平成19年4月1日以降に取得をする減価償却資産については、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとする。
②平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%)まで償却した事業年度等の翌事業年度以後5年間で均等償却ができることとする。
(3)法定耐用年数の見直し
次の3設備について、法定耐用年数を短縮することとする。
①フラットパネルディスプレイ製造設備 5年 (現行10年)
②フラットパネル用フィルム材料製造設備 5年 (現行10年)
③半導体用フォトレジスト製造設備 5年 (現行8年)
なお、平成20年度税制改正に向け、減価償却資産の使用の実態等について調査・分析を進め、法定耐用年数や資産区分の見直し、法定耐用年数の短縮特例制度の手続簡素化について検討する。
取引相場のない種類株式の相続税等の評価方法の明確化
会社法の施行により発行が容易になった株主総会で議決権がない株式等の種類株式のうち、中小企業の事業承継において活用が期待される次のものについて、その評価方法を明確化する。
(1)配当優先の無議決権株式
(2)社債類似株式
(3)拒否権付株式
取引相場のない株式にかかる相続時精算課税制度の特例の創設
相続時精算課税制度について、推定相続人の一人(受贈者)が、平成19年1月1日から平成20年12月31日までの間に取引相場のない株式等の贈与を受ける場合には、次の要件を満たすときに限り、60歳以上の親からの贈与についても、同制度を適用することとし、2,500万円の非課税枠を500万円上乗せし、3,000万円とする等の措置を講ずる。
(1)当該会社の発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億円未満であること
(2)次のすべての要件をこの特例を選択した時から4年を経過する時において満たしていること。
①当該受贈者が当該会社の発行済株式等の総数の50%超を所有し、かつ議決権の50%超を有していること。
②当該受贈者が当該会社の代表者として当該会社の経営に従事していること。
(3)その他所要件を満たすこと。
平成19年度税制改正はどうなる!?
11月27日より税制調査会で平成19年度税制改正の検討が開始されました。
これに先立って経済産業省と中小企業庁から以下のような要望が発表されており、その動向が注目されます。
減価償却制度の見直し
(1)償却可能限度額の撤廃
現行の償却可能限度額(95%)が廃止され、100%全額償却できるようになるのか?
(2)法定耐用年数の短縮
法定耐用年数が短縮され、企業にとってコスト回収面で利用しやすい制度となるのか?
会社法改正による合併への対応
子会社の株主に親会社の株式を対価として渡す三角組織再編合併では、現行の適格組織再編税制と同様の課税繰延べができるようになるのか?
事業承継の円滑化を図るための税制措置
(1)非上場株式に係る事業承継税制の見直し
事業用資産を相続した場合、後継者が非上場の自社株式を保有している間は相続税の課税を猶予し、売却した段階で課税を行うなど、事業承継する者の相続税負担の減免が図られることとなるのか?
(2)種類株式の評価方法の明確化
新会社法で多様な類型が認められた種類株式について、相続税法上の取扱いは明らかにされるのか?
(3)相続時精算課税制度の拡充
贈与者の年齢要件(65歳以上)等が緩和され、また、非課税枠が拡充されるのか?
地域資源活用企業化プログラムの推進のための減税措置
中小企業新事業活動促進法の承認を受けた会社が行う一定の設備投資について、特別償却の税制支援措置は設けられるのか?
以上の平成19年度の税制改正の内容については今後順次解説していきます!
不良債権の早期損金計上が可能に!?(サービサー法の改正)
この秋の臨時国会では債権管理回収業に関する特別措置法(サービサ
ー法)の改正が取上げられ、平成18事業年度中の施行に向けて、審議が
行われるようです。
この改正により、税務上、貸倒による損金計上の要件を満たさない不良
債権について、債権回収業者に売却することで早期に損金計上ができる
こととなりそうです。
■サービサー法 とは
サービサー法とは、弁護士しか行うことができない金銭債権の回収業務を、
法務大臣の認可を受けた債権回収会社(サービサー)であれば、行うこと
ができるようにした法律です。
<通常の債権の回収の流れ>
企業が取引先の債権を回収します。
1.債権
←
企業 取引先
→
2.回収
<債権回収会社(サービサー)を通した場合の回収の流れ>
企業は債権回収会社に債権を売却することによって、債権を回収します。
売却したため、売却後の債権者は債権会社となります。
1.債権
→
取引先 企業 債権回収会社 取引先
→ →
2.売却 (3.回収)
■改正の内容 -企業の貸倒処理にも影響が-
今回の改正では、サービサーが取り扱うことのできる特定金銭債権が拡大
となるようで、これまで企業において処理することが困難だった債権も、サービ
サーに売却することが可能となり、企業の貸倒処理にも影響が及ぶことになり
そうです。
■不良債権の早期損金計上が可能に!
取引先等の金銭債権や売掛金の貸倒れ処理については、企業内部で行う
ために、客観性の観点等から、税務上の損金に認められるか否かという点で、
その計上は、リスクの高いものになっていました。
この改正によって、それらの債権をサービサーに売却することが可能となれば、
売却時点で売却損の計上が可能となります。
この売却損はこれまでの貸倒れ処理による見込み損ではなく、実現損となるた
め、これまでより客観性が高いものであり、税務上のリスクが回避されることに
なります。
したがって、これまで企業で売却処理、回収依頼ができなかった債権処理が、
これまでよりも容易となることから、不良債権処理も促進されることとなると見込
まれます。
不良債権処理の税務という点からも、今後のサービサー法の改正動向は注
目していきたいところです。
〈実質一人会社オーナー社長給与の損金不算入〉~part4~
今回のシリーズ~part1~でご紹介したように、
『①特殊支配同族会社であり』、かつ、『②基準所得金額が一定額を超える』、①と②に該当すると、業務主宰役員の給与所得控除額が損金不算入となります。
そこで、この損金不算入を回避する方策が種々取り沙汰されていますが・・・・・
★①に該当する場合、持株等割合と常務従事役員割合については、簡単に変更ができない!
★②についても、過去3年の所得金額や業務主宰役員給与額を用いるために直接操作することができない!
というのが現状です。
業務主宰役員給与を減額し他の親族に付替えは否認の可能性大!
損金不算入となってしまう企業は、損金不算入の対象給与である業務主宰役員給与を減額し、減少分相当額を損金不算入の対象とならない他の親族の給与を増額させようとしているところもあるといわれています。
しかし、業務主宰役員とその親族の給与は操作をしやすいことから、よほどの合理性がない限り、損金不算入の規定から回避するための行為とみなされ、否認される可能性が非常に高い模様ですので注意が必要です。
業務主宰役員給与を配当に切り替えることについては通常問題なし!
