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個人投資家の株式投資リスクが軽減に!!
Ⅰ 上場株式等の譲渡損と配当との損益通算が可能に!
平成21年税制改正では経済金融情勢が悪化していることから、金融・証券税制の見直しが行われ、上場株式等の譲渡損と配当との損益通算ができるように損益通算制度が創設されました。さらに、損益通算してもなお、上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合、一定の要件の下、翌年以後3年間にわたり、各年分の申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額から控除することができます。ただし、これは平成21年分以後のものから適用となります。
Ⅱ 対象となる所得等
上場株式等の譲渡損失
・その年の上場株式等の譲渡損失の金額
・その年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等の譲渡損失の金額
(前年以前に既に控除したものを除きます。)
上場株式等の配当所得
その年分の上場株式等に係る配当所得の金額
(申告分離課税を選択したものに限ります。)
Ⅲ 上場株式等の譲渡損益について
株式等の譲渡所得等は「申告分離課税」となっており、原則として確定申告により納税することになります。また、一般口座とは別に設けられる特定口座には、証券会社や金融機関などが投資家に代わって譲渡損益等を計算し納税する「源泉徴収ありの特定口座」と、譲渡損益の計算のみを行う「源泉徴収なしの特定口座」とがあります。
【源泉徴収ありの特定口座の源泉徴収税率】
~2011年12月31日 2012年1月1日~
10%(所得税7%、住民税3%) 20%(所得税15%、住民税5%)
Ⅳ 上場株式等の配当所得について
国内上場株式の配当金については、配当金受け取り時に一定の税率で所得税および住民税が源泉徴収されます。また、金額に関係なく確定申告不要の特例の対象となっているために源泉徴収だけで課税関係は終了することができます。
ただし、国内上場株式等の配当所得は、確定申告不要の特例の対象ですが、2009年以降は、総合課税と申告分離課税を投資家が選択することができます。
a.総合課税
総合課税とは、給与所得など他の所得と合算した課税所得金額に対して課税されます。税率は、超過累進税率(5%~40%)となっており、課税所得の金額によって異なります。総合課税を選択し、確定申告をすると、配当控除の適用を受けることができます。
b.申告分離課税
申告分離課税とは、他の所得と分離して配当所得に対して税率を掛けて、税額を計算します。申告分離課税を選択すると、配当控除の適用は受けられません。
c.まとめ
確定申告をする 確定申告をする 確定申告をしない
総合課税を選択 申告分離課税を選択 申告不要制度適用
税率 累進税率 *下記源泉徴収税率 *下記源泉徴収税率
配当控除 あり なし なし
上場株式等の
譲渡損失との なし あり なし
損益通算
*…所得税 7%(15%)、地方税 3%(5%)
平成23年1月1日以後に支払を受けるべきものには、( )内の率になります。
Ⅴ 損益通算の適用方法
平成20年以前分
適用なし
平成21年度分
配当金や分配金を申告分離課税として確定申告する必要があります。
平成22年度以降分
申告による方法以外に「源泉徴収ありの特定口座」で配当金などを受け入れれば、口座内で損益通算ができるようになりますので、確定申告が不要となります。
Ⅵ 計算例
平成21年中に配当所得50万円あり、その年に上場株式の譲渡損が100万円あった場合。
申告分離課税を選択した場合、配当による税額は5万円(50万円×10%)となります。また、上場株式等譲渡損失と損益通算ができるため、配当所得の課税所得は0(配当所得50万円-譲渡損100万円)となり、5万円が還付されることとなります。また、譲渡損失のうち損益通算後に残った50万円を、翌年以後3年間にわたり、各年分の申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額から控除することができます。
よく分かる!確定申告基礎知識!~PART2~
今回は忘れがちな確定申告の注意点について、解説します。
1 住宅ローン控除の住民税控除
(1)内容
住宅ローン控除は初年度は確定申告が必要ですが、
確定申告した年分の翌年以降の年分については、年末調整のみで確定申告をする必要はありません。
ただし、次の要件をすべて満たす方は市町村へ申告を行うと住民税の控除が受けられます。
(2)要件
①平成18年以前に住宅ローン控除の申請をした。
②源泉徴収票の源泉徴収税額の欄が「0円」となっている。
③源泉徴収票の摘要欄に「住宅借入金等特別控除可能額 XXX円」と表示されている。
これらの方は、納付すべき所得税額<住宅ローン控除可能額
のため住宅ローン控除を最大限受けられていません。
そのため、お住まいの市町村に申告することでその受けられなかった部分を住民税からさらに控除できます。
なお、申告期限は所得税の確定申告と同じ平成21年3月16日までです。
各市町村により様式が異なりますので、お住まいの市町村のHPもご参照ください。
2 ふるさと納税による寄付金控除
(1)内容
ふるさと納税とは,都道府県・市区町村に寄附をした場合に,
寄附をした金額の5千円を超える一定の金額について,所得税と住民税について控除を受けることができるという制度です。
(2)要件
①自治体に5,000円超の寄付を行ったこと。
②確定申告を行うこと。
(3)注意
この制度は確定申告が必須要件です。
各自治体が特産品等を配るということでも話題になった制度ですが、
寄付を行ったからといって、自動的に控除が受けられる制度ではありませんのでご注意ください。
3 雑損控除
(1)内容
雑損控除とは、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。
(2)要件
①資産の所有者が、納税者又は家族であること
②その資産は生活に通常必要な住宅、家具、衣類などであること
③災害、盗難、横領のいずれかによる損害であること
(3)注意点
上記③に掲げるとおり、この制度は災害、盗難、横領のいずれかによる損害しか対象とならず
詐欺や恐喝によって受けた損害は、控除対象となりません。
したがって、昨今頻発している振り込め詐欺やオレオレ詐欺による被害は、控除対象ではありません。
よく分かる!確定申告基礎知識!~PART1~
平成20年分の確定申告が始まります。
確定申告とは、その年中の所得について確定した金額を計算し、その所得金額に対する税額を算出して、納付税額を確定させるとともに、すでに納付した源泉徴収税額や予定納税額などの総額と比べて、精算するための手続です。
今年は2月16日から3月16日までの間に申告と納税をすることになっています。
■確定申告をしなければならない人とは?
サラリーマンの方の多くは、「年末調整」により所得税が精算されていますので申告をする必要はありません。しかし、次に当てはまるような方は、申告をしなければなりません。
(1) サラリーマンで次のいずれかに該当する方
① 給与の収入金額が2,000万円を超える方
② 2か所以上から収入がある方で、年末調整をされていない方
③ 平成20年中に医療費が多額にかかった方
④ 退職金を受け取った方で、所得税の精算が済んでいない方 など
(2) 新たに住宅を購入された方や、一定の増改築をした方で、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受ける方
(3) 年金をもらっている方で所得税の精算がすんでいない方
(4) ご自身で事業(商売)をしている方
(5) ご自身でお持ちの不動産を貸している方
※他にもありますが、詳しくは国税庁HP等でご確認下さい。
■確定申告で納めすぎた税金が返ってくる!?
