決算Q&A 早わかり入門編

Q1 決算をするひとはどんなひとですか?


商売(事業)をしているひとや、不動産の貸付をしているひと、山林所得のあるひとは、確定申告するためにいくら儲かったかを計算する必要があります。
また、これらのひとは、確定申告書を提出する際に、計算明細である決算書(または収支内訳書)を添付しなければいけません。

[決算書の種類]
業種によって異なりますが、大きくはつぎの2つに大別されます。
青色申告者が使用する「青色申告決算書」
白色申告者が使用する「収支内訳書」

Q2 決算(儲けの計算)はどうやってするの?

『総収入金額』-『必要経費』=『事業(不動産)所得』

ここでいう、『総収入金額』や、『必要経費』は、一般的にいわれる「売上」や「経費」とその範囲が少し違います。事業所得を計算するひとを参考に、簡単まとめるとつぎの通りです。

【『総収入金額』とは?】
一般的にいう「売上高」のほか、「家事消費」や「作業くずを売った代金」、「リベート」なども収入として計算します。
特に、商品を自分や家族用に使ったときなどの「家事消費」は、実際にお金を誰かにもらうわけでも払うわけでもないのですが、収入として計算する必要があります。

【『必要経費』とは】
上の『総収入金額』に対応する原価の代金や、販売費・一般管理費などのいわゆる経費を総称したものです。これらを勘定科目に分類して集計をしていきます。
ただし、事業に必要なものであったとしても次に代表されるものなど、『必要経費』とすることができない場合や、何年かに分けて『必要経費』として計算するものがあるので注意しましょう。(具体例はつぎのQ3を参考にしてください。)

【『計算期間』は?】
1年間を単位として計算します。所得税の場合は、その年の1月1日から12月31日までの期間で計算することになります。(新たに開業したときは、その開業の日から計算します。)

Q3 決算するときの注意点はありますか??

【計上時期にご注意!】 『総収入金額』や、『必要経費』として計算するときに、こんな間違いがよくあります。 年末ギリギリに納品した商品の売上を、代金回収が翌年になるから、とその年の計算に含めない。(仕入れについても同様)

「どの年度で計算(計上)するか」は決められているのです。 基本的に、売上も仕入れ・経費も次のような基準で計上します。 (下記によらないケースもあります。実際には専門家にご確認ください。)

 ◎ これが正解!納品した日を基準に計上する。
  (引渡し基準といわれることもあります。)
 X これは間違い!代金をもらったとき、払ったとき。

【代金を払った年度で全額経費にできないことも!】
車両や什器備品で10万円以上(青色申告者はH24.3.31までに取得分は30万円以上)のものを購入し、一括で支払ったとしても、そのすべてを経費として計上することはできません。

 ◎ これが正解!法律で定められた期間で計算して『必要経費』とする。
  (これを減価償却といいます。)
 X これは間違い!支払がすんでいるので、すべて経費として計上した。

【勘定科目ごとに代表的なものをあげました。注意点のかっこ書きは貸借対照表での科目です。】

勘定科目
注意点
売上高
代金回収がまだでも、12月31日までに納品したものすべての売上を計上していますか?(売掛金・未収入金) 逆に、納品が済んでいないのに受け取った手付金などは、本年度の売上になりません。(前受金)
雑収入 家事消費分や、作業くずなどの売却代金を計上していますか?
仕入高・外注費
代金支払がまだでも、12月31日までに納品されたものすべてを計上していますか?(買掛金・未払金) 逆に、まだ納品やサービスを受けていないのに先に支払った代金は本年度の『必要経費』になりません。(前払金) *これは仕入高・外注費に限らず、以下の販売費・一般管理費でも同様です。
期末商品(製品)棚卸高 12月31日時点で、次のものは在庫として計上します。 (棚卸資産)また、その明細書も作成して保存しましょう。

・未使用の材料や消耗品など
・納品していない商品・製品
・作りかけの半製品・仕掛品
租税公課 次のものは『必要経費』となりません。

・所得税・住民税
・納付遅れなどによる延滞税・加算税など

*事業税や納付する消費税(税込み経理の場合のみ)は『必要経費』になります。
水道光熱費 自宅兼店舗の場合で、事業用と、生活用の区分がされていないときは、合理的に按分し、事業で使っている分だけを経費とします。
修繕費 高額な修理や、修理をすることでその機能が高まるときなどは、減価償却となる場合があります。
消耗品 10万円以上(青色申告者は30万円以上)のものが計上されてはいませんか?
給料賃金 生計を一にする家族に払う給与を『必要経費』とするには、取り決めがあります。確認しましょう。
交際費 お祝いやお香典などで事業に関係があるものは、領収書がなくても『必要経費』にできます。 念のため通知のはがきなどは残しておきましょう。
損害保険料 保険料でも、健康保険料や国民年金、傷害保険や所得補償などの保険料は『必要経費』になりません。
通信費 福利厚生費 地代家賃 事業に関係のない家事関連のものが入ってはいませんか?

Q4 事業で使っている車や備品を売ったときはどうしますか?

作業くずなどの売却代金は『総収入金額』に計上することになりますが、事業用の車両や、機械などの売却による利益や損失は、事業所得ではなく総合譲渡所得となり、他の所得と通算します。総合譲渡所得の計算の仕方はつぎの通りです。
ただし、生活用の車両や什器は非課税となります。

☆譲渡した資産をつぎの区分で分類します。
所有期間が5年以内の場合・・・短期譲渡所得
所有期間が5年を超えている場合・・・長期譲渡所得

☆譲渡益の計算の仕方はつぎの通りです。
(資産を売った金額)-(取得費と譲渡費用)-(特別控除の額)*=譲渡益

*特別控除の額は、その年の短期と長期の譲渡益の合計額に対して50万円です。
短期と長期の両方があるときは、先に短期の譲渡益から差し引きます。
これらの譲渡益が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません。
また、短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になります

Q5 決算が終わった!書類を捨ててもいいですか?

帳簿や棚卸明細、請求書、領収書、納品書、通帳などは保存(7年間、一定のものは5年間)する必要があります。申告が終わったからといって、捨ててしまってはいけません。
年度ごとにまとめて、きちんと保存しましょう。