会社法では四半期配当もできることから、損金不算入額を極力抑えながらも、支給額を減らさないようにするために、業務主宰役員給与を配当に切り替えようとする企業も見受けられます。
このような給与の一部または全部を配当に切り替えることについては、通常は問題ないといえるようです。
ただ、配当する際には、通常、
※配当を行う度に株主総会で決議しなければならず、
※配当額を決めるために、一定の時点おける剰余金の額と、分配可能額の算定が必要となる、
といった実務上の手続が発生します。
個人所得の段階でも非上場株式について、配当の額に関わらず確定申告を行なわなければなりませんので、このような手続が必要になるということを念頭に置いて配当の決定をする必要があるでしょう。
また、配当に切替えることで損金不算入規定の適用除外になったとしても、法人に対する税額は、給与所得控除額をそのまま損金不算入とする場合よりも増大し、さらに業務主宰役員の個人収入も減少してしまうという結果になるケースもあるので注意が必要です。
〈実質一人会社オーナー社長給与の損金不算入〉~part3~
役員給与の損金不算入額について、前々回から紹介していますが
今回は、複数会社での業務主宰役員を兼任している場合はどうなるのか? というテーマです。
*按分計算の方法を利用するほうが個別計算より断然有利
複数会社で業務主宰役員を兼任しているオーナー社長のようなケースの損金不算入額については、各社別々に計算するよりも合算して各社に按分する方法をとることで、節税が図れます。
ただし、この方法をとるためには一定の手続きが必要となります。
複数会社の業務主宰役員を兼ねている役員給与の損金不算入額の計算方法は、
①按分計算による計算
②各々の給与額による計算
の選択性となっています。ただ按分計算のほうが、損金不算入となる
給与所得控除額の累進率が緩和されるため、②の方法による金額は、
確実に①の額よりも高額になってし まいます。
このため、①の方法をとることで節税が図れることになります。
○節税インパクト
1.按分計算による場合
自社業務主宰役員給与と合算対象給与額とを合計して損金不算入額を計算し、これを業務主宰役員給与の額の比で按分した金額をそれぞれの損金不算入額とします。
(注)・合算対象給与額には基準所得金額によって適用除外となった会社の
給与額についても含まれます。
・適用除外の判定にかかる基準所得金額の計算は
他社と合計して判定しません。
A社 B社 合計
業務主宰役員給与 800万円 1200万円 2000万円
損金不算入額 ② 108万 ③162万 ①270万
*まずこれを計算後
A社、B社に按分
A社 270万 × 800万/2000万 = 108万 ②
B社 270万 × 1200万/2000万 = 162万 ③
2.個別計算による場合
前々回の、実質一人会社オーナー社長給与の損金不算入〉part1の計算式から
按分計算との差額
A社 800万円 × 10% + 120万円 = 200万 92万
B社 1200万円 × 5% + 170万円 = 230万 68万
3.インパクト
この結果、按分計算によれば個別計算よりも、各社でそれぞれの金額が節税できることになります。
A社⇒約37万円
B社⇒約27万円 ※実効税率を40%として計算
○手続き
按分計算の方法を選ぶには、申告書の提出時期 までに他の特殊支配同族会社 に関する内容が記載された必要書類を提出しなければなりません。
必要書類
*業務主宰役員である他の特殊支配同族会社の社名
*常務に従事する役員の氏名等を記載した書類
*支給金額を証明する書類等
〈実質一人会社オーナー社長給与の損金不算入〉~part2~
前回から、「特殊支配同族会社」の役員に対する役員給与損金不算入制度について記載しています。
特殊支配同族会社は「業務主宰役員グループ」が持株等を90%以上所有していて、さらに常務に従事する役員の過半数を占めている同族会社とされます。
今第2回は、同制度でのキーワードとなっている、「所有割合」と「常務に従事する役員」の基本的な捕らえ方を見てゆきます。
所有割合は「業務主宰役員グループ」で判定する。
判定の基礎となる「業務主宰役員グループ」は、「業務主宰役員関係者」を包含しています。 そのため、発行済株式数の所有割合による判定では、「業務主宰役員グループ」に属するかどうかがポイントとなります。 持株等の割合については、次のうち1つでも90%以上であれば、特殊支配同族会社の条件に該当することになります。
①発行済株式数
②議決権付株式数
③持分会社の株主数
「業務主宰役員グループ」の範囲と、「業務主宰役員関係者」との違いは、下記の通りとなります。
●「業務主宰役員グループ」・・業務主宰役員と特殊な関係のある者のうち、個人株主+法人株主
●「業務主宰役員関係者」・・・・業務主宰役員と特殊な関係のある者のうち、個人株主のみ
参考:業務主宰役員と特殊な関係のある者の範囲
≪個人株主≫
一 業務主宰役員の親族である者
二 業務主宰役員と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
三 業務主宰役員の使用人
四 一~三以外の者で業務主宰役員から受ける金銭等によって生計を維持している者
五 一~三と生計を一にするこれらの者の親族
≪法人株主≫
六 「業務主宰役員等」(業務主宰役員及び一~五)が「同族会社を支配している場合」 におけるその同族会社
七 六若しくは八又は「業務主宰役員等」及び六若しくは八が 「同族会社を支配している場合」 のその同族会社
八 七又は業務主宰役員等及び七が 「同族会社を支配している場合」
「常務に従事する役員」は、経営に関与しているか否かで判定する。
判定の基礎となる「常務に従事する役員」とは、会社の経営に関する業務を役員として実質的に、日常継続的に遂行している役員を指します。
そのため、肩書きや名目ではなく、経済的な実質に基づいて判定されます。
この常務に従事すると言う状態をただ単純に「常勤」であるか「非常勤」であるかによって区別するわけではありません。
兼職しているかどうかの判定は、その会社以外の会社においても日々業務従事しているかによって判定されることとなります。
また、季節といった限定的な時間や期間のみ他の社で働いたといったイレギュラーな場合には、兼職しているとは判定されないこととなるようです。
「常務に従事する役員」に該当するかどうかを大まかに分けると、下記の通りとなります。
●「常務に従事する役員」に該当する役員
・取締役(常勤役員に限る)
・みなし役員(常務に従事している場合に限る)
●「常務に従事する役員」に該当しない役員
・会計参与・監査役
⇒会社法上、経営に対して権限が無いことから、経営に参加しているとは言えないため。
・使用人兼務役員
⇒常務に従事している場合であっても、取締役会への参加が日常継続的でないため。
〈実質一人会社オーナー社長給与の損金不算入〉~part1~
平成18年度税制改正により、実質的な一人会社の役員に対する役員給与の給与所得控除相当額が損金不算入となりました。
改正では、多くの会社が大きな影響を受けることとなります。
そこで、これまでに明確になったさまざまな情報をまとめ、今回から数回にわたり、掲載してゆきます。
まず、今第1回は、「対象となる会社」と「否認される金額」について見てゆきます。
キーワードは「90%以上」かつ「50%超」
対象となる会社は「特殊支配同族会社」です。 ①所有割合等と②役員割合により判定され、いずれにも該当する会社が特殊支配同族会社となります。①同族会社の業務主宰役員及び業務主宰役員関連者が発行済株式等の「90%以上」を所有
②同族関係役員の数が常務に従事する役員の総数の「50%超」
このとき、② の「同族関係役員」と「常務に従事する役員」には、形式的に役員になっているような者は含まれません。
詳しくは、後日詳しく掲載を予定しています。
適用除外は「基準所得金額」以下の場合
上の①と②の条件を満たす場合でも、次のいずれかに該当するときは、適用除外となります。 (1):基準所得金額≦年800万円以下 (2):基準所得金額≧代表取締役への役員給与×50% ※800万円<基準所得金金額≦3,000万円の場合 「基準所得金額」=その法人の前3事業年度の「所得+代表取締役への役員給与」の平均額 ※この金額は、その法人の各事業年度の所得の金額または欠損金額と業務主催役員報酬をもとに計算される金額で、青色欠損金がある場合には一定の考慮がなされます。年間1,400万円の報酬で、100万円増税
上記により、対象となった場合の、税務上否認される金額は、業務主宰役員給与の額の区分に応じ、次の金額となります。 また、年間のオーナーへの報酬が1400万円の会社は、240万円が否認され、約100万円増税となります。(実効税率41%で計算) (区 分) (否 認 額)