上記に該当せず、確定申告の必要がない方でも、次のような方は、確定申告をすることで納めすぎた税金が還付されます!この申告を還付申告といい、その年の翌年の1月1日から5年の間、申告することができます。
是非ご確認ください。
(1)多額の医療費を支出された方
(2)年の途中で退職し、年末調整を受けておられない方
(3)国・地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、寄附をされた方
(4)災害や盗難などで資産に損害を受けた方 など
~弊社HP内の 確定申告ナビもご覧下さい!~
H21税制改正Part2
住宅・土地税制が減税の最大の柱
12月12日に決定された09年度与党税制改正大綱は、土地・住宅・車の購入を促す等の景気刺激色の濃い内容となりました。今回は土地・住宅税制をメインにご紹介します。
1 最大600万円の住宅ローン控除が可能
(住宅借入金を有する場合の所得税額控除)
●今年12月31日で終了予定だった住宅ローン控除が、控除額を過去最大の600万円に拡大され、5年延長
一般住宅の場合、年末借入金残高の原則1.0%を所得税から控除することができ、最大5年間で500万円控除可能です。
さらに長期優良住宅(200年住宅)なら、控除率が1.2%に引き上げられ最大5年間で600万円控除可能です。
但し、これらの減税額上限は、一般住宅の場合平成22年末までに、200年住宅の場合平成23年末までにそれぞれ入居した人を対象とし、それ以降入居した場合には上限額が段階的に引き下げられます。
●すでに購入していても大丈夫
平成21年1月以降に入居する人が対象になります。
●住民税からも控除可能
減税額が所得税額を上回った場合には住民税からも控除できるようになります。
2 所得税額の特別控除の創設
(自己資金で200年住宅を新築する場合等)
200年住宅を自己資金で新築し、平成23年末までに入居した人は一般住宅より余分にかかった費用(最大1,000万円)の10%を所得税から控除できます。
平成22年末までに省エネ改修工事やバリアフリー改修工事をした人は工事費用の10%を所得税から控除できます。但し、工事費用には200万円又は300万円の上限があります。
3 土地売却時の非課税措置新設
(土地税制)個人又は法人がH21年平成22年に土地を購入し5年を超えて譲渡した場合の当該譲渡益について1,000万円の特別控除制度が創設されます。
★次回のお知らせ
平成21年度税制改正Part3では、中小企業対策税制・自動車税制についてお知らせします。
年末調整 part2
前回のpart 1では20年度の改正点や年末調整の基本的な事項を紹介しましたが
part 2では年末調整の具体的な流れとチェックポイントを中心に紹介いたします。
年末調整の流れ
<①所得控除額の確認>
年末調整を正しく行う為には正確に所得控除額を計算しなければなりません。
その為、年税額の計算を行う前に各人に適用される控除の種類や控除額、必要書類の確認を行いましょう。
<check>
□本人・・・障害者、寡婦、特別の寡婦、寡夫、勤労学生に該当していませんか?
□配偶者、扶養者、障害者・・・70歳以上に該当していませんか?
□扶養者・・・同居している70歳以上の親に該当していませんか?
□配偶者控除と配偶者特別控除のダブル適用はしていませんか?
□配偶者控除・・・配偶者の合計所得金額が38万円以下になっていますか?
□社会保険料控除・・・国民年金保険料には保険料納付証明書がついていますか?
□生命保険料控除・・・一般と年金で区別されていますか?証明書はありますか?
□損害保険料控除・・・対象は地震保険料控除、長期の損害保険料になっていますか?
<②本年分の給与金額と徴収税額の計算>
具体的な計算事務のはじめとして、月々の支払った給与の金額と源泉徴収税額を各人別の「平成20年分給与所得に対する所得税源泉徴収簿」によって集計し、それぞれ年間の合計額を集計します。
<check>
給与に含めるもの
□今年中に支払が確定した給与等で未払いのもの
例)年末賞与の一部を来年に分割払い → 賞与の全額が今年の給与の金額となります。
□途中入社の人の前職の給与
給与に含めないもの
□通勤定期代またはそれに代る通勤手当 → 100,000円(消費税込)以下の金額
□通常の勤務時間外における日宿直料 → 4,000円以下の金額
<③課税給与所得の計算>
②により集計した給与の総額から給与所得控除後の給与の金額を求めます。その後、①により確認した所得控除額を差し引いて課税給与所得金額を計算します。 <check> □早見表「給与所得金額の算出表」を使いましょう! □給与の総額が660万円以上の場合は、算出表の計算式で計算してください。次は、年税額の計算からの流れを紹介します。
<④年税額の計算>
③により計算した課税給与所得金額を基にして「平成20年分の年末調整のための所得税額の速算表」によって所得税額を求めます。<check>
□定率減税は廃止されています。
□所得税の税率は、平成20年分を適用していますか?
□算出税額から住宅借入金等特別控除額を控除していますか?
□引ききれなかった住宅借入金等特別控除額があった場合、源泉徴収票の摘要欄に住宅借入金等特別控除可能額の記載はありますか?
□年調年税額は100円未満を切り捨てたものとなっていますか?
<⑤過不足額の計算と精算>
②により集計した徴収税額の合計額と④により求めた年調年税額とを比較して過不足額を計算し過納額は還付し、不足額は徴収して精算します。 尚、精算の結果納付することとなった税額は原則、翌年1月10日に納付します。 納付額がゼロでも、納付書には納税額「0」と記入して提出して下さい。<check>
□過納額の還付(源泉徴収税額>年税額)
□不足税額の徴収(源泉徴収税額<年税額)
□12月の源泉徴収額を算定していますか?
※不足額が大きい場合、分割徴収が可能となる場合があります。
<⑥源泉徴収票の交付、提出>
年末調整の計算が終ったら、各人別に作成した源泉徴収票を次のとおり分類します。<Check>
□本人交付用 1枚(交付期限:1月31日)
□市町村提出用 2枚
□税務署提出用 1枚(年収 500万円以下 役員:150万円以下は提出不要です。)
次に、税務署、市町村へ次の書類を提出します。(提出期限:1月31日)
<Check>
□事業主の所轄税務署へ・・・法定調書合計票+支給状況内訳書+源泉徴収票1枚
□本人の住所地の市町村へ・・・給与支払報告書+源泉徴収票2枚
※扶養控除等申告書、生命保険料控除等申告書、各種証明書、源泉徴収簿は提出不要です。大切に保管して下さい。
これにて、年末調整は終了です。お疲れ様でした!!
年末調整 part1
今年も年末調整の季節がやってきました。
何かとお忙しい時期とは思いますが、年末調整は、毎月給与から天引きされている
所得税が戻ってくる年に一度の機会です。
そこで今回は年末調整の今年の改正点とポイントをご紹介いたします。
<今年の改正点は?>
① 昨年の改正にて住宅借入金特別控除が設けられましたが
(詳細は以前にご紹介させて頂きました。。→こちら
今年より範囲が広がり、以下の条件に全て該当する方は控除対象になりました。
・省エネ改修工事を含む増改築等を行った方で
平成20年4月1日から平成20年12月31日までの間に居住の用に供した方。
(省エネ改修工事とは窓の改修工事・床や壁の断熱工事などで一定の要件を満たすものを言います。)
*注意点:1年目は確定申告にて申告する必要があります。
・住宅借入金等の償還期間が5年以上のものであること。
・建築士が発行する省エネ改修工事等の証明書の交付がされること。
・省エネ改修工事費用の合計額が30万円を超えるものであること。
② 長寿医療制度の保険料に係る社会保険料控除について、平成20年10月より被保険者本人の代わりに世帯主又は配偶者が口座振替により支払った場合には、被保険者本人ではなく被保険者の世帯主又は配偶者の 社会保険料控除の対象となりました。
<12月の年末調整の対象となる人は?>
① 対象となる人 年末調整を行う日までに本年分「扶養控除等申告書」を提出している次の人 ・1年間勤務している人 ・途中入社で年末まで勤務している人② 対象とならない人
・年間給与総額が2,000万円を超える人
・災害減免法により徴収猶予を受けている人
・2ヶ所以上から給与をもらっている人で、他の支給者に
「扶養控除等申告書」を提出した人
<年末調整で記入する申告書>
年末調整では、主に①「給与所得者の扶養控除等申告書」
②「給与所得者の保険料控除申告書」 の2つの申告書を記入します。
① 給与所得者の扶養控除等申告書
所得控除の対象となる扶養親族や配偶者の状況について記入(確認)します。
この申告書は、その年のはじめに会社に提出することになっていますが、子供が生まれたりしてその年中に扶養の状況が変わっている場合がありますので、少なくとも年末にはもう一度確認して下さい。
② 給与所得者の保険料控除申告書
この申告書で、給与等から天引きされる以外の社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を記入します。
証明書の添付がないと控除は受けられませんので、紛失したものはないか、早いうちにご確認下さい。
その他の申告書
・ 配偶者特別控除申告書(給与所得者の保険料控除申告書と兼用)
配偶者のパート収入などが141万円未満である場合には、この適用が受けられます。
なお、配偶者の12月のパート収入がまだ出ていない場合でも見積り額を含めて計算しま す。
ただし、本人の所得金額が1千万円を超える場合には、この適用は受けられません。
・ 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
税務署から送付された証明書と借入金の残高証明証を添付して提出してもらいます。
はじめて、この適用を受ける場合には、確定申告が必要です。
Part1は以上です。次回、Part2にて手続き方法をご紹介致します。
定額給付金が支給されます!