イ 65万円以下である場合 業務主宰役員給与額(以下「A」)
ロ 65万円を超え180万円以下である場合 A×40% (当該金額が65万円に満たない場合には、65万円)
ハ 180万円を超え360万円以下である場合 72万円+(A-180万円)×30%
ニ 360万円を超え660万円以下である場合 126万円+(A-360万円)×20%
ホ 660万円を超え1,000万円以下である場合 186万円+(A-660万円)×10%
ヘ 1,000万円を超える場合 220万円+(A-1,000万円)×5%
事前確定届出給与とは?~その3~
前回・前々回から引き続き事前確定届出給与についてお伝えいたします。
前々回 https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000337.htm
前回 https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000338.htm
最終回となる今回は、具体例を交えてQ&A形式でご説明いたします。
Q.当社では、19年6月26日の株主総会において、A取締役に対して、定期同額給与のほかに、「19年6月26日から19年12月25日までの役員給与として19年12月25日に300万円を、19年12月26日から20年6月26日までの役員給与として20年6月26日に300万円をそれぞれ支給する」旨の定めを決議しました。
この定めに従って支給する役員給与の届出は、支給時期が異なる給与ごとに届け出なければならないのでしょうか。
A.役員給与は、一般的には、定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価と解するのが相当と考えられます。
したがって、事前確定届出給与の職務執行期間も定時株主総会終結の時から開始されることとなり、「職務の執行を開始する日」とは定時株主総会の開催日ということになります。
ところで、ご質問では、事前確定届出給与に係る「定め」において、「○月から×月までの給与を×月に、△月から◇月までの給与を◇月に支給する」などの定めを行ったとのことですが、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの1年間の職務執行の対価ですから、仮にそのような「定め」を定めたとしても、それは、会社が役員に委任した職務執行の対価について期間の経過に応じて支払う旨を明らかにしたにすぎず、いわば1年間にわたる職務執行期間の給与の支給方法を定めたにすぎません(それぞれ別個の「定め」が定められたわけではありません。)。
したがって、そのような「定め」であっても、特殊な場合を除き、その役員の職務の執行を開始する日は、定時株主総会の開催日であり、所轄税務署長への届出も同日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までが届出期限となります。
Q.金銭以外の現物資産による支給であっても、事前確定届出給与の対象となりますか。
A.事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与がその対象となります。
したがって、現物資産による支給など支給金額が確定していないものは対象となりません。
Q.事前確定届出給与について、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、どのように取り扱われるのでしょうか。
A.事前確定届出給与として当該事業年度の損金の額に算入される給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られます。
このことからすれば、一般的には、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前に支給額が確定していたものといえないことから、事前確定届出給与に該当しないものとなります。
したがって、それが増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額が損金不算入となり、減額支給であれば実際に支給した金額が損金不算入となります。
事前確定届出給与とは?~その2~
前回から、事前確定届出給与について記載していますが、
< https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000337.htm >
今回も引き続き事前確定届出給与についてQ&A方式で見ていきます。
Q.半年毎に支給する非常勤役員に対する給与は事前確定届出給与として所轄税務署長への届出が必要となりますか?
A.役員に対する給与のうち、他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給するものについても、事前確定届出給与としての所轄税務署長への届出が必要となります。
Q.事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日とはいつですか?
A.一般的には、事前確定届出給与に係る職務の執行も定時株主総会終結の時から開始されることから、「職務の執行を開始する日」とは、定時株主総会の開催日ということになります。
ただし、実務上、「職務の執行を開始する日」を定時株主総会の日以外と定めた場合であっても、その日が定時株主総会の翌月初であり、かつ、定時株主総会の日に近接する日であれば、税務上も、事前確定届出給与に係る「職務の執行を開始する日」として企業実務の観点から是認し得るものであると考えられます。
したがって、この事例の場合には、
① まず定時株主総会において「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」を定めて、
② 職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日、すなわち、6月1日と6月30日とのいずれか早い日である6月1日までにその「定め」の内容に関する届出を行い、
③ 6月1日には実際に職務の執行を開始しており、
④ その「定め」どおりに、確定額として届け出た金額を支給すれば、
事前確定届出給与に該当することとなります。
Q.事前確定届出給与の所轄税務署長への届出は、いつまでに行う必要がありますか?
A.事前確定届出給与としての所轄税務署長への届出期限は、
「その給与に係る職務の執行を開始する日」と
「当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日」との
いずれか早い日 とされています( 法法34①二 、 法令69② )。
この届出期限については、平成18年4月1日以後最初に開始する事業年度において、
上記のいずれか早い日が平成18年6月30日以前となる場合には、
その届出期限を平成18年6月30日とする経過措置が設けられています(改正法令附則16①)。
ただし、この場合であっても、その給与に係る職務の執行を開始する日までに「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」が定められていることが必要です。
事前確定届出給与とは?
平成18年税制改正により法人が役員に対して支給する給与のうち損金算入される①定期同額給与②事前確定届出給与③利益連動給与のうち、今回は、②の事前確定届出給与についてQ&A形式で見ていきたいと思います。
Q.事前確定届出給与とは、どんな給与をいうのですか?
A.事前確定届出給与とは、『その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、その給与に係る職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までに、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関して一定の事項を記載した届出をしている場合のその給与』をいいます。
※事前確定届出給与は、「事前」にその役員に対する給与の支給時期、支給金額が定められているものであり、その定められている事実を税務署長への届出により確認するものですから、その役員の職務の執行を開始する日までに「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」が定められているものに限られます。
Q.その届出には具体的にどのようなことを記載するのですか?