新たな経済対策である定額減税として、定額給付金が支給されることになりました。
ただし、高額所得者については定額給付金の受け取りを辞退してもらう案も浮上しております。今回は定額給付金についてご紹介します。
定額減税は給付金方式に
定額減税の方法は次の2つの方法があります。
(1)給付金方式(現金やクーポン券などを市町村窓口等で直接配布する方式)
(2)減税方式(源泉徴収される税額を減らす方式)
今回の定額減税は(1)の給付金方式で実施されます。
給付金方式の2つのメリット
(1)より早く給付できること
(2)低所得者も給付の対象になること
※減税方式の場合、所得税減税は早ければ来年(2009年)2月から始まりますが、住民税減税については住民税額が確定する同(2009年)6月を受けての実施となり、減税効果が間延びする可能性があります。
支給額は?
減税規模は約2兆円で、標準的な夫婦子供2人の4人世帯で給付が6万円程度になります。
実施はいつから?
2009年の3月までに実施される予定です。
給付金の財源は?
特別会計の積立金、剰余金が財源となる予定です。
今後の動向
1人当たりの支給額や高額所得者には受け取りを辞退してもらうかなどの案が浮上しているため今後の動向にも注意が必要です。
執行役員導入企業に朗報!(その2)
前回触れた通り、国税庁より執行役員制度を導入している企業において、使用人が執行役員に就任する際に退職手当等として支給する場合の一時金について退職所得として認められる制度が明確化されました。
前回は、執行役員とはどういう者なのか、その内容について説明しましたが、
執行役員導入企業に朗報!(その1)
今回は(1)で明確化された所得税法上の制度についての説明を行い、
さらに(2)(3)において今回明確化された以外のパターンについても整理します。
(1)使用人から執行役員への就任(今回明確化された制度)
【結 論】 下記A,Bの2つの要件のいずれにも該当する場合には、 退職手当等として支給する一時金は退職手当等に該当する。 下記要件に該当しない場合、一時金は給与所得(賞与)として取り扱われる。【要 件】
A)
・執行役員との契約が委任契約(委任に類するもの)であること
・使用人としての再雇用が保障されていないこと
B)
・執行役員に対する報酬等が役員に準じたものであること
・任務及び規程違反行為により使用者に生じた損害への賠償責任を負うこと
【注意点】
・上記に該当しない執行役員制度であっても,特別の事実関係があると認められる場合には,退職手当等に該当する。ここで特別の事実関係とは勤務内容等に重大な変動があり,従前の勤務関係の延長とみられない場合とされています。
・再雇用が保証されていない点について,必ずしも,契約書等に明記されている必要はないとされています。
(2)執行役員から取締役等の役員への就任
【結 論】
使用人から役員への会社法上の地位に変動があると認められることから、
下記要件に該当する場合は、打切支給した一時金は原則として退職手当等に該当する。
【要 件】
執行役員の要件は(1)のA,Bと同じ。
(3)取締役から執行役員への就任
【結 論】
役員から使用人への会社法上の地位に変動があると認められることから、
下記要件に該当する場合は、打切支給した一時金は原則として退職手当等に該当する。
【要 件】
執行役員の要件は(1)のA,Bと同じ。
【注意点】
執行役員と取締役との間の就任・退任を繰り返すような場合において、
勤務関係の性質,内容,労働条件等において重大な変動があると認められない場合にあっては、退職所得ではなく給与所得(賞与)として取り扱うこととなります。
執行役員導入企業に朗報!(その1)
~執行役員へ就任した場合の退職手当の取扱いが明確化されました~
国税庁より「使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金」の取扱いが新設されました。
当該取扱いでは執行役員制度を導入している企業における、退職手当等として支給する場合の一時金について、退職所得として認められる場合が明確化されています。
この執行役員の退職手当の税務上の取扱いについて今回と次回の全2回で説明します。
まず今回は執行役員とはどういう者なのか、その内容について説明し、次回に当該取扱いの説明を行います。
「執行役員」とは!?
「執行役員」=使用人であり、役員ではない 「執行役員」とは,特定の業務を執行する責任者であり、 会社法上、法人税法、所得税法上も使用人である。(注)・取締役を兼務する場合は役員となる
・みなし役員となる場合もある
・委員会設置会社における「執行役」は役員であり、「執行役員」とは異なる
「執行役員」制度はどんなメリットがあるの!?
「執行役員」は簡単に言うと、取締役会の業務執行を補助する役割を担う使用人です。
取締役会の業務執行は以下の2つから構成されます。
(1)業務執行の意思決定
(2)意思決定に基づく業務執行
「執行役員」は(2)の業務の執行を担当することとなります。
従って、「執行役員」制度には意思決定と業務執行を分離し、意思決定人数の削減がなしうることによる
・取締役会の活性化
・意思決定の迅速化
・機動的、効率的な経営を行うことができる
というメリットがあります。
次回の税務情報に向けて
今回説明した「執行役員」制度を採用している会社において、使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金が退職所得となる取扱いが明確化されました。 次回は使用人から執行役員へ就任した場合の他、取締役に就任した場合等の取扱いも含めて説明します。ご期待下さい。確定申告の時期が今年もやってきました!~PART1~
平成19年分の確定申告が始まります。
確定申告とは、その年中の所得について確定した金額を計算し、その所得金額に対する税額を算出して、納付税額を確定させるとともに、すでに納付した源泉徴収税額や予定納税額などの総額と比べて、精算するための手続です。
今年は2月18日から3月17日までの間に申告と納税をすることになっています。
■確定申告をしなければならない人とは?
サラリーマンの方の多くは、「年末調整」により所得税が精算されていますので申告をする必要はありません。しかし、次に当てはまるような方は、申告をしなければなりません。
(1) サラリーマンで次のいずれかに該当する方
① 給与の収入金額が2,000万円を超える方
② 2か所以上から収入がある方で、年末調整をされていない方
③ 平成19年中に医療費が多額にかかった方
④ 退職金を受け取った方で、所得税の精算が済んでいない方 など
(2) 新たに住宅を購入された方や、一定の増改築をした方で、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受ける方
(3) 年金をもらっている方で所得税の精算がすんでいない方
(4) ご自身で事業(商売)をしている方
(5) ご自身でお持ちの不動産を貸している方
※他にもありますが、詳しくは国税庁HP等でご確認下さい。
■確定申告で納めすぎた税金が返ってくる!?