A.①事前確定届出給与の支給の対象となる者(以下「事前確定届出給与対象者」といいます。)の氏名及び役職名
②事前確定届出給与の支給時期及び各支給時期における支給金額
③②の支給時期及び支給金額を定めた日並びにその定めを行った機関等
④事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日
⑤事前確定届出給与につき定期同額給与による支給としない理由及び事前確定届出給与の支給時期を②の支給時期とした理由
⑥当該事業年度開始の日の属する会計期間において事前確定届出給与対象者に対して事前確定届出給与と事前確定届出給与以外の給与とを支給する場合における当該事前確定届出給与以外の給与の支給時期及び各支給時期における支給金額
⑦⑥の会計期間の直前の会計期間において事前確定届出給与対象者に対して支給した給与がある場合における当該給与の支給時期及び各支給時期における支給金額
⑧当該事業年度における事前確定届出給与対象者以外の役員に対する給与の支給時期及び各支給時期における支給金額
⑨その他参考となるべき事項
※事前確定届出給与の流れとしては、まず、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めを定める」⇒「所定の事項を記載した書類を所轄税務署長へ届出をする」⇒「職務の執行の開始」という順を踏むこととなります。
損金算入される少額交際費とは? <後半>
平成18年度税制改正において、一人当たり5,000円以下の飲食費等が交際費等から除かれ、損金に算入することが可能となる措置が新たに設けられました。
この改正については、以前の税務情報ヘッドラインで簡単に説明しました。
< https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000203.htm >
< https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000203.htm >
今回は、前回に引き続き、少額交際費に該当するかどうかの判定方法、適用要件等についてご説明します。
1人当たり5,000円以下の飲食費の判定
(1)1人当たりの金額計算
『飲食等のために要する費用として支出する金額』を『飲食等に参加した者の数』で除して1人当たりの金額を求めます。
この金額が、5,000円以下の費用であった場合、交際費等の範囲から除かれる飲食費となります。
したがって、単純に当該飲食費等に参加した人数で除して計算した金額で判定することになります。
(2)5,000円を超える飲食費の額
1人当たりの金額が5,000円を超える費用については、その費用のうちその超える部分だけが交際費等に該当するものではなく、その費用のすべてが交際費等に該当することになります。
すなわち、1人当たりの飲食費のうち5,000円相当額を控除するというような方式ではありません。
(3)1次会と2次会の費用
飲食等が1次会だけでなく、2次会等の複数にわたって行われた場合、それぞれの行為が単独で行われていると認められるとき(例えば、全く別の業態の飲食店等を利用しているときなど)には、それぞれの行為に係る飲食費ごとに1人当たり5,000円以下であるかどうかの判定を行います。
ただし、それら連続する飲食等が一体の行為であると認められるときには、その行為の全体に係る飲食費を基礎として1人当たり5,000円以下であるかどうかの判定を行うことになります。
(4)支出する費用に係る消費税等の額
飲食費が1人当たり5,000円以下であるかどうかは、その飲食費を支出した法人の適用している税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用方式により算定した金額により判定します。
(5)会議費等の関係
従来から交際費等に該当しないこととされている会議費等については、1人当たり5,000円超のものであっても、その費用が通常要する費用として認められるものである限りにおいて、交際費等に該当しないものとされます。
保存書類への記載事項
損金算入の適用要件として、一定の書類の保存義務があり、得意先等の氏名又は名称及びその関係が記載すべき事項としてあります。得意先等の氏名等の記載にあたり、次の事項を注意しなければなりません。
●飲食等を行った相手方である社外の得意先等に関する事項を、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)、卸売先」というようにして記載する必要があります。
原則として、相手方の氏名についてすべてが必要となりますが、その一部が不明の場合や多数参加したような場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)部長他10名、卸売先」という表示であっても差し支えありません。
●社内飲食費でないことを明らかにするためのものであり、通常の経理処理等に当たって把握していると思われる自己の役員や従業員等の氏名等までも記載を求めているものではありません。
申告書別表十五の記載の仕方
従来どおり「支出交際費等の額の明細」の「科目」区分に従って各科目を表示します。
それぞれの「支出額5」に含まれる飲食費のうち、それぞれ損金不算入とならない1人当たり5,000円以下の飲食費の合計額を「交際費等の額から控除される費用の額6」に含めて、「差引交際費等の額7」を求めてください。
したがって、交際費等の範囲から除かれることとされる1人当たり5,000円以下の飲食費を独自に表示する必要はありません。
損金算入される少額交際費とは? <前半>
平成18年度税制改正において、一人当たり5,000円以下の飲食費等が交際費等から除かれ、損金に算入することが可能となる措置が新たに設けられました。
この制度については、以前に当税務情報ヘッドラインでお伝えしました。
< https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000203.htm >
この適用の開始にあたり、今回と次回の2回にわたって損金算入される少額交際費についてご説明します。
適用対象
すべての法人が対象となります。
適用時期
平成18年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始する事業年度から適用されます。
対象となる相手先・飲食費等
社外のものに対する飲食費等に限ります。
社内の役員・従業員等に対する飲食費等は対象となりません。
(会議費・福利厚生費に該当するものは除きます。)
ただし、子会社・関連会社の役員・従業員等に対する飲食費等は、別法人の者となりますので対象となります。
また、得意先等の業務の遂行や行事の開催に際しての差入などの「弁当代」や、飲食等をするために直接飲食店等に支払う「テーブルチャージ料」や「サービス料」等も対象となります。
なお、得意先を飲食店等へ送迎するための「送迎費」は直接飲食店に支払うものではないため、対象とはなりません。
対象とならない飲食費等
1.
ゴルフ・観劇・旅行等の接待等に伴って飲食をした場合に、飲食費等の部分を抜き出して金額判定の対象とすることはできません。
同様にホテル等を利用する場合のサービス料についても飲食費等の部分を抜き出して判定することはできません。
従って、これらの催事に関しては一連の行為のために要する費用の全額が交際費等に該当します。
2.