上記に該当せず、確定申告の必要がない方でも、次のような方は、確定申告をすることで納めすぎた税金が還付されます!この申告を還付申告といい、その年の翌年の1月1日から5年の間、申告することができます。
是非ご確認ください。
(1)多額の医療費を支出された方
(2)年の途中で退職し、年末調整を受けておられない方
(3)国・地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、寄附をされた方
(4)災害や盗難などで資産に損害を受けた方 など
~弊社HP内の 確定申告ナビもご覧下さい!~
ここだけは押さえておきたい今年の年末調整~Part 3~
前回のPart 2では、「課税給与所得の計算」までの流れを紹介しましたが、
今回のPart3では「年税額の計算」からの流れを紹介いたします。
④年税額の計算
③により計算した課税給与所得金額を基にして「平成19年分の年末調整
のための所得税額の速算表」によって所得税額を求めます。
<check>
□18年分まで適用されていた定率減税は19年分より廃止されています。
□所得税の税率は、平成19年分を適用していますか?
□算出税額から住宅借入金等特別控除額を控除していますか?
□引ききれなかった住宅借入金等特別控除額があった場合、
源泉徴収票の摘要欄に住宅借入金等特別控除可能額の記載はありますか?
□年調年税額は100円未満を切り捨てたものとなっていますか?
⑤過不足額の計算と精算
②により集計した徴収税額の合計額と④により求めた年調年税額とを比較して
過不足額を計算し過納額は還付し、不足額は徴収して精算します。
尚、精算の結果納付することとなった税額は原則、翌年1月10日に納付します。
納付額がゼロでも、納付書には納税額「0」と記入して提出して下さい。
<check>
□過納額の還付(源泉徴収税額>年税額)
□不足税額の徴収(源泉徴収税額<年税額)
□12月の源泉徴収額を算定していますか?
※不足額が大きい場合、分割徴収が可能となる場合があります。
⑥源泉徴収票の交付、提出
年末調整の計算が終ったら、各人別に作成した源泉徴収票を次のとおり
分類します。
<Check>
□本人交付用 1枚(交付期限:1月31日)
□市町村提出用 2枚
□税務署提出用 1枚(年収 500万円以下 役員:150万円以下は提出不要です。)
次に、税務署、市町村へ次の書類を提出します。(提出期限:1月31日)
<Check>
□事業主の所轄税務署へ 法定調書合計票+支給状況内訳書+
源泉徴収票 1枚
□本人の住所地の市町村へ 給与支払報告書+源泉徴収票 2 枚
※扶養控除等申告書、生命保険料控除等申告書、各種証明書、源泉徴収簿は
提出不要です。大切に保管して下さい。
これにて、年末調整は終了です。お疲れ様でした!!
2008年度税制改正(来年の改正)では専業主婦のいる世帯有利になっている
配偶者控除のなど各種控除の見直しについて、政府税制調査会が提案してい
ます。動向が決まり次第、改めてご紹介します。
ここだけは押さえておきたい今年の年末調整~Part 2~
前回のPart 1では19年度の改正点や年末調整の基本的な事項を紹介しましたが
Part 2では年末調整の具体的な流れとチェックポイントを中心に紹介いたします。
年末調整の流れ
①所得控除額の確認
年末調整を正しく行う為には正確に所得控除額を計算しなければなりません。
その為、年税額の計算を行う前に各人に適用される控除の種類や控除額、
必要書類の確認を行いましょう。
<check>
□本人 障害者、寡婦、特別の寡婦、寡夫、勤労学生に該当して
いませんか?
□配偶者、扶養者 障害者、70歳以上に該当していませんか?
□扶養者 同居している70歳以上の親に該当していませんか?
□配偶者控除、
配偶者特別控除 ダブル適用はしていませんか?
□配偶者控除 配偶者の合計所得金額が38万円以下になっていますか?
□社会保険料控除 国民年金保険料には保険料納付証明書がついていますか?
□生命保険料控除 一般と年金で区別されていますか?証明書はありますか?
□損害保険料控除 対象は地震保険料控除、長期の損害保険料になっていますか?
②本年分の給与金額と徴収税額の計算
具体的な計算事務のはじめとして、月々の支払った給与の金額と源泉徴収税額を
各人別の「平成19年分給与所得に対する所得税源泉徴収簿」によって集計し、
それぞれ年 間の合計額を集計します。
<check>
給与に含めるもの
□今年中に支払が確定した給与等で未払いのもの
例)年末賞与の一部を来年に分割払い → 賞与の全額が今年の給与の
金額となります。
□途中入社の人の前職の給与
給与に含めないもの
□通勤定期代またはそれに代る通勤手当 → 100,000円(消費税込)以下の金額
□通常の勤務時間外における日宿直料 → 4,000円以下の金額
③課税給与所得の計算
②により集計した給与の総額から給与所得控除後の給与の金額を求めます。
その後、①により確認した所得控除額を差し引いて課税給与所得金額を
計算します。
<check>
□早見表「給与所得金額の算出表」を使いましょう!
□給与の総額が660万円以上の場合は、算出表の計算式で計算してください。
次回Part 3では、年税額の計算からの流れを紹介します。
今年の年末調整・確定申告は「住宅ローン控除」にご注意下さい!
今年も、はや11月。年末調整もウォーミングアップの時期ですね。
さて、今年より国から地方への税源委譲が行われました。
つまり、所得税が減った分、住民税が増えたわけです。
6月に住民税がアップして驚かれたことは、記憶に新しいですね。
それに伴い、住宅ローン控除に特例措置が設けられました。
本来、住宅ローン控除は所得税だけの制度です。
また、住宅ローン控除額は所得税額の限度までしか差し引くことができません。
従って、一定の方には、本来控除されるべき所得税額が控除できなくなる、
という事態が生じることとなりました。
そこで、
1.今まで住宅ローン控除を受けていた方
及び
2.今年から新規に住宅ローン控除を受けようとする方
に対して、設けられた特例措置をご紹介します。
■ 今まで住宅ローン控除を受けていた方
(平成11~18年に入居された方で、
平成19年分の所得税につき住宅ローン控除を受けようとする方)
▼一定の方は、住民税から住宅ローン控除ができることになりました。
対象となるのは、平成19年の所得税額が、住宅ローン控除額よりも少なくなる方です。
以下、数字をもとに具体例をご紹介します。
所得税率をかける金額(課税総所得金額)が100万円、
住宅ローン控除限度額 12万円 の場合
(昨年と今年で、上記金額が同じと仮定します。)
平成18年算出所得税額 100万円×10%=10万円
住宅ローン控除額 10万円<12万円 ∴10万円
よって、納める所得税額は、10万円ー10万円=0円となります。
平成19年算出所得税額 100万円× 5%= 5万円
住宅ローン控除額 5万円<12万円 ∴5万円
よって、納める所得税は 5万円ー5万円=0円 となります。
去年は10万円引いてくれたのに今年は5万円・・・
納税者にとって不利ですね。
従って、所得税率が変わっていなかったら、
差し引けたであろう金額(上記例:5万円)
を住民税額から引きましょう、ということになりました。
▼手続はどうすればいいの?
毎年、住民税減額申請書の提出が必要です。
提出期限 :平成20年3月17日(月)
①所得税の確定申告を行う方・・・
税務署へ減額申請書と確定申告書を併せて提出してください。
②所得税の確定申告を行わない方(年末調整済の方)・・・
市町村へ減額申請書を提出してください。
▼対象になるかどうかの判定は?