接待に際して相手に手土産等の贈答品を贈るような場合に、これを含めて判定することはできません。
つまり、飲食費と贈答品との合計額が5,000円以下となるとしても贈答品部分は飲食費として損金算入することはできないことになります。
必要な書類
適用を受けるためには次の事項を記載した書類を保存する必要があります。
(1)飲食等のあった年月日
(2)飲食等に参加した得意先、仕入先等の氏名または名称及びその関係
(3)飲食等に参加した者の人数
(4)費用の金額、飲食店、料理店等の名称・所在地
(5)その他参考となるべき事項
(1)(2)の事項については領収書等で確認ができますが、それ以外の事項については記録が必要となります。
様式は問われませんので、一覧表を作成する等一定のルールを設けることが必要です。
また、(4)については、店舗がない等の理由で名称・所在地が明らかでない場合は、領収書等に記載された名称・所在地
とされています。出前の弁当・ケータリング等の場合に調べて記載するといった必要はないようです。
定時総会等で、役員報酬の増額改訂をし、事業年度開始日から改訂日までの役員報酬の増額分を一括支給した場合は、これまで「役員報酬」として損金算入が認められてきました。
平成18年度税制改正でも大きく取り上げられている「特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度」については、これまでにも取り上げてきました。
http://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000193.htm
今回は、同制度でのキーワードとなっている「業務主宰役員」と「常務に従事する役員」の判断として基本的なとらえ方を見てゆきます。
この2つの用語は、明確な定義があるわけではないため、肩書きや名目ではなく、経済的な実質に基づいて判定されるようです。
業務主宰役員
業務主宰役員とは、その会社を実際に切り盛りしている、つまり事業に付き実質的に決定している者が該当することとなります。 代表取締役という名目のみで自動的にその者が業務主宰役員と判定されるわけではありません。 代表者以外の者が対外的にも実質的にも経営の実権を握り、金銭の使途・管理にも指示を出しているなど、事業の中心となっている場合には、代表者以外の者が業務主宰役員と判断されます。また、複数人で、会社を切り盛りしている場合には、給与額などの要素も比較検討しし、判定がされることとなります。
常務に従事する役員
常務に従事する役員とは、通常その会社のみ就労しており、日々その業務に従事している役員を指します。 この常務に従事すると言う状態を単純に「常勤」であるか「非常勤」であるかによって区別するわけではありません。 ただ当然年数回のみの監査だけを行っているという監査役は、経営にも参画しているとは考えにくいことから、この常務に従事する役員からは除外されることとなります。兼職しているかどうかの判定は、その会社以外の会社においても日々業務従事しているかによって判定されることとなります。
季節といった限定的な時間や期間のみ他の社で働いたといったイレギュラーな場合には、兼職しているとは判定されないこととなるようです。
最初にも記載したとおり、それぞれの用語については、明確な定義がないため、これから運用に伴い徐々に明らかにされてゆくこととなります。
役員給与の増額分一括支給額が損金不算入に
定時総会等で、役員報酬の増額改訂をし、事業年度開始日から改訂日までの役員報酬の増額分を一括支給した場合は、これまで「役員報酬」として損金算入が認められてきました。
このほどの役員給与制度の改正に伴い、今後は認められない可能性が極めて高くなってきました。これを定めた通達(法人税基本通達9-2-9の2)が、近々廃止される方向で検討されているためです。
■18年4月1日以後開始事業年度から適用不可
平成18年度税制改正により「役員給与」については、定期同額・事前届出等の要件を満たしているものだけが損金算入の対象となります。
増額改訂による一括支給は定期同額の要件を満たしていないことになるため、損金算入が認められないこととなります。改正法が適用される平成18年4月1日以後に開始する事業年度からこの取扱いとなります。
もともとこの通達は旧法に規定する「役員報酬」について定めたもので、改正法の「役員給与」についての規定には適用されないためです。国税庁は、この通達を改正法に合わせて改訂せず、廃止する方向で検討しているようです。
■遡及増額分を織り込んだ定期同額給与に改訂を
今後、支給額を増額改訂する場合には、増額分をその後の期間で按分し改定後の定期同額給与に織り込んで支給する必要があります。
例:3月決算法人が平成18年6月に定時総会で支給額の増額を決議し、4月・5月分の増額分を支給する場合
・増額分を6月に一括支給
⇒増額部分については損金不算入
・増額分を6月以降の期間で按分し、定期同額給与に織り込んで支給
⇒増額部分も損金算入
解約払戻金の大きい終身払い長期傷害保険の資産計上が必要に!
平成18年5月8日に国税庁より、「長期傷害保険(終身保障タイプ)に関する税務上の取扱いについて」の文書回答が公表されました。
当回答で、終身保障の長期傷害保険は、保険期間の70%の期間で毎年の支払保険料の3/4を資産計上することが必要なことが明らかとなりました。
対象となる長期傷害保険
・保険事故 :災害による死亡、災害による障害 ・保険期間 :終身保障(長期) ・保険料払込方法 :一時払、年払、半年払、月払 ・保険料払込期間 :終身払込、有期払込 ・払戻金 :保険料は掛け捨て(満期保険金はない)だが、病気死亡、契約失 効、解除及び解約等で多額の払戻金が払い戻される。 (解約返戻率が最大50%超となる)
長期傷害保険の処理方法
終身保障の長期傷害保険は、有期、終身払い型を問わず、以下の処理が必要とされます。
・保険期間開始時から70%に相当する期間(前払期間)を経過するまでの期間
・各年の支払保険料の額のうち4分の3に相当する金額を
・前払金等として資産に計上し、
・残額については損金の額に算入する。
これは、保険料を一時払い、短期の有期払いで支払う場合、保険料の適切な期間配分のためには単純損金とせず、資産計上すべきとされるためです。
基準所得金額の詳細が明らかに
特殊支配同族会社の業務主宰役員に係る役員給与損金不算入の判定で大きな関心を集めている「基準所得金額」について、その詳細が明らかになりました。
この改正については以前取り扱いました が、
「実質的な一人会社」、即ち「特殊支配同族会社」と判定されても、
(1)基準期間(当期前3年の事業年度)における基準所得金額が年800万円以下である場合
もしくは
(2)800万円超3,000万円以下の場合で、基準期間中の業務主宰役員給与額の平均額(事業年度が12月の場合)が基準所得金額の50%以下
ならば、適用除外となります。
今回はこの「基準所得金額」についてご説明します。
基準所得金額は、「調整所得金額」の合計額から「調整欠損金額」の合計額と「過年度欠損金額の調整控除額」の合計額を控除したものを、基準期間の月数の合計数で除し、12を乗じたものをいいます。
調整所得金額
“所得の金額”に“業務主宰役員給与額”と“繰越欠損金の適用金額”を加算したもの。(欠損金額が生じた場合で業務主宰役員給与額が欠損金額よりも多い事業年度では、業務主宰役員給与額から欠損金額を控除したもの。)調整欠損金額欠損金額
欠損金額の方が業務主宰役員給与額よりも多い場合に発生し、“欠損金額”から“業務主宰役員給与額”を控除したもの。過年度欠損金額の調整控除額
基準期間の調整所得金額から差し引かれた、基準期間前に生じている“欠損金額等”。
この過年度欠損金額の調整控除額の趣旨は、基準所得の計算を行うにあたっては、本業から生じたものに相当する繰越欠損金の控除は認める一方で、業務主宰役員給与から生じた欠損金額部分だけは控除しないというものです。
調整所得金額には、“繰越欠損金の適用金額”が加算されており、この繰越欠損金額には業務主宰役員給与額以外の繰越欠損金も加わっています。
このため、多少複雑な計算をしなければなりませんが、この過年度欠損金額の調整控除額を控除することにより、業務主宰役員給与が少額でも欠損が生じていた法人にとって、基準所得金額の計算上で、不利にならない考慮がなされています。
【人材投資促進税制 いよいよ適用開始】
人材投資促進税制がこの18年3月期決算から初適用となります。
この制度については、以前に当税務情報ヘッドラインで3回にわたってお伝えしました。
今回は、本制度について簡単に概観し、発表当時不明瞭だった点について、その後正式に明らかになったものをご紹介します。
人材投資促進税制とは?