上記①の方
(1) 住宅ローン控除後の税額が0円である。
(2) 住宅ローン控除額を確認する。
(3) 住宅ローン控除限度額を確認する。
(4) (3)の金額が(2)の金額より大きい。
(5) 課税総所得金額に昨年度の税率を掛けて、仮の所得税額を算出する。
(6) 仮の所得税額と住宅ローン控除限度額のうち、少ない金額を算出する。
(7) (6)の金額が(2)の金額より大きい。
(8) (6)-(2)の金額を住民税から控除することができます。
②の方
源泉徴収票の摘要欄に次の記載があれば、上記(5)~(8)の判定を行います。
「住宅借入金等特別控除可能額 ○○○○円」
上記可能額は、その全額が住民税から差し引くことができる金額ではありませんので
ご注意下さい。
(注)配当控除など他の税額控除等はないものと仮定しています。
■平成19年の所得税から新たに住宅ローン控除を受けようとする方
2つのパターンを選択できます。
(現行)10年間控除
1年目 ~6年目 ローン残高(最高2500万円) × 1%
7年目~10年目 ×0.5%
(特例)15年間控除
1年目~10年目 ローン残高(最高2500万円) ×0.5%
11年目~15年目 ×0.4%
所得税額の少ない方にお勧めです。
平成19年分から新たに住宅ローン控除を受ける方は、
住民税からの控除は適用されません。
従って、どちらを選ぶか、慎重にご検討下さい。
手間がかかりますが、きっちり計算、申請しましょう。
次回からは今年の年末調整の注意点につき、2回にわけてご案内します。
ご期待下さい!
ここだけは押さえておきたい今年の年末調整~Part 1~
ここだけは押さえておきたい今年の年末調整~Part 1~
今年も年末調整の季節がやってきました。
何かとお忙しい時期とは思いますが、年末調整は、毎月給与から天引きされている
所得税が戻ってくる年に一度の機会です。
特に今年は、住宅ローン控除の改正など、知っておかないと損をしてしまう改正も
あります。
そこで今回は2回にわけて年末調整のポイントをご紹介いたします。
Part 1
今年の改正点は?
① 「損害保険料」控除から「地震保険料」控除に変更されます。
従来の損害保険料控除は廃止され、地震等による損害を対象として
支払った保険料のみが、最高5万円を限度として、所得金額から控
除されることになります。
経過措置など、詳細は過去のページで特集をしています。→こちら
② 住民税から住宅ローン控除ができます。
住宅ローン控除は、所得税の額から控除される制度でしたが、今年か
ら住民税の額からも控除できるようになります。
今年から、税源移譲のため、ほとんどの方の所得税の額が減少するため、
それをカバーするために設けられた特例です。
住民税減額申請書の提出など、一定の手続きが必要となりますので、
適用を受けられる方は期限(今年は3月17日)にお気をつけ下さい。
こちらも、詳細は過去のページで特集しています。→こちら
12月の年末調整の対象となる人は?
① 対象となる人
年末調整を行う日までに本年分「扶養控除等申告書」を提出している次の人
・1年間勤務している人
・途中入社で年末まで勤務している人
② 対象とならない人
・年間給与総額が2,000万円を超える人
・災害減免法により徴収猶予を受けている人
・2ヶ所以上から給与をもらっている人で、他の支給者に
「扶養控除等申告書」を提出した人
年末調整で記入する申告書
年末調整では、主に
①「給与所得者の扶養控除等申告書」
②「給与所得者の保険料控除申告書」 の2つの申告書を記入します。
① 給与所得者の扶養控除等申告書
所得控除の対象となる扶養親族や配偶者の状況について記入(確認)しま
す。この申告書は、その年のはじめに会社に提出することになっていますが、
子供が生まれたりしてその年中に扶養の状況が変わっている場合があります
ので、少なくとも年末にはもう一度確認して下さい。
② 給与所得者の保険料控除申告書
この申告書で、給与等から天引きされる以外の社会保険料控除、生命保険料
控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を記入します。
証明書の添付がないと控除は受けられませんので、紛失したものはないか、早い
うちにご確認下さい。
その他の申告書
・ 配偶者特別控除申告書(給与所得者の保険料控除申告書と兼用)
配偶者のパート収入などが141万円未満である場合には、この適用が受けら
れます。なお、配偶者の12月のパート収入がまだ出ていない場合でも見積り
額を含めて計算します。
ただし、本人の所得金額が1千万円を超える場合には、この適用は受けられ
ません。
・ 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
税務署から送付された証明書と借入金の残高証明証を添付して提出してもら
います。はじめて、この適用を受ける場合には、確定申告が必要です。
Part1は以上です。次回、Part2に続きます。
執行役員への地位変更に伴う一時金の取扱いが明確化されました!
従来、執行役員制度の導入により、社員を執行役員へと地位変更した場合、退職金として一時金を支給しても、退職所得ではなく、給与所得として取り扱われていました。
今回、その一時金を退職所得として取扱うことができる要件が明確にされました。
今回の改正による影響
退職所得は給与所得に比べ一般的に緩やかな課税であることは、以前にもお伝えしました。 ...8/28 税務情報ヘッドライン「退職金の課税が強化される!?」参照
そのため、執行役員就任に伴い、一時金を受取る社員は、退職所得として取り扱うことができると、税負担の面で有利となる傾向があります。
しかし、退職所得についてはこの先に課税の強化が検討されています。
よって、執行役員の就任に際しての一時金の支給を考えておられる場合は、課税の強化前に支給されると、受給者側の税負担の軽減をはかることができそうです。
執行役員制度とは?
「経営と事業執行の分離により、機動的、効率的な経営の実現を目的とした制度」であり、以下のようなメリットがあります。
① 取締役を執行役員へすることで、取締役会のコンパクト化を図れる。
② 企業の組織変更に伴い、迅速に取締役会で意思決定や執行を行える。
③ 執行役員は「使用人」であるため、法人税法上、給与が損金算入されやすい。
執行役員就任に伴い支給された一時金の取扱いについて
具体例1・・・取締役が執行役員への就任に伴い、一時金が支給された。
取締役(役員)→執行役員(使用人)
この場合、一度取締役の退任があるため、取締役の職務に対応している支給金額は原則的には退職所得に該当します。
ただし、以下の要件に該当しない場合は、給与所得と取り扱われるため注意して下さい。
① あらかじめ役員の退職金規定等がもうけられていること。
② 取締役と執行役員との地位変更が繰り返されていない事。(形式的な地位変更でないこと。)
具体例2・・・部長が執行役員への就任に伴い、一時金が支給された。
部長(使用人)→執行役員(使用人)
【改正前】・・・給与所得として取扱う
結局は部長から執行役員への昇任であり、使用人としての地位に変わりはありません。
ゆえに、支給金額は賞与(給与)であり、給与所得に該当するとされていました。
【改正後】・・・一定の要件により退職所得として取扱う
今回の改正により、執行役員との関係が次の要件のすべてを満たす場合は、退職所得として認められることとなりました。
要件
① 委任契約であること。(類するものを含む。)
② 退任後に使用人としての再雇用が保証されたものでないこと。
③ 服務規律等が役員に準じていること。
④ 経営者に生じた損害について賠償する責任を負うこと。
また、たとえ上記要件を満たさない場合であっても、使用人から執行役員への就任が「重大な地位変動である」など個々の事例の実質的内容により、退職所得と判断される場合があります。
消えた年金が見つかったときの税負担
現在、納付記録漏れや職員の横領といった不祥事により、年金問題が後を絶ちません。年金時効特例法も設けられ、過去にさかのぼって未支給の年金が受給者に支給されることにもなりました。
このように遡って年金を受け取った場合においても、原則所得税が課税されることとなります。しかし、遡った期間によっては、所得税が課されない場合があります。
■年金時効特例法とは?
年金は、原則として請求しないと受給できません。
さらに年金を受給できる権利には、消滅時効(5年を超えると権利が消滅する)が設けられていました。具体的には、6年間年金の請求を忘れていた人が思い出して申請しても、5年分しかもらえないことになります。
今回、制定された年金時効特例法とは、いわゆる’消えた年金記録’問題によって、新たに加入期間等が見つかった場合、5年を超えた期間分の年金も払いましょう、という法律です。
(具体例)
60歳から年金を受給していた方で、71歳で追加すべき年金記録が見つかった場合
当初は、5年間分のみ遡り、66歳から71歳の部分のみ支給されていましたが、年金時効特例法によって、60歳から65歳の期間分も支給されることになりました。
■ 遡って支給された年金の税金はどうなるの?
通常、公的年金については源泉徴収が行われ、支給日が属する年の所得として所得税が課税されます。
しかし、年金記録が訂正されることにより5年を超える部分の支給を受ける年金については、税金の徴収権の時効に伴い、所得税は課税されないこととなります。
具体的には次の3パターンとなります。
(1)直近5年間の年金が支給される場合 (具体例なら66歳から71歳の部分 )
支給日が属する年の所得として課税されます。
(源泉徴収されます。通常の年金と同様です。)
(2)年金時効特例法によって、5年超の部分が遡って支給される場合
(具体例なら60歳から65歳の部分)
課税されません。(当然源泉徴収もありません。)
なぜなら、税金の徴収権の時効も5年で消滅するためです。
(3)時効となった年金を受け取る者が既に死亡している場合
受け取る遺族の所得となります。
直近5年間の部分 → 支給された年の所得として課税されます。
(源泉徴収の対象とはなりません。)
5年超の部分 → 課税されません。(当然、源泉徴収もありません。)
税金の話は別として、全国民が納得できる対策を期待したいものです。
退職金の課税が強化される!?
退職金の課税が強化される!?
予てから噂されていた退職金について課税が強化される可能性がでてきました。
退職所得については、これまでは、緩やかな課税となっています。
しかし、下記の必要性から、秋以降の税制改革論議で、
退職金や年金への課税強化を検討されていることとが明らかになりました。
●少子高齢化により、世代間の税負担や社会保険料負担の公平を配慮する必要があること
●終身雇用から雇用流動化といった社会構造の変化に伴い、税制も改める必要がること
これにより、退職金等についての税負担が大きくなる可能性があります。
今後の動向に注意が必要です。
さて、弊社発行のメールマガジンでは、上記の内容を次のようにわかりやすく解説しています。
今回はその内容をご紹介します。
さらに様々な情報も発信していますので、この機会に是非ご登録ください。
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≪メルマガ2007年8月14日号≫
━━━━━━━━━━━━━━トピックス ━━━━━━━━━━━━━━━
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□■□ 【退職金の課税が強化される!】
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●緩やかな退職金課税!
退職金にも税金はかかります。
ただ、退職金は老後の生活資金という性格もあることから、緩やかな課税となっています。
退職金の税金の緩やかな課税というのは退職金の所得控除と2分の1課税と言われるものです。
もう少し具体的に見てみましょう。
退職金の所得の金額の計算は下記のようになっています。
退職金の所得=(退職金の金額-退職所得控除額)×2分の1
そして、この退職所得控除額というのは勤続年数に応じて次のように計算されます。
勤続年数20年以下・・・40万円×(勤続年数)
勤続年数20年超・・・800万円+{70万円×(勤続年数-20年)}
例えば、勤続年数30年のAさんが退職して、会社から1000万円の退職金を受け取ったとしましょう。
この場合の税金は『0円』となります。
なぜなら先ほどの計算式にあてはめると、
退職所得={1000万円-(20年×40万円+10年×70万円)}×1/2=0
となり、そもそも課税される金額になりません。
同時に退職金の所得は『分離課税』ですので、他の所得と合算されないので、超過累進税率の影響を受けないわけです。
●早いうちに退職金を支給しましょう!
私は政府税調の葛西さんとは何の面識もないのでわかりませんが、1/2を廃止するか、退職所得控除額を減額するかのどちらかでしょう。(あたり前ですが・・・。)
まあ、どちらを修正するかは、わかりませんが、退職金を支給するなら早いうちに支給する方が得することになります。
同族会社の場合には、分掌変更するなどして、一旦退職金を支給してしまう方法も考えられるので、今後の政府税調の動きをウォッチしておく必要があるかと思われます。
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確定申告の時期が今年もやってきました!!~PART2~
今回も前回に引き続き「平成18年度の確定申告」がテーマです。
今回は、特にお客様からお問い合わせが多い「医療費控除」と「住宅借入金等
特別控除」にスポットをあてて、説明します。
■医療費控除
1)概要
自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払
った場合は、次の算式によって計算した金額を医療費控除として所得から差し
引くことができます。
医療費控除額
=(平成18年に支払った医療費の総額-保険金等の補填金額)-10万円※
※ただし平成18年分の総所得金額等の合計額の5%相当額が10万円
より少ない場合は、その5%相当額とします。
また、医療費の総額は消費税を含んだ金額です。
2)医療費の範囲
【含まれるもの】
1.医師、歯科医師に支払った診療費、治療費
2.治療、療養のために必要な医薬品の購入費
3.病院、診療所や助産所へ支払った入院費
4.治療のためにあん摩・マッサージ・指圧師、はり師等に支払った施術費
5.保健師や看護師等に療養上の世話を受けた費用
6.助産師による分娩の介助を受けた費用
7.次のような費用で、医師等による診療や治療などを受けるために直接必
要なもの
ⅰ.通院費用、入院の部屋代や食事代の費用、医療用器具の購入代や
賃借代で通常必要なもの
ⅱ.義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯などの購入の費用
【含まれないもの】
1.整形手術の費用
2.健康増進や疾病予防などのための医薬品の購入費(ビタミン剤等)
3.人間ドックなど健康診断のための費用
4.日常生活の用を足すための眼鏡、義手、義足、松葉づえ、補聴器など
の購入の費用
【その他(ご質問が多いもの)】
・治療のための通院費(交通機関を利用した場合)は医療費として認めら
れます。駐車代・ガソリン代は認められません。
・おむつ代は、医師が発行した「おむつ使用証明書」があった場合のみ、
医療費控除の対象となります。
・介護保険制度下での施設サービスの対価の対価のうち、介護費、食費
及び居住費のうち自己負担額(指定介護老人福祉施設については1/2
相当額)は医療費控除の対象となります。
3)手続
この控除を受ける場合は医師などの領収書等を確定申告書に添付するか又
は確定申告書の提出の際に提示する必要があります。
■住宅借入金等特別控除
1)概要
住宅借入金等特別控除とは、住宅ローン等を利用して住宅を新築や購入又
は増改築等をした場合で、一定の要件に当てはまるときは、その新築や購入
又は増改築等のための借入金等の年末残高の合計額を基として計算した金
額をその住宅を居住の用に供した年以後の各年分の所得税額から控除する
ものです。
なお、平成18年度に居住の用に供した場合の控除期間は10年間となります。
2)適用要件
住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、住宅の面積、所得金額、
使用方法などの要件に該当することが必要です。
特に、該当の要否がわかれる要件で代表的なものは、次のものになります。
1.家屋の要件
・1棟の家屋で床面積が50㎡以上であること。
・その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が、専らその人の居住
の用に供されるものであること。
2.控除の対象となる住宅借入金等
・償還期間が10年以上もの
3.所得の要件
・合計所得金額が3,000万円を超えないこと。
・居住用財産等の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
3)控除額
居住の用に供した年度によって、控除額・控除期間は異なります。
平成18年度に居住の用に供した場合は、控除額は以下の方法で計算します。
期間 控除額
1年目~7年目 住宅借入金等の年末残高の合計額×1.0%(最高年30万円)
8年目~10年目 住宅借入金等の年末残高の合計額×0.5%(最高年15万円)
※住宅借入金等の年末残高の合計額は最高3,000万円です。
4)手続
【初年度】
給与所得者が最初にこの特別控除を受ける年分については、確定申告をす
ることが必要です。
確定申告の際は、家屋の取得年月日・床面積・取得価額等を明らかにする
書類や住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書などの書類等を
添付することが必要となります。
【翌年度】
確定申告した年分の翌年以降の年分については、年末調整のみで確定申
告をする必要はありません。
~弊社HP内の 確定申告ナビもご覧下さい!~
確定申告の時期が今年もやってきました!!~PART1~
平成18年分の確定申告が始まりました!確定申告とは、その年中の所得について確定した金額を計算し、その所得金額に対する税額を算出して、納付税額を確定させるとともに、すでに納付した源泉徴収税額や予定納税額などの総額と比べて、精算するための手続です。
翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。
■確定申告をしなければならない人とは?