教育訓練費を基準額より増加させた企業について、一定金額を法人税額から控除することができる制度です。
中小企業については、特例制度が設けられています。
税額控除額
【前提条件】
前提条件として①を②より増加させた企業が対象となります。
① 当期の教育訓練費の額
② 前2事業年度の教育訓練費の平均額(基準額)
【控除額】
この税制で控除される税額は次のそれぞれの額になります。
● 基本制度の税額控除額(すべての企業)
(①-②)×25% ※法人税額の10%を限度
● 中小企業特例の税額控除額
①×税額控除率
※税額控除率=増加率×0.5(上限20%)
※増加率=(①-②)÷②×100
中小企業の場合は、法人住民税においても、課税標準額を税額控除後とする特例があります。
教育訓練費の具体例
法人がその使用人の職務に必要な技術や知識を習得等させるために、教育、訓練、研修、講習等の参加等に支出した費用
① 講師・指導員の経費
② 教材費(施設代・設備代を含む)
③ 外部施設使用料
④ 研修参加費・研修委託費
但し、教育訓練に充てるための助成金等がある場合には、その金額を教育訓練費から控除しなければなりません。
使用人の範囲
正社員、契約社員、パート・アルバイトをいい、請負労働者は含みません。
派遣社員の扱いについては、以下の2つの条件のすべてに該当する場合には、参加人数に関係なく使用人の教育訓練費に付随的に含めても問題はないようです。
① 正社員等と同じ業務を遂行している
② 正社員等を主体とした当該業務にかかる研修に付随して受講し、その企業に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させている
また、当制度の適用を受けるためには、該当教育訓練等の内容や参加者、支出先などが確認できる書類(様式自由)を申告書に添付しなければなりません。
5,000円以下の飲食費等が損金算入可能に
平成18年度税制改正において、一人当たり5.000円以下の飲食費等が交際費等から除かれ、損金に算入することが可能となる措置が新たに設けられます。
そこで、今回は適用にあたってのポイントをご紹介いたします。
適用対象
すべての法人が対象となります。
適用時期
平成18年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始する事業年度から適用されます。
対象となる相手先
社外の者に対する飲食費等に限ります。
社内の役員・従業員等に対する飲食費等は対象となりません。
(会議費・福利厚生費に該当するものは除きます)
ただし、子会社・関連会社の役員・従業員等に対する飲食費等は、別法人の者となりますので対象となります。
複数の店で接待をした場合
接待で利用した店一軒ごとに支出金額と人数とで計算することとなります。
5,000円を超える場合
超える部分だけではなく、飲食費等の全額が交際費等となります。
対象とならない飲食費等
(1)ゴルフ接待等に伴って飲食をした場合に、飲食費等の部分を抜き出して金額判定の対象とすることはできません。
同様にホテル等を利用する場合のサービス料についても飲食費等の部分を抜き出して判定することはできません。
(2)接待に際して相手に手土産等の贈答品を贈るような場合に、これを含めて判定することはできません。
つまり、飲食費と贈答品との合計額が5,000円以下となるとしても贈答品部分は飲食費として損金算入することはできないことになります。
保存が必要な書類
適用を受けるためには次の事項を記載した書類を保存する必要があります。
(1)飲食等のあった年月日
(2)飲食等に参加した得意先、仕入先等の氏名または名称及びその関係
(3)飲食等に参加した者の人数
(4)費用の金額、飲食店、料理店等の名称・所在地
(5)その他参考となるべき事項
(1)(2)の事項については領収書等で確認ができますが、それ以外の事項については記録が必要となります。
様式は問われませんので、一覧表を作成する等一定のルールを設けることが必要です。
また、(4)については、店舗がない等の理由で名称・所在地が明らかでない場合は、領収書等に記載された名称・所在地
とされています。出前の弁当・ケータリング等の場合に調べて記載するといった必要はないようです。
同族会社の判定基準に議決権等が追加
平成18年度の税制改正で、同族会社に該当するかどうかの判定に新たな基準が加えられることとなります。
これまでは発行済株式又は出資金額を3人以下の株主等で50%超保有していれば同族会社と判定されていました。
今回新たな基準として、「議決権等」が加えられます。
これは、会社法改正による、種類株式の多様化を想定した改正と考えられます。
同族会社に該当すれば、留保金課税制度や行為計算の否認規定が適用されることとなるため影響は少なくありません。
また、先般掲載している「役員給与の損金不算入」の適用要件にも影響することが明らかになっていることから、注意が必要です。
※役員給与の損金不算入に関する詳細はこちら
https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000193.htm
議決権等の内容
今回の改正では、新たに下記の項目の1つでも3人以下の株主等で50%超有していれば同族会社と判定されることとなります。
(1)事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転、又は現物出資に関する決議に係る議決権
(2)役員の選任及び解任に関する決議に係る議決権
(3)役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
(4)剰余金の配当又は利益の配当に関する決議に係る議決権
具体例
下記の例では、持株数、配当権においては上位3人以下で50%以下となるため同族会社に該当しません。
しかし、役員再任権では、上位3人以下で50%超となるため同族会社に該当することとなります。
A B C 他少数株主 (%)
持株数 25 15 10 40 ⇒該当しない
配当権 10 10 10 70 ⇒該当しない
再任権 25 15 15 30 ⇒該当
役員給与の損金不算入の規定にも影響
上記の議決権等の改正では、今年度の税制改正項目のひとつとして、先般より取り上げている「役員給与の損金不算入」の規定にも影響を与えることとなります。
つまり、要件のひとつにあたる「同族関係者が発行済株式の90%以上を所有」の持株割合90%の判定に当たっては、上記の議決権を有する株式の持株割合が90%以上の場合にも特殊支配同族会社と判定されることとなります。
種類株式を発行している会社では、適用の可否については、慎重に判定する必要があります。
役員給与の事前届出はいつまでに!?
平成18年度の税制改正で注目されている「役員給与の事前届出制度」について、今回はその届出の時期についてご説明します。
なお、事前届出が必要となる役員給与の範囲については前回の税務情報ヘッドラインをご参照下さい。
( https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000197.htm )
役員給与の事前届出の期限は?