サラリーマンの方の多くは、「年末調整」により所得税が精算されていますので申告をする必要はありません。しかし、次のいずれかに当てはまる方は、申告をしなければなりません。
簡単にいいますと次のような方です。
(1) サラリーマンで次のどれかに当てはまる方
① 給与の収入金額が2,000万円を超える方
② 2か所以上から収入がある方で、年末調整をされていない方
③ 平成18年中に医療費が多額にかかった方
④ 退職金を受け取った方で、所得税の精算が済んでいない方 など
(2) 新たに住宅を購入された方や、一定の増改築をした方で、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受ける方
(3) 年金をもらっている方で所得税の精算がすんでいない方
(4) ご自身で事業(商売)をしている方や
(5) ご自身でお持ちの不動産を貸している方
※他にもありますが、詳しくは 国税庁のHP等でご確認下さい。
■確定申告で納めすぎた税金が返ってくる!?
上述に該当せず、確定申告の必要がない方でも、次のような方は、確定申告をすることで納めすぎた税金が還付されます!この申告を還付申告といい、その年の翌年の1月1日から5年の間、申告することができます。
(1)多額の医療費を支出された方
(2)年の途中で退職し、年末調整を受けておられない方
(3)国・地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、寄附をされた方
(4)災害や盗難などで資産に損害を受けた方 など
ここだけは押さえておきたい今年の年末調整!~Part2~
前回では、年末調整での「事前確認事項」の注意点についてご紹介致しましたが、
Part 2では、「税額計算の注意点」及び「平成19年度の改正点」につてご紹介致します。
税額計算のチェックポイント
はじめに…
税額計算の流れは以下のようになります。
1.課税給与所得金額を計算します。
①給与の総額⇒「②給与所得控除後の給与等の金額ー③所得控除額の合計額」=課税給与所得金額(千円未満切捨)
2.年税額を計算します。
課税給与所得金額⇒「④算出税額ー⑤住宅借入金等特別控除額」=年調年税額ー⑥定率減税額=年税額(百円未満切捨)
3.過不足の精算をします。
□給与の総額、給与天引き社会保険料額、源泉徴収税額は事前に集計しておきましょう。
□途中入社の人の前職での「源泉徴収票」に記載された上記金額の加算をお忘れなく!
①給与の総額
□対象とならないもの
□通勤定期乗車券代またはそれに代る通勤手当…100,000円(消費税込)/月以下の金額
□通常の勤務時間外における日宿直料 …4,000円/回以下の金額
□対象となるもの
□今年中に支払が確定した給与等で未払いのものを含めていますか?
例)年末賞与の一部を来年に分割払い⇒賞与の全額が今年の給与の金額となります。
②給与所得控除額
□早見表「給与所得金額の算出表」を使いましょう!
□給与の総額が660万円以上の場合は、算出表の計算式で計算して下さい。
③所得控除額
□給与の支払を受ける人(従業員)
□障害者、寡婦、特別の寡婦、寡夫、勤労学生に該当していませんか?
□配偶者控除と配偶者特別控除
□配偶者控除と配偶者特別控除は重複して適用されません。
□配偶者控除(生年月日、障害者の確認要)
□合計所得金額は38万円以下ですか?
□配偶者特別控除
□従業員の合計所得金額は1,000万円以下ですか?
□配偶者の合計所得金額は76万円未満ですか?
※合計所得金額→ 給与収入金額
1,000万円 → 12,315,790円
76万円 → 1,410,000円
38万円 → 1,030,000円
□扶養控除(生年月日、障害者、同居老親の確認要)
□合計所得金額は38万円以下ですか?
□生命保険料控除、損害保険料控除
□前納した保険料は期間按分がされていますか?
例)生命保険料2年分20万円を平成18年7月1日に支払った場合
20万円×6月/24月(12月×2年)=5万円が本年分の控除の対象となります。
④算出税額
□「所得税額の速算表」を使いましょう!
⑤住宅借入金等特別控除額
□百円未満切捨になっていますか?
□算出税額ー住宅借入金等特別控除額<0 ⇒年調年税額は 0 マイナスにはなりません!
⑥定率減税額
□改正後の数字を適用していますか?…10%(最高12万5千円)
⑦過不足の精算
□過納額の還付(源泉徴収税額>年税額)
□不足税額の徴収(源泉徴収税額<年税額)
□12月の源泉徴収額を算定していますか?
□不足額が大きい場合、分割徴収が可能となる場合があります。
平成19年1月1日以後の改正点
①毎月の源泉徴収税額が変更となります。
⇒平成19年1月1日以降の「源泉徴収税額表」を今から準備しましょう。(税務署、 国税庁ホームページ)
②「給与所得の源泉徴収票」及び「給与等の支払明細書」について、
一定の要件の下で、電磁的方法による交付が可能となりました。
⇒事前に電磁的方法または書面による従業員の承諾が必要です。
⇒確定申告をする場合は、原則として書面により交付されたものに限ります。
③損害保険料控除が改組され、地震保険料控除が創設されます。
⇒一定の長期損害保険料は当面の間、地震保険料控除の対象となります。
ここだけは押さえておきたい今年の年末調整~Part1~
年末調整の季節がやってきました。年末調整は事前確認事項が多く短期集中作業ため、 スケジュールを決めて計画的に実施しましょう。
今回は2回にわけて年末調整のポイントをご紹介します。
Part 1 事前確認事項の注意点
Part 2 年税額の計算上の注意点及び来年度の改正点
■ 今年の改正点は?
① 定率減税額が引き下げられています。
算出税額×10%(最高12万5千円)
※ 算出税額…住宅借入金等特別控除額のある場合は、その控除後の税額
※ 平成19年以降は廃止されます。
② 勤労学生控除の対象となる専修学校等の範囲が拡大されています。
■ 事前確認チェックポイント
【1】 12月の年末調整の対象となる人は?
① 対象となる人
年末調整を行う日までに本年分「扶養控除等申告書」を提出している次の人
・1年間勤務している人
・途中入社で年末まで勤務している人
② 対象とならない人
・年間給与総額が2,000万円を超える人
・災害減免法により徴収猶予を受けている人
・2ヶ所以上から給与をもらっている人で他の支給者に「扶養控除等申告書」を提出した人
□ 年末調整対象者で「扶養控除等申告書」の提出もれの人はいませんか。
⇒年末調整の日までに提出するようにしてください!
□ 途中入社で本年中に前職がある人
⇒前職の「源泉徴収票」を提出してもらいましょう!
【2】 各申告書のチェックポイントは?
① 「扶養控除等申告書」
□ 今年結婚、出産、離婚、死別、家族の就職により扶養家族に変更があった人
⇒変更の事実が正しく記入されていますか。
□ 今年結婚して配偶者が無職またはパートの人
⇒記入する年間所得見込額は、結婚前の所得を加算します。
□ 本年中に死別した配偶者…配偶者控除の対象となる場合があります。(年末再婚せず)
② 「保険料控除申告書」
□ 証明書の添付がないと、控除は受けられません。(会社天引き社会保険料除きます。)
□ 生命保険料…一般の保険料と個人年金保険料の区分が適正にされていますか。
□ 損害保険料…短期保険料と長期保険料の区分が適正にされていますか。
□ 社会保険料…国民年金保険料等を支払った場合、支払証明書等の添付がありますか。
□ 上記証明書をなくした…保険会社等に再交付してもらいましょう。
「配偶者特別控除申告書」
□ 配偶者控除の対象となる人と重複していませんか。
③ 「住宅借入金等特別控除申告書」(2回目以降が対象、1回目は確定申告が必要です。)
□ 税務署から従業員宛に送られた「住宅借入金等特別控除申告書」および
金融機関から交付された「借入金の年末残高証明書」の添付がありますか。
■ その他
□ 年末調整を受けた人でも次の控除を受ける人は確定申告が必要です!