(1)その役員給与に係る職務執行が開始する前(原則)
(2)会計期間の開始の日から3ヶ月以内(例外)
上記のうちいずれか早い時期とされることが明らかになりました。
この役員給与の届出は平成18年4月1日以後に対応する職務執行が開始する給与から必要となります。
届出期限の趣旨
届出の期限が上記のようになっている趣旨は以下の通りです。
(1)その役員給与に係る職務執行が開始する前(原則)とされる趣旨
→役員と会社の間には委任関係があり、職務執行と対応する期間についての給与は契約時に決定しているはずとの考えに基づきます。
(2)会計期間の開始の日から3ヶ月以内(例外)が認められる趣旨
→役員の選任は株主総会の決議によっており、給与は株主総会の決議時に決定されているはずとの考えに基づきます。
また、この例外は職務執行前に支給時期・支給額が決まっていることが明らかな場合を前提とされています。
事例による解説
平成18年3月決算法人の場合で定期同額給与を支給し、更に役員の職務期間を通じて毎年6月と12月に給与を支給する旨を定めた場合の届出期限は以下の通りになります。
《条件》
・会計期間は平成18年4月1日から平成19年3月31日
・1月から6月にかけての職務執行期間に係る給与は6月に支給される。
・7月から12月にかけての職務執行期間に係る給与は12月に支給される。
(a)平成18年6月支給の給与分についての届出
(1)による場合
→職務執行の開始前である平成17年12月末まで
(2)による場合
→会計期間開始後3ヶ月以内である平成18年6月末まで
上記の期限のうち、原則である(1)による期限である平成17年12月末が(2)による期限より早い時期ということになり、平成17年12月末が届出期限となります。
当該届出期限は既に経過しており、また、法施行前であることから届出ができないこととなります。
但し、職務執行前に平成18年6月支給分について、支給時期及び支給額が具体的に決まっていることが明らかな場合に限って、届出期限が(2)の例外である会計期間後3ヶ月以内とする経過措置が設けられる予定です。
この場合、平成18年6月末支給分についても同月末までに届け出ればよいこととなりますので今後の発表にご留意下さい。
(b)平成18年12月支給の給与分についての届出
(1)による場合
→職務執行の開始前である平成18年6月末まで
(2)による場合
→会計期間開始後3ヶ月以内である平成18年6月末まで
上記(1)と(2)の期限は一致しており、平成18年6月末までに届出が必要となります。
当該届出制度の適用にあたっては、職務執行の対価であるにも関わらず、支給方法形態が定時定額でないために損金不算入とされてきた部分についての救済が目的となっています。
従って、《条件》にも記載したような自社における役員給与と職務執行期間との対応関係を確認する必要があることにご留意下さい。
役員退職金の損金経理要件の廃止について
引当金を直接取り崩す経理処理が可能に
平成18年度の税制改正により、現行の法人税法第36条「過大な役員退職給与の損金不算入」が「過大な使用人給与の損金不算入」に改められました。
その結果、役員退職金を費用計上するためには法人税法上不可欠とされていた損金経理要件が、廃止されることとなりました。
支給時に役員退職給与引当金を直接取り崩し
役員退職給与引当金を利益処分によって有税により積み立てている企業は、実際に役員の退職に際して退職金を支給する場合には、積み立ててきた役員退職給与引当金を取り崩すこととなります。
支給する場合の経理処理については、損金経理することで法人税法上の費用計上が認められており、一般的な積立時と支払い時の仕訳は次のようになっていました。
(積立時) 未処分利益剰余金 / 役員退職給与引当金
(支払時) 役員退職給与引当金 / 役員退職給与引当金取崩益
役員退職金 / 現金・預金
そして、P/Lを作成する際に、益金計上している役員退職給与引当金取崩益と費用計上されている役員退職金を相殺処理し、注記で役員退職金の支給額を役員退職給与引当金取崩益と相殺している旨を表示していました。
今回の改正により、役員退職金の支払い時に損金経理処理が必要でなくなるため、支払時の実務は、
(支払時) 役員退職給与引当金 / 現金・預金
という仕訳で、役員退職給与引当金を直接取り崩す経理処理で、別表四と、別表五(一)の減算処理が可能になります。
役員退職慰労金支給規定を設けている企業にとっては、経理実務上の影響が大きな改正となります。
この規定は平成18年度4月1日以後に開始される事業年度から適用となることから、この6月の株主総会で決議される役員退職金については、新しい規定が適用されます。
実務上の取扱いについては、通達によって定められている部分が大きいので、今後の関連通達の改正内容が注目されます。
届出をした役員賞与が損金算入できるようになります
平成18年度税制改正により、実質的な一人会社の役員に対する役員給与の給与所得控除相当額が損金不算入となりました。
この改正については、以前に税務情報ヘッドラインで簡単に説明しましたし、
( https://www.i-nex.co.jp/headline/archives/000177.htm )
コラムでも扱いましたが、
( http://inex.exblog.jp/2246867/ )
今回はこの損金不算入制度について詳しく説明します。
持株割合と同族割合で特殊支配同族会社かどうかを判定
「実質的な一人会社」、即ち「特殊支配同族会社」かどうかの判定は、同族関係者の持株(出資)割合と役員割合とで行ないます。
具体的には、
(1) 同族関係者が発行済株式の90%以上を所有し、
かつ、
(2) 同族関係者の数が常務に従事する役員の総数の50%超である
場合に、この制度が適用されます。
このとき、(2) の「同族関係者」と「常務に従事する役員」には、形式的に役員になっているような者は含まれません。
適用除外は「基準所得金額」以下の場合
上の(1)と(2)の条件を満たす場合でも、
(1)
その法人の前3事業年度の「所得+代表取締役への役員給与」の平均額が年800万円以下である場合
または
(2)
(1)の平均額が800万円超であっても3,000万円以下で、この平均額のうち代表取締役への役員給与の割合が50%以下の場合
には、適用除外となります。
(1)、(2)の金額要件を「基準所得金額」といいます。
この金額は、その法人の各事業年度の所得の金額または欠損金額をもとに計算される金額で、青色欠損金がある場合には一定の考慮がされるようです。
役員賞与、損金算入へ~18年度税制改正~
届出をした役員賞与が損金算入できるようになります
18年度税制改正では、役員給与の法人税法上の取り扱いが見直されます。
損金に算入される対象として、従来の「役員報酬」だけではなく下記の2項目が加えられます。
つまり定時定額要件を満たす役員報酬のみが損金算入、この要件を満たさない役員賞与は損金不算入といった画一的な取り扱いが見直されることとなります。
【加えられる項目】
(1)非同族法人が支給する一定の利益連動型の給与
(2)利益連動型の給与以外の給与で、確定した時期に確定額を支給する給与
(2)については、事前届出が必要になることがこのほど明らかになりました。
今回は事前届出について注意しなければならない点などについて見てゆきます。
事前届出により損金算入できる役員賞与
損金算入の対象となる役員賞与は、次のすべての要件を満たす必要があります。
(1)あらかじめ定めに基づくもの
(2)決まった時期に、確定額を支給するもの
(3)所轄税務署長に事前届出をしていること
届出に関する注意事項
役員賞与を損金算入するための届出には、次の点に注意が必要です。
役員賞与となる金額のみを届け出るのではなく、毎月の報酬額も含めた総額を届け出なければなりません。
つまり、、、、
例:毎月60万円の報酬、6月と12月に各180万円の賞与を支給しようとした場合
総額の1,080万円 (60万円×12ヶ月+180万円×2回)を税務署へ届出
となります。
あらかじめ、決まった時期に確定額を支給するという点において、この賞与も定時定額要件を満たすものとして考えるようです。
この改正は、定時定額要件の緩和とも捉えることができます。
なお、これまでどおり賞与を支給せず、毎月同額を報酬として支給する場合には、届出の必要はありません。
また、上記の届出をせず支給した役員賞与は、現行どおり「利益の分配」となり、損金不算入となります。
~デット・エクイティ・スワップは4月末までに行おう!~
デット・エクイティ・スワップは債務者側も時価で資本金額を認識!
会社救済の手段の一つであるデット・エクイティ・スワップについて、従来から債権者側の処理に関する規定はありましたが、会社法の改正に伴う法人税法の改正により、債務者側においても債務の時価が資本金等の金額とされることになりました。
1.デット・エクイティ・スワップとは
(1)債権者と債務者の事後の合意に基づき、
(2)債権者側からは債権を株式にする取引、
(3)債務者側からは債務を資本とする取引で、
(4)主に債務者が財務的に困難な場合に債権者の合意を得た再建計画の一環として行われるものです。
通常は再建計画等に基づき債権者がその債権を債務者に現物出資することによって行われます。
2.債権者側の処理-債権の現物出資-
デット・エクイティ・スワップを行った場合、当該債権は消滅し、
(1)対価として受取った株式を時価で評価し、
(2)消滅した債権の帳簿価額との差額を当期の損益として処理します。
例)債権額を100、債権の時価を20とすると
(借方)(株 式)20 (貸方)(債 権)100
(債権譲渡損)80
但し、再建支援に必要な額を超える出資等、支援に経済的合理性がない場合には寄付金認定される点に留意が必要です。
3.債務者側の処理-債務と資本の振替―(新たに改正された処理)
会社法の制定に伴い、平成18年度の税制改正では法人税法で以下の改正が行われます。
(a)株式の発行等により増加する資本金等の金額は、払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額となります。
(b)会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度(法人税法59条)について、更生手続開始の決定等があった場合における対象となる事由に、自己に対する債権の現物出資を受けたこと等に伴いその債権に係る債務の消滅益が計上される場合が追加されることとなります。
従って(a)より、会社法施行後にデット・エクイティ・スワップで新株を発行する場合、
(1)債務の時価が資本等の金額となり、
(2)消滅した債務の帳簿価額との差額が債務消滅益として認識されます。
例)債務額を100、債務の時価を20とすると
(借方)(債 務)100 (貸方)(資 本 等) 20
(債務消滅益)80
但し、このままでは債務消滅益に対し課税関係が生ずることとなるため、(b)に当たる場合には、繰越欠損金が損金の額に算入されることとなり、課税が減殺されるような手当てがなされています。
改正会社法~合名・合資会社の取り扱い~
組織変更が可能になります
来年から施行される会社法では、現在認められていない合名会社・合資会社から株式会社への組織変更が認められることとなります。会社法施行後の取り扱い
合名会社・合資会社は、有限会社と異なり、会社法施行後も存続が可能です。 存続規定については、現行商法から特に変更はありません。今回の会社法改正では下記の規定により、容易に株式会社にすることができることとなります。
・合名・合資会社から株式会社への組織変更ができる旨の規定。(会社法2条二十六参照)
・最低資本金制度の撤廃。
設立時に資本金の準備ができなかったこと等により開始した合名・合資会社にとっては朗報です。
組織変更における手続き
組織変更をする場合、下記の事項の決定や手続きの必要があります。 ・目的・商号の決定 ・本店所在地の決定 ・発行可能株式総数の決定 ・取締役の氏名の決定 ・合名・合資会社の社員が取得する株式数の決定 ・社員全員の合意手続き ・債権者保護のための官報等への公告手続き税務上の取り扱いに注意
現行商法では、合名・合資会社から株式会社への組織変更は認められていませんでした。 今回、会社法改正で認められる組織変更について税務上の取り扱いがどうなるのか気をつける必要があります。これまでの有限会社から株式会社への組織変更では、税務上、継続として捉えられます。
そのため、資産・負債の引継ぎに関する受贈益は認識されません。
これは、有限会社と株式会社は共に「物的会社」であり、人格が同一であることが前提となっています。
合名・合資会社から株式会社の場合、「人的会社」から「物的会社」への組織変更となります。
異なる人格での組織変更について、税務上、現状と同様の取り扱いがされるのか、動向を注意する必要があります。
人材投資促進税制の創設
平成17年度税制改正大綱が去る12月15日、発表されました。この中でも注目
されている改正の一つとして「人材投資(教育訓練)促進税制」があります。
今回はこの改正について見て行きたいと思います。
改正の趣旨は?
産業競争力の源泉となる人材を育成・強化する観点から、人材投資の減少傾
向を拡大に転じさせると共に、企業における戦略的な人材育成への取組を強
力に後押しするため、人材育成に積極的に取組む企業について教育訓練費の
一定割合を法人税額から控除する制度が創設されました。
人材投資促進税制とは?
教育訓練費を基準額より増加させた企業について、一定金額を法人税額から
控除することができる制度です。
また、中小企業については、特例制度が設けられています。
税額控除額
【前提条件】
前提条件として①を②より増加させた企業が対象となります。
①当期の教育訓練費の額
②前2事業年度の教育訓練費の平均額(基準額)
【控除額】
この税制で控除される税額は次のそれぞれの額になります。
○基本制度の税額控除額(すべての企業)
(①-②)×25% ※法人税額の10%を限度
○中小企業特例の税額控除額
①×税額控除率
※税額控除率=増加率×0.5(上限20%)
※増加率=(①-②)÷②×100
中小企業の場合は、法人住民税においても、課税標準額を税額控除後とす
る特例があります。
具体例
【前提条件】
①今期の教育訓練費 180万円
②前2事業年度の平均額 100万円
【控除額】
○基本制度の場合
(180万円-100万円)×25%=20万円
○中小企業特例を適用した場合
180万円×20%=36万円
・税額控除率=増加率(80%)×0.5=40%>20% ∴20%
・増加率=(180万円-100万円)÷100万円=80%
適用開始時期
平成17年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となり、3年間の時限措置
になります。
教育訓練費の具体例
・講師・指導員等の経費
・教材費
・外部施設使用料
・研修参加費
・研修委託費