・雑損控除 ・医療費控除 ・寄付金控除 ・住宅ローン等特別控除(1回目)
『平成17年分 年末調整のポイント』
今年も年末調整を行う時期となりました。
大部分の給与所得者は、年末調整によってその年の所得税の納税が完結し確定申告の必要がなくなるわけですから、年末調整の事務は、非常に重要な事務であるといえます。そこで、年末調整事務を行うに当たって注意していただきたい事項をQ&A形式で解説しています。
Q1.年末調整とはどのようなものでしょうか?
会社が、給与の支払を受ける人(社員やアルバイトなど)について、その給与の総額について年税額を算出し、給料や賞与などから天引きしている源泉所得税額の合計額とを比べて、過不足税額を精算する事務のことをいいます。この過不足は、年の中途での扶養親族等に異動があった場合や生命保険料控除、損害保険料控除があることにより生じてきます。
Q2.17年の年末調整を行う上で、変更になった点はありますか?
●老年者控除(控除額:50万円)が廃止されています。
●国民年金保険料等の社会保険料控除については、『社会保険料(国民年金保険料)控除証明書』又はその領収証書を添付又は提示する必要があります。
11月上旬を目途に送付される国民年金の控除証明書は、平成17年1月1日~9月30日までの間に納付した実績がある場合に限られており、この間に未納となっている者が10月1日~12月31日までに納付した場合については、2月上旬頃に証明書が送付される仕組みとなっています。
したがって、2月上旬頃に証明書が送付されるケースでは、年末調整の段階では控除証明書と領収証書を添付又は提示して下さい。
※源泉徴収票の摘要欄には、「国民年金保険料等の金額」を記載することとなりました。
Q3.定率減税は昨年と同じように実施されますか?
本年(平成17年)も昨年同様の定率減税(年税額の20%相当額、最高25万円)は実施されます。
ただ、定率減税は平成18年1月より、年税額の10%相当額(最高12万5千円)に引き下げられることが確定しています。この引下げにより平成18年1月より支払う給与や賞与の源泉徴収の際に使用する源泉徴収税額表も変更になっておりますので、給与支払等の事務には注意が必要です。
大きく変わった土地・建物等の譲渡税制
平成16年度税制改正の中で「土地・建物等の譲渡」に関する主なポイントをまとめてみました。
すでに平成16年分の所得税の確定申告は始まっておりますが、取り扱いを間違うと影響の大きい項目ですので、提出前にもう一度確認してみてください。
損益通算及び繰越控除の廃止と居住用財産の場合の特例
土地、建物等の譲渡所得の計算上生じた損失の金額については、その他の所得(例えば、給与所得や事業所得、不動産所得等)との損益通算及び翌年以降の繰越しが認められなくなりました。
ただし、同じ土地、建物等の譲渡でも、居住用財産(マイホーム)の譲渡については、特別に損益通算及び繰越控除が認められるケースがあります。
認められるケースとは、
①マイホームを買換えした際、譲渡損失が発生した場合
②買換えをしなくてもマイホームの譲渡損失以上に住宅ローン残高が残っている場合です。
①と②で適用を受けるには、他に細かい要件があります。ご確認ください。
長期譲渡所得の特別控除の廃止
土地、建物等の長期譲渡所得の100万円の特別控除が廃止されました。
土地、建物等の譲渡所得の税率の引下げ
1.土地・建物等の長期譲渡所得の場合
・譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)に引下げ。
・譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える土地、建物等を譲渡した場合に適用されます。
2.土地・建物等の短期譲渡所得の場合
・譲渡益の39%(所得税30%、住民税9%)に引下げ。
・譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下である土地、建物等を譲渡した場合に適用されます。
住宅ローン控除の対象住宅が改正に
平成17年度税制改正で、住宅ローン税制等の諸制度の対象に、耐震基準等を満たしている既存住宅(中古住宅)を加える改正が、行われることになりました。
従来の適用要件は?
住宅ローン控除とは、10年以上のローンを組んで一定の住宅を取得、または増改築した場合に、年末借入れ残高の合計額をもとに計算した金額を、各年の所得税額から10年間にわたって控除するものです。 いままで住宅ローン控除を適用できる中古住宅には、下記のような制限が設けられていました。
・ マンションのような耐火建造物で築25年以内
・ 木造建のような非耐火建造物で築20年以内
たとえ耐震性を備えた建造物であっても、築後経過年数が制限を超えてしまっていると控除対象とはならず、せっかく住宅を取得しても控除適用外となる納税者が現れていました。
耐震基準を満たしている中古住宅とは?
今回の適用基準となる新耐震基準は、昭和56年6月に施工されたものですので、昭和57年以降に建てられた建物は、今回の改正の要件を満たしていると考えられます。 また、昭和56年以前に建てられた建築物に関しても、建築士による耐震診断を受け、新耐震基準をクリアしていると証明された場合には、この規定の適用が可能となります。適用時期は?
平成17年4月1日から取得等したものに適用されます。 それ以前に取得した建造物は、今回の改正の適用対象とはなりません。その他の住宅税制
上記の要件拡充は、住宅ローン控除以外にも下記の税制についても行われています。・「特定の居住用資産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例」
・「住宅取得資金に係る相続税精算課税制度の特例」
・「住宅用家屋の所有権の移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置」
タンス株の特定口座への持ち込み期限の延長
昨年16年12月末で『タンス株』の特定口座への持ち込み期限が切れましたが、17年度の税制改革において平成17年4月1日から平成21年5月31日まで延長されることとなりました。ただし、これまでのように「みなし取得価額」による持込は出来なくなります。
タンス株の今後
タンス株とは自宅や銀行の貸し金庫などで保管している株券のことです。株式譲渡損益が申告分離課税に一本化されたことから、こうした株券を特定口座へ移行して預け入れることにより、投資家の確定申告への手間などを省くために特定口座制度が設けられました
特定口座に預け入れられる期間は平成15年4月1日から平成16年12月31日までとなっており、昨年末をもって終了するはずでしたが、期限直前に17年の税制改正で事情が変わりました。
新たな預け入れ期間は17年4月から21年5月31日に延長、と言うのもタンス株はいまだ200億株以上あると推定されており、昨年末で打ち切ると、混乱が生じかねないとの判断が生じたためとみられるます。
ただし、みなし取得価額による税務上の特例は認められなくなります。
さらに、「株券不発行制度」がスタートすると、上場企業の株券は無効となってしまうため期限が延びたとばかりは言っていられないようです。
みなし取得価額とは
みなし取得価額とは平成13年9月30日以前に取得した株式を15年1月1日から22年12月31日までの間に譲渡した場合には、平成13年10月1日の終値の80%相当額とすることができる特例です。
株券不発行制度とは
平成16年6月の商法改正により、上場会社は21年6月末を期限とする特定の日に、株券不発行の定款の定めを置いたものとみなされ、一斉に株券不発行制度(株券のぺーパーレス化)に移行し、手元にある株券は価値を失います。
株券不発行制度に移行した上場株式はすべて、現在の『証券保管振替制度(ほふり)』を制度転換した、『株式振替制度』の振替口座を通じて保有することとなります。
一般の株主は現在、特定口座やほふりを利用されている場合には、振替口座にそのまま移行されペーパーレス化に伴う手続は不要と思われます。また、本券でお持ちの方は、制度が開始されると、タンス株は株主の権利を失う可能性があるため、証券会社に口座を開設し現株券を預託しておく必要があります。